タイムスタンプとは?仕組みや費用などわかりやすく解説
電子契約サービス
2023.11.15
2023.11.15
タイムスタンプとは、電子データがいつ作成されたかを証明する仕組みです。 近年、電子契約の普及や電子帳簿保存法の改正などにより、注目を浴びています。 この記事では、タイムスタンプとはどんな役割・仕組みなのか、電子署名との違いや関係性、タイムスタンプの使い方など、タイムスタンプの基礎知識についてわかりやすく解説していきます。
▼2024年1月から義務化!電子帳簿保存法の対応ガイド

電子帳簿保存法対応ガイド
この資料では、電子帳簿保存法の保存要件について解説しています。電子帳簿保存法の概要や対応方法、文書の適切な管理方法までをわかりやすく紹介しています。
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タイムスタンプとは?
タイムスタンプとは、刻印されている時刻以前にその電子文書が存在していたこと、および当該文書が改ざんされていないことを証明するものです。
電子文書は、直筆の署名や押印のある紙文書に比べるとたやすく偽造できるため、そのままの状態ではセキュリティに大きな問題を抱えています。 タイムスタンプを付与すれば、紙文書が作成された日付や非改ざん性を証明できるため、電子署名法第3条における「真正に成立したもの」として、法的な効力を有することになります。[注1]
そんなタイムスタンプの信頼の基盤となっているのが、タイムスタンプを発行する時刻認証局(TSA)です。 TSAは国から認証を受けた信頼できる第三者機関であり、利用者からの要求に応じてタイムスタンプを発行する役割を担っています。
総務省の定義によれば、タイムスタンプの定義は以下の通りです。
ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術。タイムスタンプに記載されている情報とオリジナルの電子データから得られる情報を比較することで、タイムスタンプに付された時刻から改ざんされていないことを確実かつ簡単に確認することができます。
引用:タイムスタンプとは?|情報セキュリティ関連の技術|基礎知識|国民のための情報セキュリティサイト
[注1]電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索
タイムスタンプ発行の仕組みの3ステップ
タイムスタンプは「要求」「発行」「検証」の3ステップによって構成されています。[注2]
①要求
まず、電子文書の作成者(タイムスタンプ利用者)が、電子文書(原データ)に基づいて生成したハッシュ値をTSAに送付しますが、これを「要求」といいます。
ハッシュ値とはハッシュ関数という計算手法により、原本データに対して決められた桁数の数値を発行した暗号のようなものです。
ハッシュ関数は逆算で元データを復元することが極めて難しい「一方向性関数」の性質をもっているため、ハッシュ値を用いることで電子データの機密性を保ったまま手続きをおこなうことができます。
②発行
利用者からの要求を受けたTSAは、送付されたハッシュ値に、日付や時刻といった時刻情報を偽造できないようにして結合したタイムスタンプを発行します。
偽造防止の方法には公開鍵暗号方式を用いるのが一般的で、TSAが生成したタイムスタンプに秘密鍵で署名を行った上で、利用者にタイムスタンプを送信します。 この過程を「発行」といいます。 TSAから受け取ったタイムスタンプは、公開鍵を使って復号することが可能です。 公開鍵は誰にでもオープンされている鍵ですが、秘密鍵は当事者しか利用できないため、安心してデータ通信を行えます。
③検証
複合化したデータのハッシュ値と、元データのハッシュ値を比較すれば、データの真正性や非改ざん性を確認できます。 ハッシュ値が一致していればタイムスタンプ時刻にそのデータが確かに存在し、かつ改ざんされていないことの証明となります。
一方、ハッシュ値が不一致だった場合、データの変更または改ざんがあったことの証となります。この作業を「検証」といいます。 以上3つの過程を経ることで、電子文書は真正性と非改ざん性を証明できる法的効力を有した文書となります。
図解すると下記のようになります。
[注2]タイムスタンプのしくみ|日本データ通信協会 タイムビジネス認定センター
タイムスタンプの取得方法
タイムスタンプを取得するには、TSAとの契約と、タイムスタンプの付与が可能なシステムの導入が必要です。 TSAとの契約方法には、国内に5社(2022年5月現在)あるTSAと直接契約する方法と、これらTSAと間接的に契約する方法の2パターンあります。
後者の場合、直接契約を結ぶのはタイムスタンプ機能を有した会計システムなどを開発しているベンダーです。 タイムスタンプの利用と共に、新たな会計システムの導入を検討している場合は、システムと合わせてタイムスタンプサービスを提供しているベンダーと契約を締結するのが一般的です。
直接あるいは間接的にTSAと契約を結んだら、タイムスタンプを付与したい電子書類を用意します。 電子書類はPCで作成しても良いですし、既存の紙書類を撮影またはスキャンし、電子データ化してもOKです。
電子文書をタイムスタンプに対応したシステムに取り込んだら、あとはシステムに搭載されたタイムスタンプ機能を利用すれば、電子文書にタイムスタンプを付与することができます。
タイムスタンプサービスを提供している認証局
タイムスタンプは、日本データ通信協会から認定を受けた事業者が提供しています。この事業者は「時刻認証業務認定事業者(TSA)」や「認証局」と呼ばれています。2022年6月現在の時刻認証業務認定事業者(TSA)は以下の5社です。
- アマノ株式会社
- セイコーソリューションズ株式会社
- 株式会社TKC
- 株式会社サイバーリンクス
- 三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社
認定事業者一覧は、日本データ通信協会のサイトから確認することが可能です。最新情報については、こちらのサイトを参照してください。
参考:認定事業者一覧 | 認定事業者 | タイムビジネス認定センター
タイムスタンプ取得時の費用
タイムスタンプを利用するには、所定の手数料がかかります。 手数料や料金プランは契約しているTSAやベンダーによって異なりますので、TSAおよびベンダーと契約する場合は利用料の違いにも注意しましょう。 なお、ベンダーの場合はシステム利用料にタイムスタンプ利用料が含まれているケースがほとんどです。
ただ、タイムスタンプの取得数や、1スタンプあたりの秒制限によってプランの利用料が異なります。 そのため、料金プランを選ぶときはタイムスタンプをどのくらいの数やペースで利用するかを考慮することが大切です。
タイムスタンプの発行・付与の流れ
契約書にタイムスタンプを付与する際は電子契約サービスを導入することが一般的です。
電子契約サービスを利用すれば電子署名とタイムスタンプ機能をもちいて、誰が、何について、いつ契約したのかが正確にわかる仕組みになっています。流れとしてはオンライン上で契約を締結して署名する際に自動でタイムスタンプの発行・付与がされる形になっています。
PDFなどで無料で利用できるタイムスタンプとは
無料でPDFなどにタイムスタンプを付与する方法もあります。 具体的なツールとしてはAdobeが提供するAdobe Acrobat Readerなどです。 他にもいくつか無料で利用できるツールがあります。
しかしタイムスタンプを付与できる回数に制限があったり、タイムスタンプを付与した書類を保管する料金がかかったり、機能が不足したりするケースがあります。 そのため中長期的には有料のツールを契約することを視野にいれておきましょう。 タイムスタンプを導入するときには、認定事業者をチェックしておくことが重要です。
また、タイムスタンプには有効期限があるため、長期署名をしたい場合は有効期限が切れる前に延長しなければならないので注意が必要です。
関連記事:タイムスタンプは無料で使える?無料ソフトやPDFでの付与方法を紹介!
タイムスタンプの必要性
タイムスタンプが必要とされる理由は、電子文書のセキュリティ性を高めるためです。 電子文書は紙文書に比べて、用紙代やインク代、印紙代などのコストがかからないこと、文書の作成や郵送、保管の手間を省けることなど、業務上で多くのメリットがあります。
一方で、直筆の署名・押印がある紙文書に比べると真正性や非改ざん性の証明が難しく、誰でも簡単に偽造することが可能です。 電子文書が確実に存在していること、ある時刻まで改ざんされなかったことを証明できないと、取引先や顧客との間でトラブルが発生する原因となります。 そんな電子文書のセキュリティ性を高めるために誕生したのがタイムスタンプサービスです。
タイムスタンプを付与すれば、タイムスタンプに付された識別情報から、いつ(年月日、時刻)、どんな状態でその文書が存在していたのかを証明することが可能になります。
特に契約書や請求書などの文書は、いつ文書が作成されたかが重要なポイントになりますので、大切な書類へのタイムスタンプ付与は必須といえます。
タイムスタンプと電子帳簿保存法
タイムスタンプと特に関連性が深いのが電子帳簿保存法です。電子帳簿保存法とは国税関係書類の電子保存を認めた法律です。
文書を電子化することは容易ですが、その電子化された文書が改ざんされてない正しいデータかどうかを判断することは難しく、それを証明するための方法としてタイムスタンプが使用されます。

電子帳簿保存法対応ガイド
この資料では、電子帳簿保存法の保存要件について解説しています。電子帳簿保存法の概要や対応方法、文書の適切な管理方法までをわかりやすく紹介しています。
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電子取引の保存要件としてタイムスタンプの付与が必要
電子帳簿保存法施行規則第3条第1項では、電子取引の保存要件として、①可視性の確保と②真実性の確保を規定しています。
このうち、「真実性の確保」のための要件として、タイムスタンプが必要になります。具体的には、電子取引の保存要件において、いずれかの対応が必要です。
- タイムスタンプが付与された電子データを授受する
- データの授受後、速やかにタイムスタンプを付与する
- データの訂正・削除が記録できる、もしくは禁止されたシステムでデータを授受・保存する
- 不当な訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、運用する
2022年の改正でスキャナ保存のタイムスタンプ要件は緩和
2022年の電子帳簿保存法改正では、スキャナ保存におけるタイムスタンプ要件が緩和されています。
具体的には、タイムスタンプの付与期間が延長され、最長約2か月と概ね7営業日以内となったたほか、電子データの削除・訂正が確認できるシステムを利用する場合には、これをタイムスタンプ付与の代わりとすることが可能になりました。
そのためスキャナ保存においては、タイムスタンプの付与は必須ではなくなっています。
関連記事:【2022年1月】電子帳簿保存法改正4つの要点をわかりやすく解説
タイムスタンプと電子署名との違い
電子署名とは、紙文書における署名・サインの代わりとなる署名のことです。 間違いなく本人が作成したものであることを証明するために、利用者(データ作成者)は信頼できる第三者(認証局)に、電子証明書の発行を申請する必要があります。
電子証明書を発行すれば、作成・送信した電子文書が、利用者が作成した真正なものであり、かつ利用者が送信したものであることを証明できる仕組みになっています。
ただ、電子証明書は本人であることを証明するためのものですので、その文書がいつ作成されたのか確認できる識別情報は付与されません。 電子文書が法的な効力を有するためには、「誰が」「何を」作成したのかだけでなく、「いつ」作成したのかも証明する必要があります。
そこで利用されるのが、文書を作成した日時を証明できるタイムスタンプです。 タイムスタンプと電子署名を併用すれば、いつ・誰が・何を作成したのか、客観的に証明することが可能となり、電子文書の真正性や非改ざん性をより強固なものにすることができます。
タイムスタンプは長期署名を実現する
タイムスタンプや電子署名には、以下のように有効期間が定められています。この期間を過ぎると、電子契約の証拠としての効力は低下してしまいます。
- 電子署名の有効期間:1~3年(利用する電子証明書の期間による)
- タイムスタンプの有効期間:10年
そのため、長期間にわたって契約書の有効性を保ちたい場合、「長期署名」という仕組みを使って、電子署名の有効期間を延長します。
「長期署名」とは、電子署名に再度タイムスタンプを付与することで、その効力を延長させる仕組みのことです。電子署名の暗号化の効力が低下する前にタイムスタンプ(保管スタンプ)を施すことで、電子署名の有効性を延長します。
これによって、電子署名の有効期限が過ぎたとしても、保管スタンプが有効な限りは、その電子文書の正当性が保たれている状態を作ることができます。
タイムスタンプは電子文書の真正性や非改ざん性を証明する大切なもの
タイムスタンプには、電子文書を作成した日付や時刻といった識別情報が付与されており、いつ・どんな電子文書を作成したのか証明することが可能です。
電子文書は署名・押印のある紙文書に比べると偽造や改ざんが容易なので、タイムスタンプを付与し、真正性や非改ざん性を客観的に証明する必要があります。
電子署名だけでは、いつその文書が作成されたのか証明することができませんので、契約書など重要な電子文書を作る際は、TSAと契約またはタイムスタンプ機能を搭載した会計システムを導入し、タイムスタンプを付与することを心がけましょう。

電子帳簿保存法対応ガイド
この資料では、電子帳簿保存法の保存要件について解説しています。電子帳簿保存法の概要や対応方法、文書の適切な管理方法までをわかりやすく紹介しています。
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