電子署名とは?方法や効果・メリット、電子サインや電子印鑑との違いも解説
電子契約サービス
2023.07.06
2023.07.06
電子署名とは電子契約において、契約書や請求書などの電子データに対して付与された署名のことです。電子署名は、通常の署名と同様に、本人が署名したという事実の証明をするだけでなく、電子データの改ざんがおこなわれていないことを証明する機能があります。ここでは電子署名のメリットや電子サイン、電子印鑑との違いもわかりやすく解説します。
電子署名とは
電子署名とは、インターネット上で作成されるPDFファイル等の電子文書に付与された署名のことで、当該文書の正当性を証明する目的で使用されます。
電子署名法によると、提出する電子署名は「本人性」と「非改ざん性」の2つの要件を満たしている必要があります。
取引先や公的機関と電子契約をおこなう際には、基本的にマイナンバーカードで発行できる「電子証明書」を用いて電子署名をおこない、第三者機関である時刻認証局から署名時刻を証明するタイムスタンプの付与を受けることで、当該文書が本人によって作成され、改ざんがおこなわれていないという真正性を証明します。
新型コロナウイルス感染拡大によるテレワークの推進がきっかけで電子契約の普及率は急激に高まっており、⼀般財団法⼈⽇本情報経済社会推進協会の調査によると、2021年現在ですでに7割以上の企業が電子契約を利用しています。
電子契約の普及率は今後も拡大傾向にあり、それに伴い、電子署名を利用する機会も増加していくでしょう。メリット・デメリットを把握したうえで、積極的に電子署名を利用していくことをおすすめします。
電子署名と電子サインとの違い
一般的に、電子文書に対しておこなう署名はすべて「電子サイン」です。その中で、「電子証明書」を用いて本人性と非改ざん性が証明される法的効力の強い電子サインを限定して「電子署名」と呼んでいます。
「電子サイン」のことを「電子署名」と呼称している記事もありますが、当記事では電子証明書とセットで利用される署名のことを狭義の意味で「電子署名」と呼んでいます。
電子署名と電子印鑑との違い
電子署名のように自社でおこなうワークフロー内で活用することができるサービスとして、「電子印鑑」があります。
電子印鑑は、その名の通り「電子化された印鑑」のことを指します。電子署名と同等の効力を発揮することはなく、印影データに識別情報を組み込んだ電子印鑑を電子文書に押印することで、電子署名がより正確なものであると証明することが可能です。
電子署名とタイムスタンプの違い
電子署名は、「秘密鍵」と「公開鍵」を用いて提出した電子文書が正確なものであると証明することができますが、電子文書の改ざんを防ぐことができません。
タイムスタンプは、第三者が付与することで付与時刻以降の非改ざん性を証明し、電子署名の欠点を補完することができます。
電子署名の仕組み
インターネット上で作成した電子書類への電子署名は紙文書に直接おこなう署名と違い、署名者の本人性を証明することが難しいというデメリットがあります。これを解消するために用いられているのが、第三者機関から発行される「電子証明書」です。
電子証明書には、電子文書の作成者がデータを暗号化する際に使用する「秘密鍵」とデータの受信者が電子署名を復号化する際に使用する「公開鍵」の2つの「鍵」が存在し、これらを組み合わせることによってデータの本人性を証明することができます。
さらに、電子文書の作成時刻や電子署名をおこなった時刻を証明する「タイムスタンプ」を使用することで、付与時刻以降にデータが改ざんされていないことを証明し、より法的効力の高い電子契約をおこなうことが可能です。これを「公開暗号式」といいます。
公開暗号式の仕組み
公開暗号式の仕組みについて解説します。
まず、送信者は電子データの平文を秘密鍵を使って暗号化します。暗号化したデータを、秘密鍵と対になるように作成した公開鍵とともに受信者に送信します。受信者は受信したデータに付与されている公開鍵をもちいて復元し必要な処理をおこないます。また、厳密には、公開鍵、秘密鍵はそれぞれ第三者機関である認証局が発行します。
図式化すると下記のようになります。
暗号化されたデータは秘密鍵と対になる公開鍵でしか復元することができません。また、途中で改ざんがおこなわれた場合には公開鍵での復元が不可能になります。そのため、無事に暗号化されたデータが復元できれば、データの送信者が電子文書作成元であるという本人性と、改ざんがおこなわれていないという非改ざん性を証明することができます。
また、上記の図のフローで署名がおこなわれたものを「デジタル署名」と呼ぶこともあります。デジタル署名は公開暗号式でおこなわれてた署名のうち、署名をした当人に関しても証明することを前提に、送信者が秘密鍵を使って暗号化している署名のことです。
文書の秘密性の保持を目的として暗号化する場合には、送信者が公開鍵で暗号化し、受信者が秘密鍵で文書を復元し必要な処理がおこなわれる場合もあり、こちらは電子署名にはあたりますが、デジタル署名ではないとされています。
タイムスタンプ付与の仕組み
さらに、電子文書の作成時刻や電子署名をおこなった時刻を証明する「タイムスタンプ」を使用することで、付与時刻以降にデータが改ざんされていないことを証明し、より法的効力の高い電子契約をおこなうことが可能です。
タイムスタンプの発行フローは下記の通りです。ハッシュ値とはハッシュ関数を使って暗号化された機密性の高い暗号のことで、電子文書原本のハッシュ値とタイムスタンプに対して発行したハッシュ値の一致によって時刻情報を証明する仕組みになっています。
電子署名に関連する法律
電子取引の増加に伴い、電子契約をおこなう際のルールとして2000年代に入ってから法整備がおこなわれてきました。2021年現在、電子署名に関連するおもな法律としては、「電子署名法」と「電子帳簿保存法」の2つが施行されています。
電子署名として成り立ついくつかの要件を定めた電子署名法は2001年に施行されました。これによって電子署名が紙文書へおこなう署名と同等の効力を持つことが明文化されました。
また、1998年に施行された電子帳簿保存法は、電子文書の保存に関するさまざまな規則を定めており、2022年から施行される改正案によって、そのルールが大幅に緩和されることがすでに発表されています。
電子署名のメリットや効果
「テレワーク」が推奨されているここ数年の間で、電子署名を取り入れる企業は大幅に増えています。
ここでは、電子署名が持っているメリットや効果についてまとめています。
ワークフロー短縮で業務効率化につながる
電子署名は、インターネット環境さえあれば「いつでも」「どこでも」電子契約をおこなうことが可能です。テレワークで自宅にいる時や出先で作業を進めている時でも、パソコン一つで簡単に署名をおこなうことができるので、ワークフローの流れを滞らせることはありません。
また、これまで印刷して紙で保管していた文書を電子データとしてインターネット上に保管することができるため、管理の手間を減らすことができるでしょう。必要な文書をデータベースから「検索」して探すことができる点も、電子署名によるメリットのひとつです。
ペーパーレスでコストを削減できる
電子署名をおこなう文書はインターネット上でやりとりすることができるので、印刷をする必要がありません。そのため、文書の印刷時にかかる印紙代や文書の送付時に必要な切手代などの費用をすべて節約することが可能です。データの保管場所を用意しなくて済むため、省スペース化にもつながります。
電子署名は無料で利用できる手軽なものから、システム利用料はかかるもののセキュリティや法的効力の強い電子契約をおこなえるものまで幅広く存在します。ペーパーレスのコスト削減とシステムの利用料や人件費などを考慮し、自社に必要な機能を洗い出したうえで、費用対効果を検討してみましょう。

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コンプライアンスの強化が期待できる
電子署名は、「秘密鍵」と「公開鍵」を組み合わせることによって、作成者以外の人物による改ざんができない仕組みになっています。作成者自身による改ざんもタイムスタンプを用いることで防ぐことができるようになっており、これらの点からセキュリティレベルは高いとと言えるでしょう。
また、契約書類が電子化されているため、紙ベースでの管理で発生する「盗難」や「紛失」のおそれも非常に少ないです。
電子署名のリスクや注意点
前項では電子署名を導入するメリットについて説明しましたが、電子署名にはデメリットも存在します。電子署名の利用を検討されている方は、マイナス要素をきちんと把握したうえで導入するかどうかを決めるようにしてください。
取引先の合意が必要となる
電子署名をおこなう際は、自社と取引先の双方が電子契約をおこなうことに合意をしていなければいけません。この点は紙文書での契約時にはなかったデメリットと言えるでしょう。
近年、電子契約を取り入れる企業は増加傾向にはありますが、国内全体に浸透しているほどではありません。取引先が電子署名を導入していなかった場合、取引先に対し電子署名の特徴について説明をしたうえで、電子署名を利用するように依頼する必要があります。
取引先が電子署名の知識を有していればスムーズに契約を進めることができますが、知識がなかった場合は説明に多くの時間が発生してしまうでしょう。
電子署名が使用できない書類もある
電子署名は、「電子署名法」と「電子帳簿保存法」の2つの法律によって、紙文書への署名と同等の効力を発揮すると明文化されています。しかしこの法律は、効力を持つ電子署名として認められるための要件が厳しく、それが理由で電子署名を使用することができない文書も存在しているのです。
契約人の判断能力に不安がある場合に、任意後見人をたてて契約を交わす「任意後見契約書」や、事業用建物を所有する目的で土地を借用する場合に交わす「事業用定期借地契約書」に関しては書類の電子化が認められていないため、電子署名を使用することができません。
ただし、以前は電子署名が認められていなかった「定期借家契約書」や「重要事項説明書」に関しては、2022年5月に施行された借地借家法と宅建業法の改正によって可能になりました。
電子署名を理解して電子契約を導入しよう
今回は、企業の業務効率化を推進する「電子署名」について紹介しました。電子署名は、インターネット上で契約を完結できる点で昨今の働き方と相性の良いサービスです。
紙ベースでの署名に比べて規制が厳しいことがデメリットと言われていますが、2022年に「電子帳簿保存法」が大幅緩和されるなど、国としても電子署名の導入に前向きな姿勢をみせています。
電子契約サービスを提供している企業は多く存在していて、その特徴や価格は一つひとつで大きく異なります。これから電子署名を取り入れていきたい方は、必ず数社を比較したうえで自社に適したサービスを導入するようにしてください。
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