下請法による電子契約の規定を初心者向けにやさしく解説
電子契約サービス
2023.08.24
2023.08.24
下請法とは、親事業者から発注を受ける企業や個人事業主を守るための法律です。親事業者から下請事業者への発注を行う際には、下請法によって不当な減額や支払いの遅延などが禁止されている点に注意しましょう。 本記事では、下請法で電子契約を行う方法やメリット、注意点について解説します。
1. 下請法とは下請事業者を保護する法律のこと
下請法は、正式名称を下請代金支払遅延等防止法といいます。 下請法では、資本力の大きな企業が発注者に、資本力の小さな企業や個人事業主が受注者となります。発注者が受注者に対して商品やサービスを発注するシーンでは、その代金の不当な減額や支払いの遅延、不当な返品などが行われるリスクがあります。こういったトラブルの回避のために制定されたのが下請法です。
下請法で保護されるのは製造委託や修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託といった取引です。 下請法では、発注する親事業者が下請事業者に対して3条書面と呼ばれる書類を交付する必要があります。3条書面の交付をしなかったときには罰金が課されることになります。 公正取引委員会による「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」では、3条書面に記載する事項を具体的に定めています。[注1]
親事業者が下請事業者に発注する際には、すべての項目を記載した書類を交わさなければならないのです。 親事業者は下請取引についてさらに、支払期日を定めるよう義務付けられています。支払いがなんらかの事情で遅延したときには、遅延利息の支払いが必要となるので注意したいものです。
[注1]下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則|公正取引委員会
2. 下請法による電子契約の規定
下請法における請負契約で交付する3条書面は電子交付することが可能です。ただし、3条書面を電子化する方法は限定されているため、必ず規定された方法で交付を行いましょう。 具体的には、以下のような方法が認められています。
2-1. 電子メールやEDIを使う方法
親事業者は、電気通信回線を通じて送信し、下請事業者の使用にかかる電子計算機に備えられたファイルに記録する方法(例えば電子メール、EDI等)で3条書面を交付できます。 ただし、電子メールを使うときには、下請事業者に送信しただけでは適切な交付とみなされません。親事業者がメールを送信しても、下請事業者がメールを受け取っていないと主張する場合には3条書面の正式な交付と認められないのです。送信したメールは、下請事業者のコンピュータに記録される必要があります。 メールのやり取りだけでは不安というときには、書面への押印や電子署名、タイムスタンプなどを活用しましょう。
2-3. ウェブを利用する方法
電気通信回線を通じて下請事業者に書面を閲覧させ、当該下請事業者のファイルに記録する方法も考えられます。 例えば、親事業者が3条書面をウェブ上のホームページなどに公開するという方法であれば、書面の電子交付が認められます。
ただし、下請事業者が単に3条書面を閲覧しただけでは足りず、この書面をダウンロードして下請事業者のコンピュータに記録する必要があります。
2-4. 磁気ディスクやCD-ROMなどを交付する方法
親事業者が下請事業者に対して磁気ディスクやCD-ROMなどを送付し、3条書面の交付とみなす方法もあります。
3. 下請契約の3条書面を電子交付するメリット
近年では、下請契約の際に3条書面を電子交付する企業が増加しています。電子契約には以下のように多くのメリットが考えられます。
3-1. 契約業務を円滑に進められる
紙の書面を交付する際には文書の印刷や封入、郵送や押印といった手間がかかります。 2021年の郵便法改正以降は、郵便の最短発送日が翌々日に設定されています。郵送で書類をやり取りした場合、1週間や2週間といった時間がかかってしまうことも珍しくはありません。 3条書面のやり取りを電子化すれば、親事業者は下請事業者に対して即座に書面を交付することが可能となります。
これまで1~2週間かかっていた交付業務を最短数分で終えられるのは、電子交付ならではのメリットです。 また、電子交付であれば書類の印刷や封入、投函といった手間も省けます。電子契約であれば書類に押印をする必要もありません。
3-2. 印紙税を節約できる
親事業者が下請事業者に対して紙の契約書を送付する際には、収入印紙の貼付が義務づけられています。下請の契約書に貼付する収入印紙の額面は契約金額に応じて変わります。大きな金額の契約を行うときには、高額な収入印紙を貼付しなければなりません。
また、複数の企業や何人もの個人事業主に対して書類を郵送するケースでも、収入印紙の金額がかさんでしまうおそれがあります。 電子化された文書には印紙税が課税されないルールになっています。3条書面などの書類を電子交付すれば印紙税が不要となり、コストの削減につながります。
3-3. 文書の保管スペースがいらなくなる
企業が紙の書類を作成した際には、ルールに従って書類を保管する必要性が生じます。 紛失を避けるため、紙の書類はあらかじめファイリングした上で保管スペースに収納するのが一般的です。契約数が多い企業では書類の量も多くなり、保管スペースが圧迫されるおそれがあります。
3-4. 書面の検索がしやすくなる
紙の契約書を多く交わしている場合には、過去の文書を探し出すのに手間がかかってしまいます。書類が電子化されていれば、必要な書面をすぐに検索でき便利です。
4. 下請法で3条書面を交付する際の注意点
下請法では3条書面の電子化が認められていますが、電子メールやウェブなどで書面を提供するときには、下請事業者に前もって説明を行い、承諾を得る必要があります。あらかじめ承諾を得ることには、親事業者の優越的な地位の濫用行為にあたらないよう配慮するという意味合いがあります。
下請事業者が紙ベースの書面を希望した際には、電子交付ではなく紙の書類を用意しなければなりません。電子交付の承諾を得られなかったために取引を中止したり下請事業者にとって不利になる契約内容へと変更したりしたときには、独占禁止法19条に違反したとみなされることがあります。
また、手続きの電子化において発生したコストを下請事業者に負担させることも下請法で禁止されています。下請法は下請事業者の利益を守ることを目的としているため、システム導入時には下請事業者に負担がかからないよう十分注意しましょう。 なお、3条書面を電子交付する際の承諾自体は、書面やメール、電話連絡などどのような方法で行っても問題はありません。
5. 契約書面を電子交付する際には下請法のルールを遵守することが大切
小規模な企業や個人事業主に対して発注を行う際には、下請法のルールを遵守しましょう。 下請法は下請事業者を守り公平性を担保するために制定されたルールです。下請法に違反すると罰金刑などに問われることがあるので注意しましょう。 下請法では3条書面などの電子交付が認められています。電子交付の方法や条件は明文化されているので、適切な方法で書面の電子交付を行うことが大切です。
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