媒介契約書で電子署名は利用できる?利用上の注意点も詳しく紹介
電子契約サービス
2023.03.28
2023.03.28
2021年9月にデジタル改革関連法が施行されたことにより、書面契約に関するルールが改正されました。 媒介契約書もそのうちの一つで、従来の書面契約に加え、新たに電子署名での契約が可能となっています。 今回は、媒介契約書で電子署名を利用するメリットや、利用する際の注意点について解説します。
1. 媒介契約書で電子署名は利用できる?
媒介契約書とは、不動産会社と、不動産の仲介を依頼する人の間で締結する契約書のことです。 媒介とは、宅地建物取引業者が、宅地建物の売買や交換、貸借について、売主と買主の間に入って契約の成立をサポートする行為を指します。
宅地建物取引業法第34条の2では、宅地建物取引業者は、宅地または建物の売買または交換の媒介契約を締結した際、すみやかに契約に関する内容を記載した書面を作成し、記名押印した上で依頼者に交付することが義務づけられています。[注1]
電子署名を付与した電子契約書は以前から広く普及していますが、媒介契約書は前述した宅建業法第34条の2の規定により、書面での交付が必須とされていました。
しかし、2021年9月に施行されたデジタル改革関連法により、押印・書面交付等を求める手続きを定める48法律が改正され、宅建業法第34条の2に以下の項目が追加されました。[注2]
宅地建物取引業者は、第一項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であって、同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす 宅地建物取引業者は、第六項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす
以上2つの項目が法令に追加されたことにより、媒介契約書を電子契約で締結することが可能となりました。 2022年5月からは、媒介契約を含む不動産取引の電子契約が開始されています。
2. 媒介契約書で電子署名を利用するメリット
媒介契約書に電子署名を利用すると、以下のようなメリットがあります。
2-1. 契約にまつわる業務の効率化
書面で媒介契約書を取り交わす場合、まず契約書をPCなどで作成し、印刷・製本を経て交付する必要がありました。 交付も対面または郵送で行わなければならず、時間と手間、コストがかかってしまうのが難点です。
電子署名を付与した電子契約なら、契約書の作成から交付まで、すべてオンライン上で完結できるため、印刷や製本、郵送などの手間を丸ごと省くことができます。
2-2. コストの削減
書面で媒介契約書を作成すると、一通ごとに用紙代や印刷代、郵送代などのコストがかかってしまいます。
一通あたりのコストは少額でも、月に何枚も作成・交付するとなると、かなりの費用がかさんでしまいます。 電子署名付きの電子契約を利用すれば、用紙代や印刷代、郵送代が一切かからなくなるため、媒介契約書にかかるコストを節約できます。
また、不動産売買に関する契約書には印紙税が課されますが、電子契約で媒介契約書を作成した場合、印紙税は不要です。[注3]
印紙税額は契約書に記載された契約金額によって異なりますが、400円~60万円(令和6年3月31日までは軽減税率適用)の費用が発生するので、そのぶんのコストも節約できるのは大きな利点です。
[注3]別紙|国税庁
2-3. 保管・管理が楽になる
青色申告者の場合、契約書の類を七年間保管することが義務づけられています。 書面の場合、契約書をファイリングし、棚などに保管しておかなければならないので、手間がかかる上に十分な保管スペースを用意しなければなりません。
電子署名入りの電子契約を利用すれば、データはパソコンまたはサーバーに保管できるので、ファイリングの手間も、物理的なスペースも必要ありません。 また、特定の契約書を閲覧したい時も、膨大なファイルの中からわざわざ探さなくても、検索機能を使えば瞬時に目当ての契約書を閲覧できます。
3. 媒介契約書で電子署名を利用するときの注意点
媒介契約書で電子署名を利用する際の注意点を5つご紹介します。
3-1. 契約相手からの承諾が必要
宅建業法の改正で追加された電子契約を認める項目には、「依頼者の承諾を得て」という一文があります。 つまり、媒介契約書を電子契約で締結するためには、あらかじめ依頼者(契約相手)からの承諾を得なければなりません。 依頼者が電子契約での締結を認めなかった場合、従来通り、書面で契約書を交付する必要があります。
3-2. 電子署名にかかるコスト
媒介契約書に電子署名を付与するには、電子署名サービスを利用する必要があります。 電子署名サービスは有料ですので、媒介契約書を電子化した場合、毎月一定のランニングコストを支払わなければなりません。 用紙代や印刷代、郵送代などのコストを削減できる反面、新たなコストが発生する点に注意が必要です。
3-3. セキュリティ対策が必須
媒介契約書に電子署名を利用すると、現物がなくなるぶん、紛失や盗難といったリスクは軽減します。 一方で、データを保存したコンピューターやサーバーがハッキングなどの被害にあった場合、悪意ある第三者に大事なデータが盗まれてしまう可能性があります。 電子署名を利用する場合は、セキュリティ性の高い電子契約システムを導入するなどして、サイバー攻撃への対策を講じることが大切です。
3-4. ワークフローの見直しが必要
介契約書を書面で作成・交付する場合と、電子署名を付与して交付する場合では、ワークフローが大きく異なります。 電子署名を利用する場合は、既存のワークフローを見直し、電子契約に適したフローを新たに生み出す必要があります。 前述のとおり、依頼者に電子契約を断られた場合も見越して、書面での交付と電子契約での交付の2パターンのワークフローを用意しておくとよいでしょう。
3-5. 導入時のサポート体制を整える
これまで書面で媒介契約書を作成していた場合、突然電子契約システムや電子署名を導入すると、現場が混乱してしまうおそれがあります。 特に、パソコンやインターネットに不慣れな従業員がいた場合、電子契約システムや電子署名の使い方を理解できず、契約手続きが滞ってしまうことがあります。 電子署名を利用する際は、社内向けのマニュアルを用意したり、専任の担当者を配置したりして、現場への浸透をサポートすることも検討しましょう。
4. 電子署名を使えば媒介契約書の手続きが楽になる
法改正により、これまで書面での交付が義務づけられていた媒介契約書の電子契約が認められることになりました。 電子署名を利用して媒介契約書を作成・交付すれば、契約書にまつわる手間とコストを大幅に削減することができます。
ただし、電子契約には依頼者の承諾が必要になりますので、万一拒否された場合に備えて、書面での交付にも対応できるようにしておくことが大切です。
また、電子署名付きの媒介契約書は物理的な紛失や盗難の心配がない一方、ハッキングなどによるデータ破損や改ざんのリスクがあります。 セキュリティ性の高いシステムを導入するなど、自衛する手段を検討しておきましょう。
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