契約成立とは?成立要件や民法の改正について詳しく紹介
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2023.08.24
2023.08.24
契約の成立とは、契約の内容や方式について当事者の合意が得られた状態を意味します。民法改正前は、契約の成立要件が明文化されておらず、曖昧な状態でした。契約成立には「申込み」と「承諾」が必要です。契約成立の要件や民法改正のポイントを解説します。
1. 契約成立とは?
契約は法的な拘束力を持った約束です。契約の成立とは、どのような状態を指すのでしょうか。ここでは、契約の定義や契約が成立する要件を簡単に解説します。
1-1. 契約の成立には当事者の合意が必要
そもそも契約とは、どのような行為を指すのでしょうか。法務省は契約を以下のとおり定義しています。[注1]
契約とは、当事者双方の意思表示(考えを表すこと)が合致することで成立する約束のことです。
[引用] 私法と契約|法務省
代表的な契約の例として「典型契約」が挙げられます。典型契約とは、民法で規定された13種類の契約のことです。
- 売買契約
- 贈与契約
- 交換契約
- 消費者貸借契約
- 賃貸借契約
- 使用貸借契約
- 雇用契約
- 請負契約
- 委任契約
- 寄託契約
- 組合契約
- 終身定期金契約
- 和解契約
たとえば、売買契約の場合は、売手と買手の意思表示が合致することで成立します。このように契約の成立とは、契約の内容や方式に関して、当事者の合意が得られた状態を意味します。契約が成立した場合、契約の効力が発生し、当事者は契約内容を履行する義務が生じます。
1-2. 契約自由の原則
契約の成立に対して、国や自治体が干渉することは原則的にありません。個人間で取り交わす契約は、当事者の合意があるかぎり、自由に締結することができます。この考え方を「契約自由の原則(私的自治の原則)」といいます。[注1]
契約自由の原則は、個人と個人の間で結ばれる契約については、国家が干渉せず,それぞれの個人の意思を尊重するという原則のことを言います。
1-3. 諾成契約と要物契約
前述の通り、契約は当事者の意思表示が合致することで成立します。つまり、当事者の合意が存在する限り、契約は口約束でも成立します。たと えば、売買契約や賃貸借契約、請負契約などは、契約書がなくても口約束だけで成立します。こうした契約のことを「諾成契約」といいます。
ただし、契約の種類によっては、目的物(契約の対象となるもの)の引き渡しが必要になる場合があります。この契約のことを「要物契約」といいます。要物契約の例として、消費貸借契約や使用貸借契約などが挙げられます。
[注1]私法と契約|法務省
2. 契約成立に関する民法の改正
2020年4月に民法が改正され、契約に関するさまざまな条文が見直されました。特に新民法第522条(契約の成立と方式)では、契約成立の要件を明文化し、契約の成立には「申込み」と「承諾」が必要と規定しています。[注2]
第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
[引用]民法|e-Gov
ここでは、新民法第522条のポイントをわかりやすく解説します。
2-1. 契約の締結を申し入れる意思表示(申込み)
契約の成立には、当事者による申込みが必要です。申込みとは、契約の内容を相手方に提示し、契約締結を申し入れる意思表示を指します、申込みと区別する必要があるのが「申込みの誘引」です。 申込みの誘引とは、相手方が契約の申込みをするように誘引することを意味します。
たとえば、宣伝や広告、プロモーションなどが申込みの誘引の一例です。新民法第522条により、申込みの定義が明文化されたことで、申込みと申込みの誘引が明確に区別されました。
2-2. 申込みに対する相手方の承諾
当事者による申込みだけでは契約が成立しません。当事者による申込みに対して、相手方が承諾の意思表示をすることにより、はじめて契約は成立します。 これまでも、契約が成立するには当事者の合意が必要だと考えられてきました。新民法第522条は、その当事者の合意を「申込み」と「承諾」の2つの要素に分け、明文化したものです。
2-3. 書面の作成は契約成立の要件ではない
契約は当事者の「申込み」と「承諾」によって成立します。新民法第522条第2項で明文化されたとおり、この「申込み」と「承諾」は契約書などの書面の交付だけでなく、口約束でも成立します。[注2]
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
[引用]民法|e-Gov
しかし、実務上は契約書を作成し、契約内容を第三者に証明できる形で明文化することが一般的です。
契約に関するトラブルが生じた場合、契約書がないと十分な証拠を提示できず、「いった」「いわない」の水掛け論に発展するリスクがあるためです。書面の作成は契約成立の要件ではありませんが、契約書を作成することでトラブルが生じるリスクを減らせます。
[注2] 民法|e-Gov
3. 契約成立のその他の要件
当事者の「申込み」と「承諾」の他にも、契約の成立に関する要件が2つあります。 ・契約内容についての要件 ・契約当事者についての要件 この2つを合わせて「契約の有効要件」といいます。契約内容についての要件は、契約の実現可能性や適法性などを定めたルールです。また、当事者の意思能力や行為能力(法律行為が可能か)など、契約当事者についての要件もあります。契約成立のその他の要件を紹介します。
3-1. 契約内容についての要件
契約内容についての要件は4つあります。
要件 | 概要 |
確定性 | 契約内容が具体化されており、契約を履行するために重要な情報が確定されていること |
実現可能性 | 契約内容が非現実的ではなく、十分に履行可能なものであること |
適法性 | 契約内容が既存の法令に違反していないこと |
社会的妥当性 | 契約内容が一般的な社会通念に違反していないこと |
契約の適法性や社会通念上の妥当性はもちろん、「契約の内容や方式が確定されていること」「契約が十分に履行可能なものであること」の2点に注意する必要があります。
3-2. 契約当事者についての要件
また、契約当事者に関する3つの要件を満たす必要があります。
要件 | 概要 |
意思能力があること | 当事者に十分な意思能力があり、自らの行為の結果に責任を持てること |
行為能力があること | 当事者に行為能力があり、一人で契約を行っても法令に違反しないこと |
意思の欠陥がないこと | 虚偽の表示や錯誤など、当事者の意思を欠くような要因がないこと |
たとえば、未成年者の契約は行為能力がないとみなされ、契約が不成立となる場合があります。契約成立の要件に加えて、契約の2つの有効要件も把握しておきましょう。
4. 民法の改正内容や契約成立の要件を知ろう
2020年4月の民法改正により、契約の成立に関する要件が明文化されました。新民法第522条のポイントは2つあります。
- 契約の成立には「申込み」と「承諾」が必要と規定された
- 契約の成立に書面の作成は必ずしも必要ないと規定された
契約の成立には、当事者の「申込み」と「承諾」の2点が必要です。また、契約内容や契約当事者についての要件も満たす必要があります。スムーズな契約締結のため、契約成立の要件をおさらいしましょう。
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