印紙税法とは?課税文書や非課税文書、違反した場合の罰則について解説
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2023.08.24
2023.08.24
契約書などの文書を作成する際には、印紙税法に基づき印紙税が発生します。 支払わなければならない印紙税の金額は、文書の種類や契約金額などによって異なるので、印紙税法の内容や印紙税額一覧表をしっかり確認しておきましょう。 今回は、印紙税法の概要や、課税文書の種類、印紙税の納税方法などについて解説します。
1.印紙税法とは
印紙税法とは、印紙税の課税物件(文書)や納税義務者、課税標準、税率、納付および申告の手続きなどについて必要な事項を定めたものです。
印紙税は、さまざまな経済取引に伴って作成される文書に課される国税のことで、該当する文書を作成するときは印紙税を納付する必要があります。
印紙税法に違反する行為があった場合、同法で定められた罰則により、懲役刑や罰金刑に処される可能性があるので、該当する文書を作成する機会がある事業者は印紙税法についてよく理解しておくことが大切です。
1-1.印紙税の対象者(納税義務がある人)
印紙税法第3条では、課税文書の作成者について、その作成した課税文書にかかる印紙税を納める義務があると定めています。[注1]
ここでいう「課税文書の作成」とは、単純に課税文書を調整する行為ではなく、課税文書に課税事項を記載し、その目的に従って行使することを意味します。[注2]
たとえば契約書のように、契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書の場合は、その契約内容を証明するとき。手形や株券など、相手方に交付する目的で作成される課税文書の場合は、その文書を交付するときが「課税文書の作成」に該当します。
なお、「課税文書の作成者」は原則としてその文書に記載された作成名義人となりますが、法人などの役員または従業員が業務または財産に関して作成したものについては、その法人が作成者となります。[注2]
1-2.収入印紙の金額
印紙税は原則、文書に収入印紙を貼付することで納付します。 収入印紙及び印紙税の金額は、国税庁のホームページ上で公開されている『印紙税額一覧表』で確認することができます。
参照:印紙税額一覧表|国税庁
2.課税文書の一覧
印紙税法に基づき、印紙税の課税対象となる文書は以下の通りです。
- 不動産等の譲渡、地上権又は土地の貸借権の設定又は譲渡、消費貸借、運送に関する契約書
- 請負に関する契約書
- 約束手形又は為替手形
- 株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券
- 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書
- 定款
- 継続的取引の基本となる契約書
- 預貯金証書
- 倉荷証券、船荷証券又は複合運送証券
- 保険証券
- 信用状
- 信託行為に関する契約書
- 債務の保証に関する契約書
- 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
- 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書
- 配当金領収証又は配当金振込通知書
- 金銭又は有価証券の受取書
- 預貯金通帳、信託行為に関する通帳、銀行若しくは無尽会社の作成する掛金通帳、生命保険会社の作成する保険料通帳又は生命共済の掛金通帳
- 1、2、14または17により証されるべき事項を付け込んで証明する目的をもって作成する通帳
- 判取帳
以下では、上記に挙げた課税文書のうち、とくに重要性の高い1、2、7、17の4文書について詳しく解説します。
参照:印紙税額一覧表|国税庁
2-1.不動産等の譲渡、地上権又は土地の貸借権の設定又は譲渡、消費貸借、運送に関する契約書(1号文書)
土地・建物の売買や特許権などの無体財産権、総トン数20トン以上の船舶、営業活動を構成する権利・財産などを売買する際に交わす契約書のことです。
印紙税額一覧表では、1号文書に分類されています。
具体例は以下の通りです。
- 不動産売買契約書
- 不動産売渡証書
- 土地貸借契約書
- 限度貸付契約書
- 運送引受書
1通(1冊)あたりの印紙税額は、記載された金額に応じて200円~60万円となります。(※注1)
なお、契約金額が10万円を超える不動産売買契約書に関しては、令和6年3月31日まで印紙税の軽減措置が適用されます。[注3]
[注4]不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
2-2.請負に関する契約書(2号文書)
請負人がある仕事の完成を約束し、注文者がこの仕事に対して報酬を支払うことを約束する際に交わす契約書です。
印紙税額一覧表では、2号文書に分類されています。
具体例は以下の通りです。
- 建物建築工事請負契約書
- 加工承り票
- 保守契約書
- 広告契約書
印紙税額は記載された金額に応じて1通(1冊)につき200円~60万円となります。
なお、契約金額が100万円を超える建物建築工事請負契約書に関しては、前項と同様、令和6年3月31日まで印紙税の軽減措置が適用されます。[注4]
[注4]不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
2-3.継続的取引の基本となる契約書(7号文書)
特定の相手方との間において、継続的に取引する場合に交わす契約書です。
印紙税額一覧表では、7号文書に分類されています。
具体例は以下の通りです。
- 商品売買基本契約書
- 貨物運送契約書
- 下請基本契約書
- 貨物の保管及び荷役の契約書
印紙税額は1通につき4,000円です。
このように契約書を取り扱う企業にとって印紙代は大きなコストになっており、中長期的にみると企業に大きな影響を及ぼします。
2-4.金銭又は有価証券の受取書(17号文書)
金銭または床証券の引き渡しを受けた者がその受領事実を証明するために作成する契約書です。
印紙税額一覧表では、17号文書に分類されています。
具体例は以下の通りです。
- 領収書
- 振込済みの通知書
- 入金通知書
売上代金に係るものか否かで税額が異なり、売上代金以外の場合は1通につき200円、売上代金に係るものは200円~20万円となります。
3.非課税文書の一覧
前項で紹介した課税文書のうち、一部の文書については条件を満たすことで印紙税が発生しない非課税文書になります。 ここでは、文書ごとに非課税になる条件を紹介します。
参照:印紙税額一覧表|国税庁
3-1.不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書・請負に関する契約書・債権譲渡又は債務引受けに関する契約書
契約書に記載されている金額が1万円未満の場合に、非課税文書となります。
3-2.約束手形、為替手形
以下3つに該当するものは、非課税文書となります。
- 記載された手形金額が10万円未満のもの
- 手形金額の記載のないもの
- 手形の複製または謄本
3-3.株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託 の受益証券
以下3つに該当するものは、非課税文書となります。
- 日本銀行その他特定の法人の作成する出資証券
- 譲渡が禁止されている特定の受益証券
- 一定の要件を満たしている額面株式の株券の無効手続にともない、新たに作成する株券
3-4.定款
株式会社または相互会社の定款のうち、公証人法の規定により公証人の保存するもの以外のものは非課税文書となります。
3-5.預金証書、貯金証書
信用金庫その他特定の金融機関の作成するもののうち、記載された預入額が1万円未満のものは非課税文書となります。
3-6.債務の保証に関する契約書
「身元保証に関する法律」に定められている身元保証に関する契約書は、非課税文書となります。
3-7.配当金領収証、配当金振込通知書
記載されている配当金額が3,000円未満のものは、非課税文書となります。
3-8.金銭又は有価証券の受取書
以下3つに該当するものは、非課税文書となります。
- 記載されている受取金額が5万円未満のもの
- 営業に関しないもの
- 有価証券、預貯金証書など特定の文書に追記した受取書
3-9.預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳
以下3つに該当するものは、非課税文書となります。
- 信用金庫など特定の金融機関の作成する預貯金通帳
- 所得税が非課税となる普通預金通帳等
- 納税準備預金通帳
4.印紙税法に違反した場合の罰則
課税文書に対して印紙税の納付しなかった場合、印紙税法に違反したとみなされます。 印紙税法第20条では罰則として、過怠税の徴収を定めています。 収入印紙を貼付し忘れてしまった場合、納付すべきであった印紙税額に加えて、その2倍に相当する額を支払う必要があります。
つまり、当初納付すべきであった3倍の金額を支払わなければならなくなります。 ただし、自ら所轄税務署長に対して納付漏れの申告をおこなった場合、当初納付すべきであった1.1倍の印紙税額へと軽減されます。
できる限り、納付漏れが発生しないようにすることが望ましいですが、万が一納付漏れが発生してしまった場合には、自ら申告することで最低限の過怠税で済むようにしましょう。
5.収入印紙以外でも印紙税は納付できる
印紙税の納税方法は、原則として収入印紙による納付となります。 課税文書に、納税額分の収入印紙を貼り付けたうえで、課税文書の作成名義人または代理人、使用人などの印章または署名で、課税文書と収入印紙の彩紋(模様)にかけて消印する必要があります。 ただし、特例として以下の方法による納税も認められています。
5-1.税印押なつによる納付
印紙税額をあらかじめ金銭で国に納付している場合、税務署で税印を押すことで印紙税を納付することができます。 ただし、税印押なつ機を設置している税務署(全国に118署)にて納付する必要があります。
5-2.印紙税納付計器の使用による納付
所轄税務署長の承認を受けて設置した印紙税納付計器を使って、印紙税額を表示した納付印を押印する方法です。 印紙税納付計器は国税庁長官の指定を受けており、かつ納付印がついているものに限られます。
5-3.書式表示による納付
課税文書が毎月継続して作成されるなど、一定の条件を満たす場合は、所轄税務署長の承認を受けた上で、金銭によって印紙税を納付することが可能です。 この方法で納付する場合、課税文書を作成するまでに一定の表示をしなければならないほか、毎月の印紙税納税申告書の提出および印紙税の納付を行う必要があります。
5-4.預貯金通帳等に係る一括納付
所轄税務署長の承認を受けた上で、特定の預貯金通帳等に係る印紙税を一括納付する方法です。 一括納付の特例を受けるためには、承認を受けるための申請書を、最初の課税期間の開始日が属する年の3月15日までに提出する必要があります。 承認を受けた後は、印紙税納税申告書を4月末までに提出し、申告書に記載した印紙税を納付します。
6.電子契約を導入すれば印紙代が不要になる!
これまで印紙税法で定められている内容や、課税文書・非課税文書について解説してきましたが、電子契約を導入すれば印紙税を納付する必要がなくなります。 電子契約とは、契約業務をオンライン上で完結させることができる仕組みです。
印紙税法や国税庁の見解、国会の答弁などでも電子契約は非課税であるという見解が述べられています。 とくに不動産や建設などの契約書を多く利用するような業界や、規模の大きい企業などでは大きなコスト削減につながります。
また、小規模な企業でも電子契約を導入することで業務効率化が大きく期待できます。印紙代のコスト削減だけでなく、業務効率化を目指している企業にとっても電子契約はおすすめです。
7.印紙税法をよく理解し、正しく納税しよう
不動産売買契約書や請負契約書などの課税文書を作成する場合、記載された金額に応じて印紙税が課されます。 印紙税額や課税される条件は文書によって異なりますので、印紙税法をよく理解し、正しく納税しましょう。
また、印紙代の削減や業務効率化を目指しているのであれば、電子契約サービスの導入も検討してみてはいかがでしょうか。
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