金銭消費貸借契約書を電子化するときのポイントや注意点を紹介
電子契約サービス
2023.03.28
2023.03.28
金銭消費貸借契約書とは、その名の通り、金銭を消費貸借する際に交わす契約書のことです。 金銭のやり取りに関する契約なので、トラブルが起こらないよう細心の注意を払う必要がありますが、昨今普及している電子契約を利用することは可能なのでしょうか? 今回は、金銭消費貸借契約書の電子化の概要と、電子化する時のポイント、注意点について解説します。
1. 金銭消費貸借契約書は電子化できる?
金銭消費貸借契約書とは、貸主から借りたお金と同等のものを、借主が貸主に返すことを定めた契約書のことです。 金銭は金銭で返すのが基本ですが、実際には借りたお金は消費されてしまうため、あとから同額を返済したとしても「消費貸借」に該当します。
金銭消費貸借契約書は、印紙税法における第1号文書に該当するため、本来ならば書面に署名・押印し、所定の印紙を貼り付けて作成・交付するのが一般的です。
しかし、民法第587条の二の4では、「消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。」として、金銭消費貸借契約書の電子化を認めています。[注1] そもそも、民法第522条では、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と定めています。
さらに同条2項では「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」とあります。 もともと契約(一部を除く)に書面は必要でないことから、その書面の様式についても特段の定めはなく、電子契約でも問題はないという考えです。
それでも金銭消費貸借契約書を始めとする各種契約書が作成・交付されるのは、後のトラブルを防ぐための手段となり得るからです。 契約書は当事者間の合意のもとに形成されるものなので、後日何らかのトラブルがあった場合、契約書があれば「契約内容について合意があった」と証明することが可能になります。
金銭消費貸借契約書を発行するかどうかは任意ですが、後のトラブル防止のためにも、電子化サービスを利用して契約書を作成・交付することをおすすめします。 [注1]民法|e-Gov法令検索
2. 金銭消費貸借契約書を電子化するときのポイント
金銭消費貸借契約書を電子化する際に押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
2-1. 金銭消費貸借契約書を作成するのは原則として貸主
金銭消費貸借契約書は、契約において貸主側が不利にならないよう、原則として貸主が作成・交付します。
もちろん、貸主側が勝手に金利や返済方法、返済期間を決めることはできませんが、貸主自らが契約書を作成することで、主導権を握ることができます。 電子契約では作成した電子契約書を相手方に送信する必要がありますので、あらかじめ契約相手のメールアドレスを尋ねておきましょう。
2-2. 電子化の方法は2つある
金銭消費貸借契約書を電子化する方法は大きく分けて2つあります。
1つ目は、紙の契約書をスキャンしてパソコンなどに取り込み、電子データとして保存する方法です。
会社に複合機などがあれば、新しい機器を導入せずに済むので、ローコストで電子化することができます。 ただ、原本となる紙の契約書を作成すること自体、手間と時間がかかってしまいます。 契約相手から送付されてきた紙の契約書を取り込んで電子データ化する場合は便利ですが、自社で作成した契約書を送付する場合は二度手間になります。
また、電子帳簿保存法では、契約書をデータ化するにあたって、一定のスキャナ保存要件を満たすことを求めています。 保存要件に満たない方法で電子化した場合、正式な契約書として認められないおそれがありますので注意が必要です。
2つ目は、電子契約システムを利用する方法です。 電子契約システムを利用すれば、システム上で作成した契約書に電子署名を付与し、そのまま契約相手のもとへ送信することができます。 元データもそのまパソコンのハードディスクやサーバーなどに保存できるため、オンライン上で契約のすべてを完結させられるところが利点です。
また、電子契約システムは電子帳簿保存法に則って開発されているため、わざわざ自分で要件を満たしているかどうか確認せずに済みます。
一方で、これまで電子契約を行ってこなかった場合、新たにシステムを導入する必要があります。 どちらにもメリット・デメリットがありますが、今後金銭消費貸借契約書を含む契約書の電子化を現場に普及させたいのなら、電子契約システムを導入した方が、契約にまつわる業務の効率化につながるでしょう。
2-3. 借主になる場合は電子契約利用の申し込みが必要
金融機関などから融資を受ける場合、自分が借主になるため、貸主である金融機関に対して電子契約の利用申し込みが必要になります。
申し込みの方法は金融機関によって異なりますが、融資の事前審査が完了した後、電子契約利用の申し込みを行う方法が一般的のようです。 その後、正式に融資の審査に通ったら、電子契約を締結し、金銭消費貸借契約書をオンライン上で受け取ることになります。
3. 金銭消費貸借契約書を電子化するときの注意点
金銭消費貸借契約書を電子化する際に押さえておきたい注意点を2つご紹介します。
3-1. 電子帳簿保存法の要件を満たしているか
金銭消費貸借契約書に限らず、帳簿書類等を電子化する場合は、電子帳簿保存法で定められた要件を満たさなければなりません。 電子帳簿保存法に基づいて満たすべき要件には、以下のようなものがあります。[注2]
- 訂正・削除履歴の確保
- 相互関連性の確保
- 関係書類等の備え付け
- 見読可能性の確保
- 検索機能の確保
1の訂正・削除履歴の確保は、もしデータが訂正・削除された場合に、その履歴を辿れるようにしておくことを意味します。 2の相互関連性の確保とは、帳簿に係る電磁的記録の記録事項と、その帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間に関連性があることを確認できるようにしておくことです。 3はシステム概要書やシステム仕様書、操作説明書などを備え付けておくことを意味します。 4は電子化に利用できるパソコンやプログラム、ディスプレイ、プリンタなどの機器や、それらの操作説明書を備え付けることで、いつでも電子化した書類を見られるようにしておくことを指します。 5は以下3つの要件を満たす検索機能を確保する必要があります。
- 取引年月日や勘定科目、取引金額など主要な記録項目を検索条件として設定できること
- 日付または金額に掛かる記録項目については、その範囲を指定して条件を設定できること
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること
以上の要件を満たしていないと、電子化しても正式な帳簿書類として認められないので要注意です。 電子帳簿保存法に対応しているシステムを利用すれば、すべての要件を満たすことができます。 [注2]電子帳簿保存時の要件|国税庁
3-2. 電子署名の付与が必要
金銭消費貸借契約書を電子化する際は、電子署名の付与が必要になります。 電子署名を付与すれば、そのデータを作成したのが間違いなく本人であることや、タイムスタンプを付与した後にデータが改ざんされていないことを証明できます。 電子署名を付与するには、電子署名サービスを利用する必要があります。 電子帳簿保存法に対応したシステムなら、電子署名を付与できる機能がついているものが多いので、システムの導入を検討してみるのもひとつの方法です。
4. 金銭消費貸借契約書を電子化するなら専用システムの導入がおすすめ
金銭消費貸借契約書は書面による交付だけでなく、電子化による交付が認められています。 電子化する方法は2種類ありますが、今後も金銭消費貸借契約書を電子化する場合は、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入した方が便利です。 電子帳簿保存法の要件を満たしていないと、電子化しても正式な帳簿書類とみなされませんので注意しましょう。
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