DX投資促進税制とは?いつから?適応対象となる企業や要件をわかりやすく解説!
DX
2023.10.11
2023.10.11
DX投資促進税制とは、企業のDXを促進するために国がおこなっている優遇措置制度です。この記事では、どんな企業が対象になるのかや、いつから申請できるのか、適応の認定を受けるための要件など、DX投資促進税制に関する基本的な知識をわかりやすく紹介します。
DX投資促進税制とは
DX投資促進税制とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入するためにかかる費用に対して税額控除または特別償却ができる制度です。2021年(令和3年)3月の税制改正で創設されました。2年間限定の措置なので、税制の対象となる時期については注意が必要です。
参考:国税庁 令和3年度法人税関係法令の改正の概要(第1編 Ⅰ、p.6)
DXとは、簡単に説明すれば、会社のビジネスモデルにデジタル技術を取り入れることによる構造変革のことです。経済産業省はDXの導入を推進しており、DX投資促進税制もその一環となっています。
DXを推進する理由は、従来のシステムを利用し続けると起こりうるリスクに対応するためです。経産省によれば、もしDXを導入せず課題を克服できなかった場合、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が発生すると見込まれています。この問題は「2025年の崖」と呼ばれ、経産省のレポートでもまとめられているので、確認しておくとよいでしょう。
参考:経済産業省 DXレポート
DX投資促進税制はいつからいつまで?
DX投資促進税制は、時限的な措置となります。DX投資促進税制の適用期限は、産業競争力強化法の改正法の施行から、令和4年度末までとなっています。
つまり、具体的には、2021年8月2日から2023年3月31日までの間に、事業適応計画に従って発生したソフトウェア費用が対象となります。
産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の事業 適応計画(仮称)について同法の認定を受けたものが、同法の改正法の施行の 日から令和5年3月 31 日までの間に、その事業適応計画に従って実施される 産業競争力強化法の事業適応(仮称)の用に供するためにソフトウエアの新設 若しくは増設をし、又はその事業適応を実施するために必要なソフトウエアの 利用に係る費用(繰延資産となるものに限る。)の支出をした場合には、次の 措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
引用:令和3年度税制改正の大綱|財務省
DX投資促進税制の内容
DX投資促進税制が具体的にどのような内容なのか説明します。
対象資産
対象となる資産は以下の設備・資産が該当します。(※1)
- ソフトウェア
- 機械装置
- 器具備品
- 繰延資産(クラウド技術の利用にかかる費用)
また、DX投資促進税制が適応される期間に取得していなければ、控除対象として認められません。たとえば、5年かけて設備を導入する長期的な計画があっても、2023年(令和5年)3月31日までに取得した設備費用のみが対象となります。
さらに、DX投資促進税制が施行される前(令和3年8月2日より前)に意思決定しておこなった投資も対象外です。
※1:DX投資促進税制Q&A
控除される金額
3%もしくは5%の税額控除、または30%の特別償却を受けることができます。(※2)
税額控除の割合は、グループ会社を除いた外部会社とデータ連携をおこなっているかどうかで決まります。自社環境のみのDX投資であれば3%が、外部と連携する内容のDX投資であれば5%が、それぞれ適用されます。5%の適用を受ける際には、連携をおこなう取り組みに応じた主務大臣の確認が必要です。
なお、投資額および税額には以下の制限があります。
- 投資額上限は300億円
- 投資額下限は売上高の0.1%
- 税額控除上限は当期の法人税額の20%
税額控除上限は別途施行されている「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」の控除とあわせた金額が上記の税額控除である点に注意してください。
DX投資促進税制の認定要件とは
控除を認めてもらうには、デジタル(D)要件と企業変革(X)要件を満たした事業適応計画を作成する必要があります。ここでは、それぞれの要件の詳細を解説します。
デジタル要件(D) | 企業変革要件(X) |
---|---|
①:データ連携 | ①:生産性の向上、もしくは新需要の開拓が見込まれること |
②:クラウド技術の活用 | ②:全社の意思に基づく取り組みであること |
③:DX認定の取得 | - |
デジタル要件
デジタル要件として満たすべき要件は次の3つです。(※3)
- データ連携
- クラウド技術の活用
- DX認定の取得
1つ目は、既存の内部データと、自社以外からの外部データを連携することです。会社が保有しているデータだけでなく、センサーなどを利用して取得したデータや、個人がもつ情報も外部データに含まれます。
2つ目は、会社のシステムにクラウド技術を活用していることです。データをクラウド上で管理、共有することで要件を満たすことができます。クラウドを利用しないオンプレミス型のみの管理では対象外となるので注意してください。
3つ目は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)でDX認定を取得することです。DX認定の対象はすべての事業者であるため、中小企業や公益法人、個人事業者も申請できます。認定されるまでに4カ月ほどかかるので、時間に余裕をもって申し込みましょう。
注意しなければならないのは、DXのデジタル要件は単なるデジタル化、IT化ではない点です。紙の書類をデータにしたり、固定電話をWeb電話に変えたりしただけでは、会社のシステムを変革したことにはなりません。データ連携やクラウドサービスを取り入れ、DX認定の要件を満たしたシステムを構築しましょう。
企業変革要件
企業変革要件として満たすべき要件は次の4つです。(※4)
①以下の取組類型のいずれかに該当する
1)新商品または新たな役務の提供による収益が投資額の10倍以上となるもの
2)新たな生産方式の導入により商品コストを8.8%以上削減するもの
3)商品または役務の新たな提供方式の導入によりコストを8.8%以上削減するもの
②2014~2018年の平均に比べてROA(総資産利益率)が1.5%向上する見込みがある
③過去5年度に比べて売上高伸び率が5%ポイント上昇する見込みがある
④全社の意思によって決定している
1から3で共通しているのは、業務改善を前提としている点です。コスト削減や生産性向上につながらないDX導入を経済産業省は望んでいません。DXによって具体的な数値が改善されることを事業適応計画で伝えましょう。
4については、全社がDX化に同意していることを示す必要があります。部門や拠点の承認だけでは不十分です。取締役会など組織全体の経営方針を決める会議の決議文書を添付してください。
※4:産業競争力強化法における事業適応計画について p.26
DX認定を受けるための認定基準とは
デジタル要件の一つであるDX認定を受けるには、以下の認定基準を満たす必要があります。(※5)
- 企業経営の方向性および情報処理技術の活用の方向性の決定
- 企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な方策(戦略)の決定
- 戦略の達成状況に係る指標の決定
- 実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信
- 実務執行総括責任者が主導的な役割を果たすことによる、事業者が利用する情報処理システムにおける課題の把握
- サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定及び実施
上記の要件を満たしてDX認定を受けた企業は、DX推進ポータルで公表されています。
参考:DX推進ポータル
自社でもDX投資促進税制の利用を検討しよう
2025年以降には毎年15兆円の損失となる可能性があるため、DXは必須だといえるでしょう。今年度中に要件を満たすことができれば控除を受けられるので、あなたの会社でもDX投資促進税制の利用を検討してみてはいかがでしょうか?申請書の書き方やポイントについては、経済産業省のPDF資料を参考にしましょう。
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