日本のDXは遅れている?海外と日本のDXの現状の比較や課題を解説
DX
2023.11.21
2023.11.21
日本のDXは海外より遅れているという話を耳にすることがあります。そのような話を聞けば、日本は本当にDXへの取り組みが遅れているか、遅れているとしたら何が原因なのかが気になることでしょう。本記事では、日本におけるDXの現状や課題・解決策をまた、日本の取り組みと海外との比較も交えて紹介します。
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この資料では、DXの基本知識や進め方についてわかりやすく解説しています。これからDXを推進したいと考えている企業の担当者の方、DXの基礎知識を知りたいという方におすすめです。
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そもそもDXとは
DXとはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称で、デジタル技術によって人々の生活を改善するよう変化させることをいいます。
企業においては、クラウド技術などを取り入れて会社のシステムを刷新し、業績改善できるよう変革させることと言い換えられます。2018年より経済産業省がDX促進に取り組んでおり、日本企業の注目を集めています。
なお、デジタル化とDXは混同されがちですが、異なるものです。デジタル化はデジタルにすること自体が目的です。一方、DXはデジタル化によって会社のシステムを変革し、ほかの会社との競争力を向上させることを目的としています。DXを推進する過程でデジタル化をおこなうと考えてよいでしょう。
日本企業のDXの現状とは?海外より遅れている?
ここでは、日本のDXの現状を海外と比較してわかりやすく解説します。
日本の世界デジタル競争力は29位
2022年にスイスのIMD(国際経営開発研究所)は「世界のデジタル競争力ランキング」を発表しています。(※1)主に「将来への備え」「知識」「テクノロジー」の観点から結果の整理がおこなわれています。
日本は前年から順位を1つ落とし、29位にランクインしています。1位はデンマーク、2位はアメリカ、3位はスウェーデンと欧米諸国が上位を占めています。また、アジア諸国についてみてみると、4位にシンガポール、7位に韓国、9位に香港、11位に台湾、17位に中国が位置しています。
このような結果から、日本は海外と比べてDX化やデジタル化で遅れをとっていることがわかります。
(※1)World Digital Competitiveness Ranking|IMD
日本企業とアメリカ企業を比較
DXに取り組んでいる日本企業の数は、アメリカと比べて少ないのが現状です。IPA(情報処理推進機構)が発刊している「DX白書2021」によると、DXに取り組んでいる企業の割合が日本では約56%、アメリカでは約79%とされています。
また、DXによる成果が十分出ている企業の割合については、アメリカは56.7%に達しているのに対して、日本では17.0%です。これらの結果から、DXに十分取り組めていない日本企業が多いことがわかります。
日本がアメリカと比べて遅れている原因として考えられるのは、思想の違いです。日本では年功序列の考え方が根強く浸透しており、昔からの習慣や設備を大事にする傾向が見られます。これに対してアメリカは成果主義の色が強く、より生産性の高い手法を積極的に取り入れています。
こうした考え方の違いにより、システムを一新することになるDXへの対応に差が生まれているといえるでしょう。
日本企業のDXの課題とは
日本でDXが遅れている原因は、取り組みはじめた時期だけではありません。DXを推進したい日本企業の多くが抱える5つの課題を解説します。
既存システムの老朽化
自社にあわせてカスタマイズすることで老朽化したシステムが、DX推進の妨げになっています。カスタマイズの経緯を知るエンジニアがおらずブラックボックス化してしまうと、老朽化したシステムを新しく移行するのが困難になります。時間が経てばシステムの複雑化や肥大化も進んでしまい、DXがより難しくなるでしょう。
また、老朽化したシステムを利用している企業は保守や運用にコストを費やしている場合が多く、DXをおこなうための資金を捻出できない問題もあります。
経営陣の理解の不足により経営戦略が示されていない
経営陣がDXを理解していないことでDXによる経営戦略を示せないことも、DXを進められない原因となっています。DXをおこなう際は、会社全体がシステムの問題点を把握し、経営陣が主体となって進める必要があります。そうしなければ、問題解決につながらないデジタル化で終わってしまう可能性が高まるでしょう。
日本の経営陣がDXを理解していないのは、そもそも理解する必要がないと考えているからです。一つの部署にすべて任せる思想が、日本では根付いています。そうした体制ではDXによる戦略や方針が定まらず、DXの推進が遅れてしまいます。
DX人材が不足している
DXに取り組める人材が足りていないことも、日本でDXが遅れている原因の一つです。
デジタル技術を使える人材がいなければ、DXを推進する意識が高くても実現させることができません。ITを活用する企業であればともかく、製造業や飲食業でDX人材を確保するのは難しいでしょう。
また、技術者だけでなくビジネストランスレーターが必要になる場合があります。ビジネストランスレーターとは、経営者とデータサイエンティストや技術者の橋渡しとなってお互いの考えを翻訳して伝える存在です。双方の知識を持ちあわせており、お互いの意思をスムーズに伝えるには不可欠となります。

DX人材とは?経済産業省の定義や育成方法・必要資格なども解説
DX人材とは、デジタル技術の活用によって企業のビジネスモデルを変革させる取り組みを推進していく人材のことです。経済産業省は日本のDX化の遅れを危惧し、DX人材の育成・確保を促しています。本記事では、DX人材の定義や職種、必要とされる資格など、DX人材についてわかりやすく解説します。
ITシステムのべンダーに依存している
DX化を進めるためには社内システムの構築が必要になります。自社のシステムを開発する際、経営方針や業務を深く理解している人材が主導することで、ニーズにあったシステムを構築することが可能です。
しかし、日本の多くの企業はシステム開発・運用をベンダーに委託している場合が多いです。
なお、ベンダーとは、ソフトウェアやコンピュータなどのIT関連製品の販売業者を主に指します。ベンダーに任せっきりにしてしまうと、業務とシステムに関する知識の両方を持っている人材が不足し、システムのブラックボックス化を招くことになります。
それにより、システム障害が発生した場合や、事業の変革にあわせてシステムを更新したい場合に、調整に時間がかかりコスト増加や機会損失につながります。
企業体質が古い
日本のDXが遅れている原因には企業体質が影響している可能性も考えられます。DXを推進するにはそれなりの資金が必要になります。また、組織体制や社内制度を変えなければならない場合もあるかもしれません。
日本の企業のなかには、未知なものにチャレンジするよりも、従来の成果が出ている状況を継続させる保守的な方針・戦略を好む企業も存在します。
このような古い企業体質が日本には残っているため、DX推進に投資をおこなうまでに時間やコストがかかり、日本のDXは海外と比較して遅れをとる結果になるのです。

DX推進ガイドブック
この資料では、DXの基本知識や進め方についてわかりやすく解説しています。これからDXを推進したいと考えている企業の担当者の方、DXの基礎知識を知りたいという方におすすめです。
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DXが遅れることによる日本企業のリスク
ここでは、DXが遅れることによる日本企業のリスクについて詳しく紹介します。
「2025年の崖」の問題に直面する
日本はDXが遅れると「2025年の崖」の問題に直面することになります。「2025年の崖」とは、このまま日本企業がレガシーシステムを使い続けると、2025年以降に最大で12兆円/年の損失が出る恐れがあることを示唆した言葉です。(※2)
また、経済産業省の「DXレポート」のなかでは、この状況のまま2025年を迎えると、基幹系システムが21年以上稼働している企業は60%になると発表しています。このような事態を招かないよう、早急にデジタル技術を活用したDXの推進が急務とされています。
(※2)DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

2025年の崖とは?人材不足などの問題点や解消方法もわかりやすく解説
「2025年の崖」とは、2018年に発表された経済産業省の「DXレポート」によって指摘された言葉です。DX化に取り組まず、現状のシステムの問題点を解消しない場合、2025年には約12兆円の経済損失を受ける可能性があると危惧されています。この記事では、2025年の崖」とは何か、なぜ2025年なのかについてわかりやすく解説します。
災害発生時の対応で遅れをとる
日本は海外と比べて地震・津波・火災・台風・洪水といった災害が起きやすい国で、災害大国と呼ばれることもあります。
DXが遅れると、このような災害やサイバー攻撃が生じたとき、日本企業はシステムを復旧させるために多くの時間を必要とし、事業を構築し直すまでに大きなコストがかかります。そのため、BCP(事業継続計画)を実現させるためにも、DXを推進し、バックアップ体制やセキュリティ対策などを早急に進める必要があります。
日本のDX課題を解決するためにできること
ここでは、日本のDX課題を解決するためにできることを詳しく紹介します。
システムの「見える化」を進める
自社のシステムがブラックボックス化した状態のままだと、新しいシステムに切り替えたり、システム障害があったりした場合に時間やコストがかかることになります。
「今は問題が発生していないから」と黙認せず、将来への投資と考え、システムの中身の可視化を進めることが大切です。システムが可視化されることで、不要な機能や業務が明確になり、無駄なコストを削減することにもつながります。
経営陣からはたらきかける
DXを推進するには社内全体の協力が不可欠です。経営陣がDXの重要性を理解することで、DX推進のための予算・スケジュールの調整や人員の確保、社内制度の改善などが円滑に進み、施策を実行しやすくなります。
このように、経営陣からはたらきかけることで、社内のDXをスムーズに推進することができるようになります。
DX人材を育成する
自社にDXを進めるために必要な知識やスキルをもった人材がいないと、DXをスムーズに推進するのは困難です。
また、少子高齢化による労働人口の減少の影響から、外部からDX人材を確保するのが難しい場合もあります。
その場合、社内でDX人材を育成する体制を構築するのも一つの手です。自社のことを深く理解している従業員に、DX推進のために必要な知識やスキルを身に付けてもらえば、素早く業務に活かすことができます。

リスキリングとは?メリットや導入のポイント・事例を解説!
近年では、IT技術の急激な発展の影響もあり、DXを推進したり、DX人材を育成したりするために、注目を集めているのが「リスキリング」です。しかし、リスキリングという用語を聞いたことはあるけれど、具体的な意味はわからないという方は多いのではないのでしょうか。 リスキリングとはどのような意味やメリットがあるのかを解説します。また、リスキリングの具体的な実施方法や企業の取り組み事例も紹介します。
ベンダーとの関係性を見直す
経営リスクや人材不足のために、ベンダー企業にシステム開発・運用を丸投げしていると、自社の基幹システムについて熟知している人材がいなくなることにつながりかねません。そのため、ユーザー企業とベンダー企業との関係性を見直すことも重要です。
たとえば、要件定義や設計などの上流工程は自社でおこない、開発やテストなどの下流工程をベンダー企業に任せることで、システムのブラックボックス化を防ぐことができます。
まずはベンダー企業に依存しないような組織作りから始めてみるのがおすすめです。
攻めのIT投資を実施する
IT投資は「攻め」と「守り」の二つに分けられます。日本では守りのIT投資が強い傾向にあります。守りのIT投資とは、従来のビジネスモデルを変えることはせず、コスト削減や業務効率化を目的としたITの活用に投資することを指します。
日本のDXの遅れを取り戻すには、攻めのIT投資にも目を向ける必要があります。攻めのIT投資とは、これまでのビジネスのあり方に変革を起こし、利益の向上をターゲットとしたITの活用に投資することを指します。
今後は世界との差を埋めるために、守りのIT投資だけでなく、攻めのIT投資にも積極的に資金を投じることが大切です。
日本政府のDXの取り組み
DX推進においてアメリカに遅れをとらないために、日本政府はさまざまな施策を講じています。ここではDXにまつわる施策のうち3つの事例を紹介します。
DX認定制度
DX認定制度は、2020年5月15日に施行された認定制度です。企業でおこなっているDXの取り組みをIPAに審査してもらい、優良な取り組みであると認められればDX認定を取得できます。認定を取得することで国から認められたことを証明でき、企業のブランド力や信頼を高める効果が期待できるでしょう。また、DX認定の取得が条件となっている制度を受けることができるようになります。
DX認定を受けるために必要な要件は、公式ページで公開しているガイダンス資料にまとめられています。すべての事業者が1年中いつでも申請が可能です。ただし、申請からには最短で60営業日かかります。また、DX認定の有効期間は2年となっており、継続するには更新申請が必要です。
DX投資促進税制
DX投資促進税制とは、企業の競争力を強化する目的で2021年8月2日から2023年3月31日までの期間限定で実施している制度です。その内容は、企業がDXへ投じた費用に対して税金を控除するというものです。控除される金額は、次のいずれかになります。
- 3%の税額控除(DX対象が自社内の場合)
- 5%の税額控除(DX対象が外部を含む場合)
- 30%の特別償却
DX投資促進税制を受けるためには、デジタル要件と企業変革要件を満たす必要があります。DX認定の取得も要件に含まれているため、DX認定を受けるまでの期間を考慮しなければならないでしょう。
DX銘柄
DX銘柄とは、DXに取り組むことで優れた実績を出している企業の中から選ばれる、政府公認の称号です。DXの模範となる企業を広く波及させることを目標としており、業種ごとに数社を選別します。「攻めのIT経営銘柄」として2015年からおこなわれていた施策ですが、2020年からはDXに重きを置かれたことで「DX銘柄」に改められました。
審査および選定は、経済産業省と東京証券取引所が共同でおこないます。選定されるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- DX認定の取得
- 東京証券取引所への上場
12月前後におこなわれるDX調査へ回答することでエントリーできます。
日本のDXはまだこれから!
海外と比較して日本のDXが遅れているのは確かだといえるでしょう。しかし、日本政府の施策によってDXは周知されつつあり、取り組みも進んでいます。海外に追いつけるよう、日本全体でDXを進めていきたいところです。
本記事で紹介したDX投資促進税制を利用することでDXでかかる負担は軽減できるため、控除を受けられるうちにあなたの会社でもDXを取り入れてみるとよいでしょう。
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