タイムカードがない会社は違法?効率よく勤怠管理する方法も紹介
勤怠管理システム
2023.10.23
2023.10.23
労働安全衛生法の改正により、2019年4月から従業員の労働時間を客観的に把握することが義務化されました。しかし、実は会社にタイムレコーダーやタイムカードがなくても法令違反にはなりません。タイムカードのメリットやデメリットを知り、自社に合った勤怠管理方法を選ぶことが大切です。この記事では、タイムカードについての厚生労働省の見解や、タイムカードの役割、タイムカード以外の勤怠管理方法を解説します。

タイムカードのお悩み解決BOOK
この資料では、紙のタイムカード(打刻機)でよくあるお悩みとその解決方法について解説しています。押し忘れの場合の対処法やタイムカードに関する法律についても紹介。勤怠・人事・給与の担当者におすすめです。
この資料では、紙のタイムカード(打刻機)でよくあるお悩みとその解決方法について解説しています。押し忘れの場合の対処法やタイムカードに関する法律についても紹介。勤怠・人事・給与の担当者におすすめです。
タイムカードがない会社でも違法にはならない
労働安全衛生法第66条の8の3には、「事業者は、(中略)労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」という文言があります。従業員の健康を守るため、労働時間を正確に把握するのは企業の務めです。(※1)
タイムレコーダーやタイムカードがなくても、タイムカードとは別に出勤簿やシステムで労働時間を把握する手段がある場合は問題ありません。労働基準法第109条や厚生労働省のガイドラインの観点から、タイムカードや勤怠管理の必要性を解説します。
労働基準法第109条上はタイムカードがなくても問題ない
労働基準法第109条には、労働関係の重要な書類の保存期間についての定めがあります。企業は労働者名簿や賃金台帳などの書類を作成し、5年間保存する義務があります。
厚生労働省の一問一答によると、労働基準法第109条の対象となる書類は次の通りです。
労働者名簿
引用:改正労働基準法等に関するQ&A|厚生労働省
賃金台帳
雇入れに関する書類
(雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書、身元引受書等)
解雇に関する書類
(解雇決定関係書類、解雇予告除外認定関係書類、予告手当または退職手当の領収書等)
災害補償に関する書類
(診断書、補償の支払、領収関係書類等)
賃金に関する書類
(賃金決定関係書類、昇給・減給関係書類等)
その他労働関係に関する重要な書類
(出勤簿、タイムカード等の記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、退職関係書類、休職・出向関係書類、事業内貯蓄金関係書類等)
労働基準法施行規則第54条によれば、従業員の労働日数や労働時間数がわかる書類の保存が必要です。
しかし、厚生労働省の一問一答に「出勤簿、タイムカード等の記録」とある通り、タイムカード以外の手段で労働日数や労働時間数を把握している場合は法令上問題がありません。
手書きのタイムカードは推奨されない
タイムカードを手書きしている会社もあるかもしれませんが、このような形で勤怠管理をおこなうことは推奨できません。
手書きのタイムカードや出勤簿は勤務時間を従業員が自己申告していることになるため、厚生労働省が勤怠管理の方法として定める客観的な記録による労働時間の把握とは認められないからです。
やむを得ず従業員の自己申告による勤怠管理をおこなう場合は、厚生労働省が出しているガイドラインにしたがって、以下のことを徹底しましょう。ガイドラインの概要は以下の通りです。
- 従業員に正確な労働時間の記録をおこない申告するよう、適切に説明すること。
- 従業員に勤怠管理の運用ルールや労働時間の規定などを十分に説明すること。
- 従業員の自己申告によって把握した労働時間が実際の労働時間と一致しているか否か、乖離が生じていると疑われた際等、必要に応じて実態調査をおこない所要の労働時間に補正すること。
- 自己申告した時間を超えて事業場にいる従業員には理由を確認するなど、申告時間が労働時間として認められるものでないか確認し、報告が適切かどうか確認すること
- 従業員の正確な自己申告を妨げる規定を設けないこと。また、法律に違反しないことを目的として、労働時間を書き換えるなどの行為がおこなわれていないかどうかを確認し、必要であれば改善措置を講じること。
参考:労働時間の適正な把握 のために 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
タイムカードがある会社でも違法になるケースがある
タイムカードがある会社でも、改ざんによって違法になるケースがあります。
タイムカードの改ざんは、使用者(会社側)によるものと従業員によるものの2つに分かれます。使用者がタイムカードを改ざんする主な理由は、残業代の削減や超過労働のごまかしです。このような改ざんがおこなわれた場合、労働基準法に抵触する恐れがあり、以下のような罰則が科せられます。
抵触する法律 |
罰則内容 |
労働基準法第37条第1項 |
6カ月以下の懲役、あるいは30万円以下の罰金 |
労働基準法第114条 |
残業代の未払いにより、最大で未払い分の残業代の2倍の金額を支払う |
労働基準法第37条第1項 |
労働基準監督署に、改ざんした勤怠記録のを提出した場合、30万円以下の罰金 |
また、残業時間は1分単位で集計しなくてはいけません。15分未満・30分未満を切り捨てて集計するのは違法です。使用者がこの規則を知らず、故意によるものではなかったとしても処罰の対象になるので注意しましょう。
次に、従業員によるタイムカードの改ざんです。従業員によるタイムカードの改ざんの理由には、遅刻・早退のごまかしや残業時間の水増しなどが挙げられます。従業員の罰則は以下の通りです。
抵触する法律 |
罰則内容 |
刑法第246条第1項 |
10年以下の懲役 |
また、法的な罰則以外にも、企業は改ざんをおこなった従業員に対し、多く支払った残業代などを返還するよう請求できます。このような不正が発覚した場合は、懲戒処分なども検討しましょう。
タイムカードの2つの役割
そもそもタイムカードには2つの役割があります。
- 始業時刻や終業時刻を客観的に把握するため
- 正確な給与計算をおこなうため
タイムカードを利用すれば、始業時刻や終業時刻を打刻し、客観的に把握することができます。また、始業時刻と終業時刻から残業時間を計算し、残業手当の算出に利用することも可能です。労働時間を可視化するうえで、タイムカードには重要な役割があります。
始業時刻や終業時刻を客観的に把握するため
労働基準法では労働時間の上限が定められています。原則1日に法定労働時間の8時間を超える労働を従業員におこなわせることはできません。
36協定を結べば1日8時間を超えて労働させることも可能ですが、36協定を結んでいる場合でも残業時間には上限規制が設けられています。上限時間を超えて残業をさせることは違法になり罰則が課せられます。
従業員が1日に何時間働いているかを適切に把握することで、過剰労働を防ぐことができます。残業や休日出勤などが常態化していることが分かれば、働き方の見直しにもつながるでしょう。
労働時間を適正な範囲におさめることは、従業員の心身の健康維持や生産性の向上につながります。
正確な給与計算をおこなうため
勤怠管理は、給与計算を正確におこなうためにも欠かせません。
時間外労働や深夜労働は割増賃金の支払いが必要です。適切に勤務時間を把握せず、残業代が未払いになったり不足していたりすると従業員とのトラブルにつながります。もし未払いの賃金を請求された場合、企業の経営状態が傾いたり、社会的な信用を失ったりするリスクもあります。
また、働いた分だけきちんと給与を受け取るという当たり前のことが守られなければ、企業と従業員の間に信頼関係を構築するいことは難しいでしょう。

タイムカードとは?仕組みや計算方法、押し忘れや時間ずれの直し方も解説
勤怠管理の方法として、タイムカードを利用している企業も多いでしょう。タイムカードは昔から利用されていますが、初めて使うので仕組みがわからない人もいるのではないでしょうか。この記事では、タイムカードの基本的な情報や計算方法、押し忘れや時間ずれの直し方について解説しています。これからタイムカードを導入する方やタイムカードによる正しい勤怠管理の方法を知りたい方は、ぜひ本記事を読んでみてください。
タイムカードを利用する2つのメリット
19世紀にタイムレコーダーが発明されて以来、タイムカードを用いた勤怠管理は瞬く間に普及し、現在でも多くの企業の勤怠管理方法として採用されています。勤怠管理にタイムカードを利用するメリットは2つあります。
- 手軽に始業時刻や終業時刻を打刻できる
- 初期費用やランニングコストを抑えることができる
タイムカードは、従業員が始業時刻や終業時刻を簡単に打刻でき、手間がかからないというのがメリットです。ICカードのタッチや指紋認証、生体認証などの手段によって、手軽に打刻できるタイムレコーダーも登場しています。
また、タイムレコーダーは安価なものなら1万円前後から購入可能です。タイムカード自体のランニングコストも低いため、勤怠管理にかかる事業コストを抑えることができます。
タイムカードを利用する3つのデメリット
一方で、タイムカードを利用した勤怠管理にはデメリットも2点あります。
- 集計作業に工数がかかりやすい
- テレワークやリモートワークに対応していない
- 改ざんされやすい
タイムカードで労働時間を把握するためには、担当者が全従業員のタイムカードを回収し、手動で集計作業をおこなう必要があります。タイムカードの始業時刻や終業時刻を転記する作業や、労働時間を計算する作業でミスが起き、大きな手戻りが発生する可能性もあります。
また、テレワークやリモートワークで働く社員はタイムレコーダーに打刻することができません。タイムカードのメリットやデメリットを比較し、自社に合った方法を選びましょう。
タイムカードの最大のデメリットは、常に改ざんのリスクが伴うことです。厚生労働省のガイドラインに従って管理を徹底しても、改ざんのリスクを完全に取り除くことはできません。使用者と従業員、どちらによる改ざんであっても企業にとっては大きな損失であり、罰則を課せられる可能性があります。
勤怠管理をタイムカードでおこなう場合は、これらのデメリットがあることを十分理解しておきましょう。タイムカードによる勤怠管理が難しい場合は、勤怠管理方法の見直しが必要となります。
タイムカードがない会社におすすめの勤怠管理方法
タイムカード以外にも、さまざまな勤怠管理方法があります。たとえば、Excelの関数やマクロを活用すれば、労働時間を自動で集計し、業務効率化を実現することができます。また、勤怠管理システムを導入すれば、テレワークやリモートワークでもスムーズに従業員の労務管理が可能です。ここではタイムカード以外の勤怠管理方法の特徴やメリットを解説します。
Excelで労働時間を管理する
オフィスソフトのExcelを活用すれば、紙のタイムカードよりも労働時間の管理を効率化できます。Excelの関数やマクロ機能を活用し、労働時間を自動で計算するシートを作成すれば、タイムカードの集計作業を自動化することが可能です。
また、Excelで勤務表を作成すれば、従業員が各々のPCで始業時刻や終業時刻を入力できるため、テレワークやリモートワークに対応することができます。
ただし、Excelによる勤怠管理には計算ミスや改ざんなどのデメリットがあります。改ざんを防ぐために、セルの編集権限を設定するなど対策をおこないましょう。
また、運用の際は、勤怠集計を2名体制でおこなったり、改ざんが起きていないことを定期的にチェックしたりするなど、多くの時間や労力が必要になるでしょう。

タイムカードをエクセルで管理するには?作り方や集計方法、メリットやデメリットも解説
紙のタイムカードを用いた勤怠管理は、タイムカードの回収や数字の転記、手作業での集計に多くの工数がかかります。 勤怠管理の効率化として、タイムカードをエクセルで管理する方法があります。 勤怠管理にエクセルを活用すれば、関数やマクロで集計作業を自動化することができます。 この記事では、タイムカードをエクセルで管理する方法や、エクセルを活用するメリットやデメリットを解説します。
勤怠管理システムで労働時間を管理する
勤怠管理システムなら、従業員の労働時間をリアルタイムに把握することが可能です。従業員はPCやスマートフォン、タブレットなどの端末を利用し、いつでもどこでも出退勤の打刻が可能です。
始業時刻や終業時刻のデータは自動で集計され、管理画面からひと目で確認できる仕組みになっています。労働基準法などの改正がおこなわれた場合、アップデートによって自動で対応することができる点も勤怠管理システムのメリットです。
勤怠管理システムは、全従業員の勤怠を一元管理でき、勤怠管理におけるデメリットもカバーしています。改ざんリスクや集計工数の多さなど、タイムカードでの勤怠管理に悩む企業の救世主的な存在と言えるでしょう。

勤怠管理システムとは?導入のメリット・デメリットや比較方法を解説
勤怠管理システムは、従業員の打刻によって就業時刻を適切に把握し、管理するシステムです。クラウド型とオンプレミス型の2種類に分けられ、システムによっても打刻方法や対応可能な労働形態に違いがあります。本記事では、勤怠管理システムを比較する際のポイントや導入メリット等を解説します。
タイムカードがない会社での残業代の支払い
タイムカードがなく、出勤簿などで勤務時間を管理している企業であれば、残業代は従業員の申告に基づいて支払うことになります。
始業時刻や終業時刻を客観的な記録で残すことが難しいため、固定残業代制やみなし労働時間制の導入を検討することも有効だといえます。
固定残業代制は、一定時間の残業が発生するとみなしてあらかじめ基本給に残業代を組み込んで支給する制度です。固定残業代制であれば残業計算も簡単におこなえるため勤怠管理担当者の業務も削減することができます。
ただし、固定残業代制の場合であっても勤務時間の把握が必要です。もし、みなされていた残業時間よりも多く残業が発生した場合には、超過している労働時間に対して追加で残業代を支給する必要があります。
タイムカードがない会社は勤怠管理方法を見直そう!
労働安全衛生法の改正によって、企業は従業員の労働時間を正確に把握することが義務付けられました。しかし、厚生労働省のガイドラインに従い、労働時間を正確に把握できている場合は、タイムレコーダーやタイムカードがなくても法令違反にはなりません。
タイムカード以外の勤怠管理方法として、Excelや勤怠管理システムがあります。タイムカードにはメリットもありますが、改ざんなどのデメリットもあるため、自社のニーズに合った勤怠管理方法を選ぶことが大切です。タイムカードによる勤怠管理に不安がある場合は、勤怠管理システムの導入を検討してみましょう。

タイムカードのお悩み解決BOOK
この資料では、紙のタイムカード(打刻機)でよくあるお悩みとその解決方法について解説しています。押し忘れの場合の対処法やタイムカードに関する法律についても紹介。勤怠・人事・給与の担当者におすすめです。
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