テレワークの労働時間管理をするおすすめの方法を紹介
勤怠管理システム
2023.08.31
2023.08.31
非対面での勤務をするテレワークでは労働時間や残業時間などの従業員の勤務実態の把握が課題となることがあります。テレワークでの労働時間管理を適切に実施するためには、客観的記録に基づいた出勤・退勤時間の管理が欠かせません。この記事ではテレワークで適正な労働時間を管理するためにおすすめの方法を紹介します。
政府が推進する働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、働く場所を問わないテレワークを導入する企業が増えてきました。テレワークは従業員のワークライフバランスを改善し、働きやすさを向上させるといった様々なメリットをもたらします。
一方、従業員一人ひとりが異なる場所で働くテレワークでは、労働時間管理の手法にも工夫が必要です。ITツールを活用し、従業員の労働時間を正しく管理できる環境を整えましょう。
1. テレワークの勤務実態に合わせた労働時間管理が重要
労働時間管理はテレワークを導入する企業の多くが直面する問題です。労働時間とは「従業員が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。オフィス勤務であれば、従業員は原則として組織や上長の管理下にあることが明確なため「オフィスにいる時間=労働時間」と考えられます。
一方、非対面での業務を常態とするテレワークでは、従業員が実際に働いているのかを常に確認するのは現実的ではありません。出勤・退勤の時間は従業員の自己申告となり、また就業時間中に掃除や洗濯など家の用事をこなす「中抜け」も考えられるため、正確な労働時間の把握は困難です。
しかし、いい方を変えると「勤務時間に一定の裁量を与える」ことや「業務と個人の用事を両立できる」ことはテレワークのメリットでもあります。
大事なことは働き方の変化に合わせて管理手法の刷新をすることです。テレワークは従業員の働き方を根本から変えるものであり、オフィスへの出勤を前提とした旧来の管理手法は正しく機能しません。従業員がストレスなくテレワークに臨むことができるよう、柔軟な働き方をサポートする管理手法を取り入れましょう。
2. テレワークにおける労働時間管理の課題
テレワークにおける労働時間管理を適切に実施するため、企業は多くの課題をクリアしなければなりません。企業によって直面する課題は様々ありますが、ここでは代表的な事例を紹介します。
2-1. 出勤・退勤時間を正確に記録できない
従業員の出勤・退勤時間の把握と記録は企業の責務であり、テレワークであってもそれは同様です。厚生労働省が作成した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間管理の原則として以下の2つを挙げています。[注1]
- (出勤・退勤時間は)使用者が、自ら現認することにより確認すること。
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
オフィス勤務の場合、上長による目視確認とICカード等による打刻記録によって勤怠記録の整合性が担保されます。しかし、テレワークでの出勤・退勤時間は本人の自己申告となり、上長による目視確認は実施されません。申告漏れや虚偽申告のリスクも生じます。
自己申告で出勤・退勤時間を管理する際は、事実との整合性が確認できる手法を組み合わせるとよいでしょう。詳しくは後述しますが、「メールの送信時間」や「パソコンの起動記録」を参照する方法が挙げられます。また、インターネット経由での打刻が可能なクラウド型勤怠管理システムの導入も検討しましょう。
[注1]厚生労働省:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
2-2. 「中抜け」の扱いが規定されていない
就業時間における「中抜け」もテレワークの労働時間管理に特有の課題です。上長による監視の目がないテレワークでは、従業員からの申告がない限り中抜けの事実を把握できません。就業時間中に掃除や洗濯などの家事を済ませる人もいれば、子供の送迎や通院等で自宅を離れる人もいるでしょう。
しかし、業務と私用の両立ができる点はテレワークを導入する目的のひとつであり、必要以上に強い引き締めは本末転倒です。一般的に「サボり」と判断される中抜けは認められませんが、従業員の生活に関連するものであれば、ある程度は柔軟に対応する姿勢も求められます。
なお、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のガイドライン」によると、中抜けを把握するか、把握しないかは企業が自由に判断してよいとされています。[注2]
ただし、労使トラブルを回避するため中抜けの扱いについて事前に就業規則で定めることが重要です。
【テレワークにおける「中抜け」の取り扱い例】
- 中抜けを休憩時間として扱い、所定労働時間を繰り下げる
- 中抜けを時間単位の年次有給休暇として取り扱う
- 中抜けを所定労働時間として扱う
[注2]厚生労働省:テレワークの適切な導入及び実施の推進のガイドライン
2-3. 長時間労働になりやすい
テレワークは作業効率向上による時間外労働の削減が期待できる一方、1日の労働が長時間化しやすいこともあります。主に「上長の監視が弱くなること」や「時間外でも仕事ができる環境であること」「仕事とプライベートの区別があいまいになりやすいこと」などが原因です。
テレワークにおける長時間労働を抑制するための施策としては以下の方法が挙げられます。
- 時間外や休日はメール、電話等による連絡を控えるよう指示する
- 時間外や休日はシステムにアクセス制限を掛ける
- テレワークの趣旨を説明し、時間外労働を原則禁止、もしくは許可制とする
- 長時間労働をおこなう従業員に対して注意喚起をおこなう
2-4. 人事評価制度の取り扱い
テレワークの導入にあたっては、労働時間管理と合わせて人事評価制度の見直しも必要です。出社の場合とは異なり、非対面で人事評価をすることは難しい場合があります。事前に人事評価の基準や評価項目を明確にしておくことで、従業員も納得した形で適正な人事評価をおこなうことができます。
勤務時間外にメールや電話の返答がなかったことを理由に評価を下げたり、オフィスへの出勤数が多い労働者を高く評価したりといった人事評価は不当です。これらの例は従業員のテレワークに対する意欲を妨げます。テレワーク実施者が不利益な評価を受けないよう、評価者に対する適切な評価制度の周知も必要です。
3. テレワークを採用する場合に企業が注意すべきポイント
テレワークを採用する場合に企業が注意すべきポイントはいくつかあります。本章では主な注意点を3点解説します。
3-1. テレワークでも適切な残業代の支払いが必要
テレワークにおいて残業が発生した場合、適切な残業代の支払いが必要です。出社かテレワークかにかかわらず、残業が発生したのに残業代を支給しないことは違法となるため、注意しましょう。
適切に残業代を支給するためには、残業時間を正確に把握する必要があります。そのため、日頃の勤怠管理が重要となります。
残業代などの詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
3-2. テレワークに対応した教育制度を整える
テレワークは非対面で業務するため、出社の場合よりも社員の教育が難しいということが課題として挙げられます。チャットやWeb会議システムなどを用いて、社員が気軽に質問することができる環境を作ることなどがテレワークに対応した教育制度を整える方法のひとつです。
3-3. テレワークにかかる各種費用について規定しておく
テレワークで出社するための交通費が不要になりますが、在宅で仕事をする際の電気代や通信費などが発生します。従業員の負担が大きくなりすぎないように注意しましょう。
業務に必要な備品は会社から支給したり、従業員自身で購入してもらった分は経費申請してもらったりすることで負担を軽減することができます。
4. テレワークで労働時間の適正な管理をする方法
前述の通り、勤務実態が把握できないテレワークでは労働時間管理にも工夫が求められます。特にタイムカードやICレコーダーなどを使用している場合は、不正打刻が起こる可能性もあるため、申告内容と勤務実態の整合性確認が重要です。
ここではテレワークの勤怠管理でおすすめの方法を紹介します。
4-1. 出勤・退勤時間をリアルタイムでメール報告する
出勤・退勤時間を自己申告とする場合は、その都度リアルタイムでメール報告とするのも一つの方法です。メールであれば送信時間が記録として残るため、本人による申告と送信時間による客観的事実により時間の整合性が担保されます。メール以外ではチャットによる報告をしている企業もあります。ただし、従業員が多い場合、メールやチャットでの勤怠確認は一人ひとり確認することが手間になる場合もあります。
電話での勤怠報告は報告者が重複した場合に通話の順番待ちが発生し、リアルタイムの報告ができなくなる恐れもあります。また、管理者の負担も大きくなるため、報告の手段としては避けた方がよいでしょう。
4-2. パソコンの起動状況やシステムのログイン記録で管理する
厚生労働省の「適正把握ガイドライン」では、パソコンの起動情報を出勤・退勤時間の客観的記録とする管理手法も推奨されています。この場合、出勤と同時にパソコンを起動し、以降は退勤までシャットダウンせずに起動し続けることが条件です。
同様にグループウェアやチャットツールなど業務上必ず使用するツールのログイン記録も出勤・退勤時間の参考にできます。申告内容に対し著しい乖離があった場合は、該当の従業員に事実確認をおこない勤怠記録を修正しましょう。
4-3.クラウド型勤怠管理システムを利用する
テレワークの労働時間管理で最もおすすめの方法はクラウド型の勤怠管理システムの導入です。クラウド型勤怠管理システムであればパソコンやタブレット、スマートフォンからインターネット経由で打刻がおこなえるため、テレワークでも正確な勤怠記録を残せます。
メールやチャットでは一人ひとりの勤怠情報を確認しなければなりませんが、勤怠管理システムでは、管理者がまとめて従業員の勤怠状況を一覧で表示できるものもあります。
近年では指紋認証や顔認証など本人を特定する機能を備えたシステムも多く、不正打刻への対策も進んでいます。多くの製品では既存の給与計算ソフトとの連携にも対応しており、テレワークにおける労務管理業務全体の効率化も図ることができます。
5. ITツールを活用してテレワークの労働時間を適切に管理しよう
本記事ではテレワークにおける労働時間管理におすすめの方法を紹介しました。非対面での勤務を常態とするテレワークでは、従来のように目視による勤務実態の把握ができません。メールやチャット、クラウド型勤怠管理システムなどのITツールを活用し、テレワークの勤務形態に適した労働管理ができるように環境を整備しましょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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