パートが有給休暇を取得するための条件とは?日数や賃金の計算方法も解説
勤怠管理システム
2023.08.31
2023.08.31
有給休暇は雇用形態に関わらず、要件を満たしていればパートであっても取得する権利があります。ここでは、パートが有給休暇を取得するための条件や、労働日数別の有給休暇の付与日数、有給休暇を取得した際の給与の計算方法などをわかりやすく解説します。
1.そもそも有給休暇とは
そもそも有給休暇とは、従業員の働きすぎを防止し、リフレッシュを図るための休暇です。
有給休暇を付与することは企業の努力義務ではなく、守るべき義務です。
従業員に有給休暇を付与しなければ、30万円以下の罰金または6か月以下の懲役が科されます。有給休暇のルールについてしっかりと確認しましょう。
2. パート・アルバイトにも有給休暇は付与される
パートやアルバイトにも一定の条件を満たせば有給休暇を取得する権利があります。企業は以下の付与条件を確認し、パート・アルバイトにも有給休暇を付与しましょう。
2-1. パート・アルバイトに有給休暇が付与される条件
有給休暇は雇用形態によって取得できる日数が異なるわけではなく、パートの場合も正社員と同様、以下の要件を満たしていれば有給休暇を取得することが可能です。
- 雇い入れ日から6ヶ月間継続して勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤していること
なお、業務上の理由によるケガや病気で休業した場合や、産前産後休暇、育児休業、介護休業、年次有給休暇についても出勤日に含まれますが、休日出勤日は含みません。
2-2. 所定労働日数が週5日(年217日以上)の場合
所定労働日数が週5日の場合、以下の表の通りに有給休暇日数が付与されます。
2-3. 所定労働日数が週4日以下の場合
所定労働日数が週4日以下の場合、週所定労働日数と継続勤務年数によって有給休暇日数が決まる比例按分方式が取られます。以下の表の通りに有給休暇日数が付与されます。
3. 2019年から有給休暇取得義務化
2019年に法改正がおこなわれたことによって、年に10日以上有給休暇が付与される従業員に年5日の有給休暇を確実に取得させることが企業に義務付けられています。
パート・アルバイトの従業員も、年10日以上有給休暇が付与されている場合、年5日取得義務の対象です。そのため、企業は10日以上有給休暇が付与される従業員を把握して、5日取得ができているかを確認する必要があります。
もし、対象の従業員に5日の有給休暇を取得させられなかった場合、労働基準法に反しているため、企業は罰則を受ける可能性があります。
5日の有給休暇を取得させられなかった従業員1人につき、30万円以下の罰金が科され、100人いた場合最大3,000万円の罰金が科されることになります。
3-1. 年10日以上有給休暇がある従業員の有給休暇は管理簿で管理しましょう
有給休暇の年5日確実取得をさせるにあたって管理簿の作成と保管が企業に義務付けられました。管理簿の作成は年10日以上有給休暇が付与された従業員のみでかまいませんが、一人ひとりに作らなければなりません。
管理簿の作成方法は紙・エクセル・システムのどれでもかまいませんが、必ず記載しなければならない項目が3つあります。
①有給休暇を付与した日(基準日)
②実際に従業員が有給休暇を取得した日
③付与した日から1年間以内に有給休暇を取得した日数
管理簿のエクセルフォーマットは以下のURLからダウンロードすることができます。従業員が多くなれば、管理簿の管理も煩雑になってくるため、システムなどの自動算出できるツールを使うと業務の負担を減らすことができるでしょう。
4. パート・アルバイトが有給休暇を取得した際の金額の計算方法
有給取得した際の給料の計算方法は、労働基準法により次の3種類から選ぶこととなっています。なお、シフト勤務などの場合は同じ従業員でも1日ごとの労働時間にバラつきがあることが考えられますが、その場合も同様です。
4-1. 通常賃金による計算
通常どおり勤務した場合に支払われる賃金と同様の金額です。
固定で勤務日数や勤務時間が決まっている場合にはこの計算方法が使用されることが多いでしょう。
4-2. 平均賃金による計算
直近3ヶ月の賃金の総額をその期間に勤務した日数で割った金額です。
勤務日数が固定されておらず、月によって差がある場合などに使われることの多い計算方法です。
計算方法は2通りあり、計算して金額の高い方を採用します。
- 直近3ヶ月の賃金の総額を休日を含んだ日数で割る
- 直近3ヶ月の賃金の総額を労働日数で割った額の6割
1.の計算方法を用いると、労働日が少なかった月があった場合に極端に賃金が少なくなる可能性があります。そのため、2.の計算方法が最低保証額に設定されています。
また、平均賃金を用いて賃金を算出した場合、最低賃金を上回っているかどうかの確認も必要です。最低賃金を下回ると違法となるため、注意が必要です。
4-3. 標準報酬月額による計算
標準報酬月額とは、健康保険の保険料額を決める際の基準となる金額を指します。
1日分の有給休暇の賃金(標準報酬日額)は、標準報酬月額の30分の1です。
ただし、パート・アルバイトの場合は社会保険の加入条件を満たしていない従業員も多いため、有給休暇の給与計算で使用されることは稀です。もし、標準報酬月額を用いるなら、労使協定を結んでおかなければなりません。
4-4. 賃金の計算方法は就業規則に規定しましょう
有給休暇の賃金の算出方法はどれを選んでもかまいませんが、企業はあらかじめ就業規則に規定しておく必要があります。従業員ごとに変えることなどはできないので、注意が必要です。
5. 有給休暇は有効期限内であれば繰越が可能
有給休暇には2年間の有効期限があります。有給休暇が付与された当年度に使いきれなかった場合、有効期限内であれば、翌年度に繰り越すことができます。
繰越日数の上限はないため、有効期限内の有給休暇は全て繰り越すことができます。
独自で就業規則などに「有給休暇は1年で消滅する」などという記載があったとしても、法違反であるため無効となります。
6. パート・アルバイトから正社員になった場合の有給休暇の取扱い
従業員がパートから正社員に変わった場合、既に付与されている有給休暇の日数をそのまま引き継いで与えなければなりません。また、次の有給休暇付与日には、パートとして採用した日から通算した勤続年数を基に付与します。
逆に、正社員からパート社員になった場合でも、既に付与されている有給休暇はそのまま引き継がれます。
パートから正社員に転換する際に一度形式的に退社した場合でも、有給休暇を計算する上で勤続年数は通算するため、注意が必要です。
7. パート・アルバイトの有給休暇に関する注意点
有給休暇は従業員が希望した日に取得することができます。しかし、現実問題として複数の従業員が同時に有給休暇を取得すると営業に支障をきたすことも考えられます。そういったトラブルを回避するためにも、次のようなポイントを押さえて従業員の管理を行いましょう。
7-1. 事前申請をしてもらう
有給休暇は従業員が希望した日に取得するものですが、企業側には従業員の有給休暇の取得日を調整する「時季変更権」があります。しかし、この権利はあくまでも事業の正常な運営が妨げられると客観的に判断される場合のみですので、慢性的な人手不足の場合などには認められません。
そのため、シフトの調整や取得日の変更の相談が出来る程度の時間的余裕が持てるよう、有給休暇の取得には事前申請を必要とする旨を就業規則に記載するなどしましょう。
7-2. 繁忙期の周知徹底
有給休暇は前倒しによる付与を除けば、早くとも雇い入れ日から6ヶ月間経過してからの付与となりますが、従業員の中には繁忙期を知らずに繁忙期に有給休暇の取得を申し出るケースも考えられます。
有給休暇はあくまでも従業員が希望する日に取得させるべきですが、あらかじめ繁忙期の周知徹底をしておくことで、有給休暇の取得を希望する従業員が繁忙期に集中することを避けられる可能性もあります。
7-3. 計画的付与を活用する
5日を超える部分の有給休暇については、あらかじめ取得する日を指定しておき、その指定日に従業員に有給休暇を取得してもらう「計画的付与制度(計画年休)」を活用することも可能です。閑散期などを利用すれば長期休暇を設けることもできるでしょう。
なお、計画的付与制度を行うためには労使協定の締結と就業規則への明記が必要となります。
8. 正しい知識で良好な労使関係の構築を
パートであっても要件を満たしていれば有給休暇を取得する権利が発生します。パートの場合は勤務日数や勤務時間などが変則的になりやすく、有給休暇の付与日数や給料の計算方法も複雑になりがちですが、正しい知識のもとで正しい日数の付与と給与の支給を行いましょう。
また、良好な労使関係を築いていくためにも、有給休暇に関するルールをあらかじめきちんと定めておくことが重要です。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
企業のみなさまへ
あなたもDXログにサービスを掲載しませんか?
あなたもDXログに
サービスを掲載しませんか?