有給休暇の取得には事前申告が必要!申請ルールの決め方や申請方法について
勤怠管理システム
2023.08.31
2023.08.31
有給休暇の取得は労働者の権利であるものの、労働基準法に定められている労働者の時季指定権と企業側の時季変更権について考えると事前申請が必要となります。企業側は就業規則によって、申請寳保や申請期限を定め、しっかりと従業員に周知することが重要です。
有給休暇は企業の福利厚生の一つであるとともに、労働者の権利でもあります。しかし、労働者はいつでも好きな時に有給休暇が取れるというわけではなく、ルールに従って事前に申告しなければなりません。
当記事では、有給休暇際の事前申告と、申請ルールの決め方について解説します。
1. 有給休暇の取得には事前申告が必要
結論からお伝えすると、有給休暇の取得には事前申告が必要です。これには労働基準法に定められている規定が関係しています。
有給休暇の事前申告について詳しく見ていきましょう。
1-1. 有給休暇には時季指定権がある
有給休暇は、労働者の利益のために取得が認められているものであり、時季指定権が与えられています。
時季指定権とは、労働基準法第39条第5項に定められているもので、労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければならないというものです。
つまり、労働者は前もって時季を指定し、事前申告することで有給休暇を取得するのが労働基準法の意図といえます。
1-2. 企業の時季変更権を守るためにも事前申告が必要
有給休暇に関しては、企業の時季変更権も関係してきます。従業員が有給休暇を申請した日が繁忙期にかぶっていて会社の仕事が大幅に滞るなどの特別な理由がある場合に限って、雇用主や企業が別の時季に有給休暇を取得させることができるのが時季変更権です。
労働者から有給休暇の申請があった場合、企業側は事業が滞らないかを検討し、必要なら時季変更権を行使することができます。
労働者が突然有給休暇を取得したり、事後申請したりすると、企業側は時季変更権が行使できないため、事前申告が原則となっています。
2. 有給休暇における申請ルールの決め方
きちんと労働者の有給休暇管理をするために、申請ルールを決めましょう。
本章で有給休暇の申請ルールで定めるべきルールを解説します。
2-1. 申請の方法
有給休暇の申請のルールで重要なのは、申請の方法です。有給休暇の申請を誰にどのように行うかを決めておくようにしましょう。
たとえば、有給休暇の申請は直属の上司に行うことを定めていれば、誰に責任があるかが明確になります。さらに、メールや申請書によって有給休暇の申請を行うよう取り決めておけば、不必要な混乱の発生を防げます。
2-2.何日前に有給申請するか
有給休暇の申請ルールの別のポイントは、申請の期限についてです。あまりギリギリになって有給休暇を申請されると、業務の引継ぎなどに支障が出る恐れがあります。
一般的には、数日前までに申請するように求めている企業が多いです。あまりに早いと、有給休暇取得しにくいといったことにもなるので、バランスを見ながら自社に合うルールを定めましょう。
2-3. 当日申請や事後申請を認めるか
有給休暇の取得について多くの企業が抱える問題は、当日申請や事後申請を認めるかどうかです。
始業前にいきなり電話がかかってきて、「今日有給休暇を取らせてください」と言われた場合、欠勤にすべきなのか有給休暇として認めるのかは難しい問題でしょう。
企業側は当日申請や事後申請を認める義務はないので、有給休暇の申請は事前申告のみとする判断もあり得ます。
また、当日の始業時間前に有給休暇の申請を行った場合でも、労働日は0時から始まるものと規定されているので法律上は事後申請となります。こうしたケースで有給休暇の申請を認めるかどうかについても就業規則に記載しておくのがよいでしょう。
トラブルを防ぐためにも、事前に就業規則に記載して従業員に周知しておくことが重要です。
3. 有給休暇のルールを社内で周知する方法
有給休暇のルールを社内で周知することは、トラブルを防ぐのに役立ちます。
ここでは、具体的にどのように周知すべきなのか、いくつかのアイデアを見ていきましょう。
3-1. ポスターや張り紙での掲示
まず行うべきなのは、ポスターや張り紙での周知です。労働基準法施行規則第52条には、就業規則の周知について、常時各作業場の見やすい場所に掲示する、もしくは掲げると定められています。
従業員が把握しやすいように、目に入る場所に掲示しましょう。
3-2. 電子機器で就業規則を閲覧できるようにする
労働基準法の同じ条文には、就業規則について各作業場に内容を常時確認できる機器を設置することが定められています。
具体的な方法について指定はありませんが、従業員がパソコンやタブレットを使ってすぐに就業規則を参照できる状態にしておくことが望ましいでしょう。
就業規則についてしっかり周知していない場合、有給休暇のルールを守らせることができなくなります。有給休暇の事前申請のルールを守ってもらうためにも、就業規則の周知を徹底しましょう。
4. 有給休暇の申請方法
有給休暇の申請方法にはいくつかの方法があります。どのような方法で有給休暇を申請すべきかについても就業規則に明記しておくことが、トラブル回避につながります。
ここでは、有給休暇の申請方法について見ていきましょう。
4-1. 口頭で申請する
有給休暇の申請でもっとも簡単と思われるのが「口頭」による申請です。従業員が有給休暇の申請をしたいと思った時に、直属の上司や担当者に口頭でその旨を伝えます。
労働者が有給休暇を申請しやすい、取得しやすい方法ではありますが、ミスが発生しやすいのがデメリットです。労働者が有給休暇を申請した日を忘れる、担当者が有給休暇の処理を忘れるなどのトラブルが発生する恐れがあります。
有給休暇の申請のやり取りは記録に残して、なにか問題が生じた際に確認できる状態にしておくことが望ましいでしょう。
4-2. チャットやメールで申請する
現在では社内でもチャットやメールを使って連絡を取ることも多いので、有給休暇の申請もチャットで行う会社が増えています。チャットであれば、必要な情報を記載することでミスを防げます。
もちろん、チャットやメールで有給休暇の申請を行う場合には、有給休暇を取得する日付などを明記するよう指示することが必要です。
ただし、チャットやメールの場合には、他の連絡に埋もれてしまう恐れがあるので注意しましょう。
4-3. 有給休暇申請書を提出する
もっともミスを防ぎやすい方法として挙げられるのが申請書の作成です。紙の申請書を使う場合はやや手間がかかる方法ですが、有給休暇の申請書をがあることで担当者も漏れなく処理がおこなえます。
有給休暇を管理できる勤怠管理システムなどを用いれば、オンライン上で申請のやり取りができるため、有給休暇申請で日付を選択して提出すれば申請が完了するものもあります。押印の必要や紙管理が不要なため、有給休暇申請に関する手間を削減できるメリットがあります。
5. 有給休暇申請書の書き方
有給休暇申請書を提出する上で、書き方に規定があるわけではありません。ここでは、厚生労働省が発表しているテンプレートなども紹介しながら、有給休暇申請書の書き方や書くべき内容について解説します。
5-1. 有給休暇申請用紙やエクセルのテンプレート
有給休暇の申請用紙は厚生労働省のホームページで公開されています。以下のリンクからダウンロードすることができます。
あくまで参考様式なので、必要に応じて項目を増やしたり減らしたりすることが可能です。こちらを参考にして、自社にあった申請書の様式を作成すると良いでしょう。
また、有給休暇の申請書のエクセルのひな形やテンプレートを無料で公開しているサイトもあります。必要に応じてダウンロードして活用してみてください。
5-2. 申請書に申請理由は必要?
申請書のフォーマットを作成する上で、申請理由を記載する欄を設ける必要はありません。なぜなら、有給休暇は理由によらず取得できる休暇であるためです。企業は従業員の申請理由を書かせたり、申請理由によって有給休暇を拒否することはできません。
6.申請された有給休暇を拒否できる?
原則従業員に有給休暇の取得時季を指定する権利があるため、企業は申請された有給休暇を拒否することはできません。
しかし、従業員が有給休暇を取得することによって業務に支障が出ると判断でき、なおかつ企業が人員を確保する努力をしたなど一定の条件を満たしていれば企業には有給休暇の取得時季を変更する権利があります。これを時季変更権といいます。
時季変更権を行使する際に業務に支障が出るかどうかは以下の内容が考慮されます。
- 事業所の規模
- 業務内容
- 当該従業員の担当する職務内容、性質
- 職務の繁閑
- 代替要員確保の難しさ
- 有給休暇を同時季に指定した従業員の人数
- これまでの労働慣行
これらを総合的に判断して、業務に支障が出る場合は従業員と話し合ったうえで時季変更することができます。
しかし、有給休暇を取得することは従業員の権利であるため、基本的には有給休暇の申請は拒否できず、時季変更権はいつでも使えるものではないという認識を持っておきましょう。
7. 有給休暇の申請ルールを決めてしっかり周知しよう
有給休暇の取得には、従業員の時季指定権と企業の時季変更権が関係しているため、事前に申請を行うことが必要となります。
申請方法や申請書の内容は特に定められていませんが、トラブルが起こらないように、就業規則などにしっかりと記載しておくことが重要です。
企業側は労働基準法に則った有給休暇の取得に関するルールを定め、従業員に周知しましょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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