固定残業代の計算方法とは?注意点と効率化するコツを解説
勤怠管理システム
2023.08.31
2023.08.31
固定残業代は2つのパターンがあるため、どちらのタイプを導入しているかで計算方法も異なります。今回は、固定残業代の計算方法と、計算の際の注意点について詳しく解説します。効率良く計算するコツも紹介していますのでぜひ最後までご覧ください。
あらかじめ給料の一部に残業したことをみなして固定の金額を支給することを「固定残業代」とよびます。企業が取り入れている固定残業のパターンによっては計算方法が異なることもあるため、トラブル防止のためにも正しい計算方法を理解することが大切です。
今回は、固定残業代の計算方法や注意点、効率的に計算するコツについて解説します。
2パターンある固定残業代の計算方法
固定残業代は厳密には2つに区別できます。
1つ目は「手当型」の固定残業代で、基本給に固定残業代をプラスして支給するタイプです。手当型という名称の通り、役職手当や通勤手当など他の手当と同様「基本給20万円、固定残業代3万円」と明確に区別されています。
2つ目は「基本給組込型」と呼ばれるもので、基本給の中に割増賃金を含めたものを指します。雇用契約書や求人票には「基本給23万円(固定残業時間20時間分として3万円を含む)」のような形で表現されることが多いものです。
基本給組込型は、パッと見たところ給料が高く見える点が特徴です。そのため誤解されやすく、正しい記載方法で明記しないとトラブル発生の元になります。2つの固定残業代の計算は異なりますので、それぞれの計算方法を解説します。
手当型の計算方法
手当型は、基本給と明確に分けて固定残業代が支給されているため、以下の式で計算できます。
(基本給 ÷ 月の平均所定労働時間) × 固定残業時間 × 割増率 |
1ヶ月の賃金(基本給)が240,000円、固定残業時間が30時間、月の平均所定労働時間を160時間とした場合は以下のような計算になります。
(240,000 ÷ 160) × 30 × 1.25 = 56,250
手当型の場合では、固定残業代56,250円という結果になりました。
基本給組込型の計算方法
続いて基本給組込型の計算ですが、注意するべき点は基本給の中に割増賃金が組み込まれているところです。そのため、計算で必要な1時間当たりの賃金は、割増賃金が含まれた給与総額から算出します。よって、以下の計算式になります。
給与総額 ÷ {月の平均所定労働時間 +(固定残業時間 × 1.25)} × 固定残業時間 × 割増率 |
先ほどと同じ条件、1ヶ月の賃金240,000円に固定残業時間30時間を含み、月の平均所定労働時間を160時間とした場合で計算してみます。
240,000 ÷ {160 + (30 × 1.25)} × 30 × 1.25 = 45,570
基本給組込型の固定残業代は45,570円です。
なおこのケースでは、240,000円から45,570円を差し引いた194,430円が基本給扱いとなります。
※固定残業代の計算は前提条件等の相違により厳密には金額が異なる場合がありますので、目安として参考にしてください。
固定残業代を計算する際の注意点
固定残業代は考え方や計算方法がやや複雑なところがあるため、注意点はしっかり把握しておきましょう。
割増賃金率をかけた金額で計算する
固定残業代を計算するときの基本ですが、固定残業はもちろん残業として扱われるため、1時間当たりの賃金に固定時間と割増賃金率25%をかけて計算します。
通常の時間単価分しか支払われていないと、後々差額を請求されるトラブルにもつながりますので、計算方法の基本として覚えておきましょう。
最低賃金を下回っていないか確認する
日本では各都道府県ごとに最低賃金が設定されています。例えば東京都は令和3年10月より最低賃金が1,041円になりましたので、残業代の割増率1.25をかけた1,301円が計算で必要な最低賃金です。
例えば「固定残業代3万円、30時間相当」だった場合、残業の時給は1,000円になりますので、会社の所在地が東京都だと違法になってしまいます。全国展開している企業は、都道府県ごとに最低賃金が異なることに留意して計算する必要があるでしょう。
固定時間を超過した分は別で計算する
会社が定める固定時間を超過して時間外労働を行った場合は、その分の時間外手当が別途支給されます。
固定残業代制度は、残業のあるなしに関係なく決まった額の残業代が毎月支払われるため、何時間働いても支給額は変わらないと思っている人もいるようです。
しかし、例えば固定残業時間が20時間と定められていて、月の時間外労働が30時間だった場合は、10時間分の残業手当を会社が支払います。固定残業の時間を超えているのに残業代が支払われないといったトラブルや、労働者に制度が正しく伝わっていないケースもあるので、固定残業代については適切に周知する必要があるでしょう。
休日出勤や深夜労働の割増賃金は別で計算する
法定休日に出勤すると休日手当として割増賃金が35%上乗せされ、深夜労働を行った場合は25%割増されます。
これらは固定残業代制度を導入している企業でも、基本的には別で割増賃金を支払わなければなりません。なぜなら、固定残業代には休日出勤や深夜労働を想定した割増賃金が含まれていないことが多いからです。
ただし、就業規則等で固定残業代においての休日出勤及び深夜残業に関する記載が明確にある場合は、固定残業代に含めることも可能です。
固定残業時間は45時間以下で設定する
固定残業代の時間は会社側が自由に設定できますが、これには上限があります。
法的には固定残業時間に対する上限規制はありませんので、基本的には労働基準法で定める時間外労働の上限に沿って設定します。
労働基準法では、月の残業時間を45時間までとしていますので、固定時間も45時間以下にしましょう。
法定外残業は36協定を締結することで、特別な事情がある場合は月平均80時間まで可能としていますが、固定残業時間で80時間を設定すると違法になる可能性が極めて高いためご注意してください。
固定残業代の計算を効率化する2つのコツ
固定残業代を計算するときは、さまざまな点に注意しながらミスがないように計算する必要があります。考え方や計算方法が複雑な固定残業代の計算を効率化するコツを紹介します。
勤怠管理システムを導入する
勤怠管理システムを導入することで、あらゆるケースにおいての計算が簡単に行えます。特に固定残業代は計算が複雑なことから、手入力での計算はミスを発生させる可能性が高まるため、残業代や給与計算が効率良く行える勤怠管理システムの利用は有効的でしょう。
また、残業時間だけでなく、従業員の出退勤や休暇なども一元管理できたり、固定残業時間を超えた分がどのくらいかも正確に把握できます。
残業時間を削減して固定時間を上回らないようにする
会社が定める固定時間を超えない限り、基本的に時間外手当の計算は必要ありませんので、従業員の残業時間を固定時間内で収めることは、計算に使う時間や手間を省くことにつながります。
残業時間削減によって、計算が効率化されるだけでなく、従業員の健康維持やモチベーション向上も期待できるでしょう。
固定残業代は正しく計算しよう
固定残業代には、手当型と基本給組込型があることを紹介しました。2つは計算方法や考え方が違い、場合によっては給与に関して誤解を生む可能性もあるため、導入の際や記載方法には注意が必要です。
計算を行うときは、知らないと後々トラブル発生につながるような注意事項が多々あるので、違法運用しないためにも勤怠管理システムなどを導入して正しく計算しましょう。

【監修者】蓑田真吾(社会保険労務士)

社会保険労務士独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。法改正内容を踏まえながら、ヒアリング内容を基に、企業に合った様々な労務管理手法を積極的に取り入れ、企業の人事労務業務をサポート。
企業のみなさまへ
あなたもDXログにサービスを掲載しませんか?
あなたもDXログに
サービスを掲載しませんか?