1日の労働時間の上限は原則8時間!上限規制や罰則について解説
勤怠管理システム
2023.08.31
2023.08.31
一日の労働時間の上限は、労働基準法によって8時間までとされています。規制に則り適正に労働時間を管理することは、従業員の健康を守る上でも大切であり、アルバイトやパートにも同様に適用されます。本記事では、労働時間の上限や残業時間の上限、罰則、残業を減らす取り組みについてもご紹介しています。
1日の労働時間上限は8時間、週の上限は40時間まで
労働基準法第32条によって、使用者は労働者に対し1日8時間を超えて労働させてはいけないとしています。この法律によって定められた上限時間のことを、法定労働時間と呼びます。
法定労働時間を超えて社員を働かせてしまった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるので注意が必要です。
なお、労働時間とは、一般的に使用者の指揮命令下にある時間のことを指します。制服の着替えや、作業の準備、後片づけなども、使用者の指示による場合は、労働基準法上の労働時間に該当します。
会社は、この法定労働時間の範囲内であれば、始業と終業の時間を決めて労働時間を設定することができます。
変形労働時間制は1日の労働時間の上限を例外として超えても良い
変形労働時間制とは、年単位や月単位で労働時間を柔軟に調整できる制度です。繁忙期に労働時間を増やし、閑散期に労働時間を抑えることで、全体的に労働時間を短くすることを目的としています。
変形労働時間制を取り入れている場合は、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲で、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させても良いとされています。
変形労働時間制には、1か月単位、1年単位があります。1か月単位の労働時間制では、1日又は週の労働時間の制限はありません。1年単位では1日10時間、週52時間の制限があります。
ただし、変形労働時間制の場合であっても、1日8時間を超えた分(所定労働時間が8時間を超える場合は、所定時間を超えた分)などは割増賃金を払わなくてはいけません。
労働時間・休憩時間・残業時間の定義をおさらい
労働時間の上限規制を理解するには、「所定労働時間」と「法定労働時間」や、休憩時間、残業時間の定義や種類を明確に理解することが重要です。定義をおさらいしたうえで、労働時間の上限について解説します。
所定労働時間と法定労働時間とは
労働時間には、「所定労働時間」と「法定労働時間」の2種類が存在します。所定労働時間とは、各企業の就業規則にて定められた労働時間を指します。
一方で法定労働時間とは、法律によって定められている労働時間の上限を指します。労働基準法の第32条により、各企業は原則「1日8時間、1週40時間」以下におさめることが求められています。
この法定労働時間を超えた労働を、「時間外労働」といいます。
労働時間が6時間を超える場合は休憩時間の確保が必要
休憩時間も労働基準法により、必要最低基準が定められています。
1日の労働時間が6時間を超えて、8時間以内で労働した場合は45分以上の休憩、1日の労働時間が8時間を超過する場合は60分以上の休憩が必要です。
休憩時間とは、労働者が労働を離れ自由に過ごせる時間のことで、労働の途中に与える必要があります。
36協定を結んでも時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間まで
36協定とは、法律で定められた法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超過する労働が発生する場合に、労働組合又は労働者の過半数代表と使用者の間で結ぶ協定です。
この36協定を事前に労働基準監督署長へ届け出ることで、1か月45時間・1年360時間の時間外労働が可能となります。
特別な事情ある場合でも時間外労働は月100時間未満、年720時間以内が上限
特別な事情があり、月45時間・年360時間を超過してしまう可能性がある企業は、「36協定」に加えて「特別条項」を結ぶ必要があります。
特別条項を締結することで、月100時間未満・年720時間以内の労働が例外的に認められるからです。ただし、2か月から最大6か月の平均残業時間を月80時間以内におさめること、また月45時間を超える残業は年に6回までにとどめること、という制限があるため、注意が必要です。
パート・アルバイトも法定労働時間と法定休日は適用される
正社員のみならず、パートやアルバイトの雇用形態であっても、上記の労働基準法は適用されます。法定労働時間や法定休日に労働させる場合には、36協定を結んだ上で、時間外労働には25%、休日労働には35%の割増賃金を支払う必要があります。
36協定による労働上限が適用されない事業とは
36協定や特別条項により労働時間の上限は厳格に定められていますが、一部の事業において例外が存在します。
下記の4種の事業においては、時間外労働が発生する場合には36協定の締結が求められますが、上限の一部が適用されない場合があります。ただし一概に上限がない訳ではないため、該当する事業者は確認が必要です。
引用元:時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省
労働時間の上限違反があった場合はどうなるのか
労働基準法で定められている上限以上の労働を課した場合は、法律違反に該当します。
不健全な労働時間は、労働者の心身の健康状態に悪影響を及ぼすほか、企業としても信用を落とすことになりかねません。具体的な罰則内容を解説します。
労働時間の上限違反の罰則内容
労働時間の上限に違反した企業には、6か月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金刑が下る可能性があります。また悪質な場合には、厚生労働省により企業名が公表されるため注意が必要です。
違反はどのように発覚するのか
違反が発覚するきっかけとしては、労働者や労働者の家族、配偶者が労働基準監督署に申告、相談するケースがあります。
その後は労働基準監督署から労働者に助言をおこなうほか、調査員が該当企業に事実確認をすべく、基本的に予告なしで立ち入り調査がおこなわれます。そして違法性が判断された場合には是正勧告となります。
労働基準監督署から是正勧告された場合
労働基準監督署から労務人事担当者や従業員、管理簿などを立ち入り調査され、違法性があると判断された場合は是正勧告書が交付されます。違反事項と是正期日が記載されているため、期日までに指摘内容を改善し、労働基準監督署に提出する必要があります。
是正勧告書には法的拘束力がないものの、提出がない場合、高確率で再監督がおこなわれます。また提出した場合も、継続的に改善されているか確認の臨時監督がおこなわれる可能性があります。
是正勧告内容に改善がみられないと判断されると、法律違反をする悪質な使用者として、書類送検され罰則が科される可能性が高いため注意しましょう。
従業員の健康リスクを考えた労働時間数
厚生労働省が発表している資料によると、時間外労働が月45時間以内であれば、健康障害を起こす危険性は低いとしています。
しかしながら、時間外労働が月100時間を超える、または2~6カ月の平均が月80時間を超えてしまうと、健康障害のリスクは高くなるとされています。
このことから、2019年4月に労働安全衛生法が改正され、事業者に労働時間の状況の把握を義務付けています(労働安全衛生法第66条8-3)。
また、長時間労働によって労働者を健康リスクが高い状況にさらすことがないよう、医師による面接指導が確実に実施されるようにすることで、労働者の健康管理も強化されています。
したがって、使用者は従業員の健康リスクを考慮し、労働時間数の設定や管理を行っていかなくてはならないでしょう。
残業を減らすためにできる取り組み
残業を減らす取り組みは、従業員の健康を守る上でも積極的に行っていかなくてはいけないものです。
ここでは、企業が残業を減らすための取り組みとしてどのようなものがあるのか、一例をいくつかご紹介します。
勤務間インターバル制度を導入する
勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から、翌日の出勤まで一定時間以上の「休息時間」を設ける制度のことです。2019年の働き方改革関連法にて、本制度の導入が使用者の努力義務(おこなうことが望ましい)とされています。
残業時間が多い場合、労働者は十分な休息が確保できなくなるため、国は9~11時間のインターバルを推奨しています。業務終了時間が遅れた場合は、始業時間を繰り下げるケース、インターバルを確保するために終業時間を繰り下げないケースなどが存在します。
業務の見直しを図る
まず時間外労働が月45時間以内なら、健康障害を起こす危険性は低い。一方、時間外労働が月100時間を超えるか、もしくは2~6カ月の平均が月80時間を超えると、健康障害のリスクは高くなると判断される。
残業を減らすためには、まず社員の現在の業務内容や業務量が適正であるのか確認をする必要があります。もし、特定の社員に負担が多くなっているようであれば、他の社員に割り振るなどの対処をしなくてはならないでしょう。
また、業務ローテーションを適宜実施し、社員同士でサポートし合える環境を作るのも効果的です。
ノー残業デーを設定する
周りの社員が残業していると気を使ってしまい、退社しづらいというケースもあるでしょう。ノー残業デーを設定することで、社内に退社しやすい雰囲気が生まれます。
業務の都合上、決まった曜日に一律で設定するのが難しい場合は、社員自らが週に1日ノー残業デーを設定するのも良いでしょう。
残業をする場合は事前申請制とする
残業時間を会社がしっかり管理できていないと、ダラダラと残業する社員も中にはいるでしょう。残業を事前申請制にすることで、不要な残業の抑止にもなります。
たとえば、管理職が残業する社員の業務内容や退社予定時刻をチェックし、内容によっては翌日に回すよう指導したり、他の社員へ割り振ったりなど調整することができるようになります。
勤怠管理システムの導入
勤怠管理システムを導入して、残業を減らすのに効果があります。労働時間を記録することによって、どの社員がどれだけ残業しているのかが可視化されて一目で分かるようになるため、残業の多い社員には管理者から指導を行うなど、社員の残業時間の管理がしやすくなります。
法律で定められた労働時間の上限を守り、適切な労務管理を行おう!
労働基準法によって「1日8時間(週40時間)」までと労働時間の上限が決められています。また、時間外労働についても2019年の労働基準法の改正によって「月45時間、年360時間」のように労働時間と同じく上限が定められています。いずれも違反をした際は、罰則が科せられますので注意が必要です。
ただし、労働時間の上限を遵守することは、罰則に関係なく、従業員の命を守る上でのとても重要なことです。今回紹介した残業削減の取組を参考に、自社の労働時間削減に向けた取り組みをぜひ促進してください。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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