残業が減らないのはなぜ?原因と改善策をわかりやすく解説
勤怠管理システム
2023.08.31
2023.08.31
残業を減らすためには、具体的な改善策を考えて実行していくことが大切です。そのためにはまず残業が減らない原因を特定する必要があるでしょう。本記事では残業が多い職場で起こる問題点と、残業を減らすための具体的な取り組みを紹介しています。
1. 残業が減らない原因
残業を減らす取り組みをしても、「打刻は定時でその後も仕事をしている」「持ち帰り仕事が増えた」といった状態を作り出してしまっては意味がありません。
根本的な原因を洗い出さない限り、残業を減らしていくことは難しいでしょう。
残業が減らない原因は職種によっても異なりますが、考えられる主な原因を3つ紹介します。
1-1. 人手が足りない
残業時間が多くなってしまう原因の一つとして、、不適切な人員配置により従業員1人に分配される業務量が多すぎることが挙げられます。
例えば、本来は10人でおこなうべき業務を、人手が足りず半分の5人でおこなっていた場合、1人で2人分の仕事をしなくてはなりません。人手不足も問題ですが、近年では労働人口が減少しており、人材確保は難しくなってきています。
そのため、今いる人員で現場を回すことが求められ、業務量の多さから作業効率が悪くなり、残業がなかなか減らない事態を招いてしまうのです。
1-2. コミュニケーション不足
テレワークが普及したことによって、上司・部下・同僚とのコミュニケーション不足が問題になっています。テレワークは対面に比べるとコミュニケーションが取りづらいため、特にチームで進めるような仕事の場合では、意思の疎通に苦労することもあるかもしれません。
文字だけのやり取りでは誤解も生みやすく、言いたいことが上手く伝わらないこともあるでしょう。
ビデオ通話もありますが、対面の気軽さとは異なるので、会社で仕事をしているときと同じような感覚で質問や相談ができない場合もあります。
結果、コミュニケーション不足が生産性を低下させ、残業が減らない原因を作り出します。
1-3. 従業員の能力が関係している
残業が減らない、つまり残業ばかりしている人というのは、能力不足が原因なのではと思われがちです。
確かに、能力に見合わない内容の業務が振り分けられている場合や、単に個人の業務効率が悪くて定時までに終わらせることができず、残業しているというケースもあるでしょう。
しかし、上司によっては仕事が早く効率的な部下に多く業務を振り分けることもあり、仕事ができるからこそ、いくら頑張っても終わらせられないという状況に陥っている人もいます。
能力の高い低いは、場合によってどちらも残業につながる可能性があるのです。
また、残業はすればするほど疲れが出てくるため集中力が落ち、生産性を低下させます。翌日の業務に響いてしまうと、さらに業務効率が落ちるため残業が減らない負のループを作り出してしまうでしょう。
1-4. 生活残業が発生している
残業をする人のなかには、通常の労働時間内で終わるはずの業務をわざとダラダラおこない、無駄な残業をして生活費を稼ごうとする人がいます。これを「生活残業」といいます。
生活残業は、本来不要なはずの人件費であるため、企業にとっては無駄なコストです。従業員の生産性をしっかりと管理する必要があります。
1-5. 残業が評価される風潮がある
「残業をする人は意欲が高い」「残業をするのが当たり前」というような古い価値観が職場にあると、上司に気をつかって部下が不要な残業をする可能性が高まります。
働いた時間ではなく、実際の業務の質で人事評価がおこなわれているか確認しましょう。
とはいえ、残業時間の短さを評価基準にすることも危険です。残業をするとペナルティがある環境は、サービス残業や持ち帰り残業を生む原因にもなります。
2. 残業が多い職場で起こる問題点
残業が多い職場では、さまざまな問題が生じる恐れがあります。残業問題は放置しておくと企業にとって大きな損失を招く可能性もありますので、しっかり把握しておきましょう。
2-1. 従業員の健康状態が悪化する
心身の健康を保つためには、休息が不可欠です。残業が多いと、十分な睡眠時間が取れなかったり、精神的なストレスを溜め込んでしまったりなど、健康を害するリスクが高まるでしょう。
過度なストレスは、うつ病や適応障害など精神疾患を発症させたり、退職まで追い込んでしまう恐れもあります。
政府は長時間労働による労働者の健康への影響を危惧して、2019年に法改正をおこない残業時間の上限規制を施行しました。現在は、原則として月45時間、年間360時間の残業を超えてはいけないとしています。
2-2. 残業は良いことという雰囲気が蔓延する
かつて高度経済成長期の頃の日本は、終身雇用や年功序列制度が存在していたので、定年まで安定した雇用が保証されていました。長時間労働などの要求に従うと、昇進・昇格ができた時代だったので、「残業は良いこと」という考えが広く浸透していたのです。
その時代の働き方や考え方が今もなお残っている企業が存在しますが、現代は残業をしたところで昇進につながるわけでもなく、ただ搾取されているだけという状態の人もいます。特に経営陣がこのような考え方を持っていると、従業員は声をあげることができません。
「残業しない従業員へのあたりが強い」「残業している従業員は頑張っている」という空気感があることで、社内全体が残業は良いことだという誤った認識を持つようになってしまいます。
その結果、前述したような健康への悪影響や、休職・離職につながるリスクを高めることになるでしょう。
3. 働き方改革で規制されている残業の上限
残業を削減するにあたり、確認しておくべきなのは残業時間の上限規制です。働き方改革関連法案の施行で、以前は形骸化していた残業上限に罰則が設けられました。
違反した場合は、6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられます。
残業の上限は以下のように定められています。
[労働基準法の原則]
- 法定労働時間の1日8時間、週に40時間を超える労働は禁止
[労使間で36協定を締結している場合]
- 残業は月45時間、年360時間以内でなければならない
[36協定において労使間で臨時の特別条項を締結している場合]
- 残業上限は年720時間以内まで延長可能※下記の条件がある
- 1ヵ月の残業時間の合計は100時間未満(休日労働含む)
- 2~6ヶ月のどの期間をとっても残業時間の平均が80時間以内(休日労働含む)
- 残業の合計時間が月45時間を超えられるのは年6回まで
労働基準法では、原則法定労働時間を超えて従業員を労働させることを禁止していますが、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出をおこなっている場合については、法定労働時間を超えて労働が可能となり、さらに特別条項付き36協定であれば、残業の上限時間を延長することも可能です。
ただし、残業上限の延長は必要最低限の時間にとどめる必要があります。
4. 残業を減らすために組織として取り組むべきの具体的な施策
残業をすることは決して良いことではありませんので、長時間労働が常態化している職場は、残業を減らすための取り組みが必要です。
組織として取り組むべき具体的な施策を紹介します。
4-1. 残業を事前申請制にする
残業を申請制にし、上司からの承認を得られなければ原則残業できない状況にすることで、必然的に残業が減らせるでしょう。
残業を申請制にするには、上層部の理解を得た上で、申請や承認に関する明確なルールを設ける必要があるため、個人の領域ではなく組織として取り組む必要があります。
部下からの申請を承認する上司は、なぜ部下が残業を必要としているのか、業務内容や進捗具合も同時に把握し、残業が発生している原因を見つけることが大切です。
4-2. 残業削減のための研修を利用する
残業を削減するための考え方や、時間の使い方が学べる研修を利用する方法もあります。
このような研修はさまざまな企業がサービスとして提供しており、講師派遣型を利用すれば、自社で研修が受けられます。
経営層や管理職向けの研修から新入社員向けのものまで選べるので、会社全体で取り組むことができるでしょう。研修は講義だけでなくワークも同時におこなうものが多く、より実践的で効果的な学びが得られます。
4-3. 集中できる時間を設ける
効率的に仕事を進めるために集中したいと思っていても、同僚から話しかけられたり、後輩から質問されたりと、集中できない場合もあります。集中力が途切れることで、30分で終わるはずのものが1時間以上かかるなど、残業時間を増やす原因にもなるでしょう。
対策としては、時間を決めて集中できる環境を作ることです。
集中時間を1時間としたら、その時間は会話やミーティングをしないことをルールとします。社内全体で取り組めば仕事にメリハリがつき、生産性の向上が期待できるでしょう。
4-4. ノー残業デーを設ける
ノー残業デーとは、決められた日は残業をせずに定時で退社することを推奨する制度です。ノー残業デーを導入すると、社員はプライベートの時間が確保できるので、気持ちもリフレッシュされ仕事にも良い影響を与えることが期待できます。
また、その日は定時退社をしなければならないため、従業員が日頃の業務の効率化のきっかけを掴む可能性もあります。
しかし、ノー残業デーの導入と同時に業務効率化の取り組みも実施しなければ、別の日の残業時間が増えるだけの意味のないものになってしまう恐れがあるため、チームや部署ごとに日を分けて実施するなど注意が必要です。
4-5. 管理職のマネジメント能力の強化
従業員が残業をする原因が、現状のスキルに合わない業務をおこなっていることや、工数が適切ではない指示が上司から出ていることであった場合は、管理職のマネジメント能力に原因がある場合があります。
部下の能力や特性を正確に把握し、適切なタスクを振ったり、部下のスキルアップに繋がる指導をおこなうことが重要です。
管理職のマネジメント能力を向上させるためには、管理職研修をおこなったり、部下と積極的にコミュニケーションを取るような機会を設けることが有効だといえます。管理職のマネジメント能力が向上することで、組織の問題点が発見されやすくなります。残業の削減だけでなく業務の改善にも繋がります。
5. 残業が減らない原因を明らかにして対策をしよう
残業が減らない原因を3つの視点から解説しました。
職種によって残業が発生する理由や減らない原因はさまざまですが、「残業することは良くないこと」「減らしていくための対策が必要」という意識を持つことが大切です。
残業が多いことでストレスが増えると思考力が落ち、さらに業務が非効率になる悪循環を生む原因にもなりますので、残業問題は組織全体で取り組む必要があります。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
企業のみなさまへ
あなたもDXログにサービスを掲載しませんか?
あなたもDXログに
サービスを掲載しませんか?