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フレックスタイム制では残業代が減る?残業時間の考え方と残業代の計算方法を解説

勤怠管理システム

2023.10.19

2023.10.19

フレックスタイム制における残業時間の考え方は、通常の労働時間制度とは異なります。残業時間を管理する場合、「清算期間内の総労働時間」「1ヵ月あたりの実労働時間」という2つの計算が必要です。残業時間の取り扱いへの理解を深め、残業代を正しく計算しましょう。

フレックスタイム制・残業の定義をおさらい

フレックスタイム制は、通常の労働形態と異なることから、残業の捉え方や給与計算方法にも違いが生じます。ここからは、考え方の基本となるフレックスタイム制のルールや定義、また意外と把握されていないことが多い残業時間の定義についても解説します。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、労働基準法第32条の3にて規定されている、始業・終業時間を労働者が自由に選択できる制度です。あらかじめ定められた清算期間(一定期間)と労働時間の総枠(清算期間にて労働する予定の時間)の中で、出退勤の時間の調節を自らの裁量でおこなえます。

残業時間とは

残業時間には、「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があり、後者の「法定外残業」のみ残業代(時間外労働手当)が支給されます。

「法定内残業」は、各企業が就業規則などで定めた所定労働時間を超過した場合に該当する労働時間を指します。所定労働時間が法定労働時間を超えることはありません。

「法定外残業」は、法律によって定められた法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超過した労働時間を指します。労働基準法により、法定外残業には25%の割増賃金の付与が義務付けられています。

フレックスタイム制における残業時間の考え方

フレックスタイム制で残業時間を計算する際に重要な考え方が清算期間です。清算期間が1ヵ月以内であるか、1ヵ月を超過するかでは残業時間の数え方が変わるため注意が必要です。

フレックスタイム制では、清算期間を問わず「清算期間内の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えた場合」、また清算期間が1ヵ月を超過する場合は「1ヵ月の労働時間が週平均50時間を超えた」場合においても残業とみなされます。

このように清算期間が1ヵ月を超過する場合は、最終月以外と最終月で残業時間の考え方が異なるため、注意が必要です。

またフレックスタイム制にも時間外労働の上限規制が存在するため、残業時間の正しい計算方法を今一度確認しましょう。

清算期間は従業員が働くべき期間を定めたもの

フレックスタイム制には、従業員が働くべき期間を定めた最長3ヵ月の清算期間が設けられています。清算期間が1ヵ月を超える場合は、1ヵ月あたりの実労働時間だけでなく、清算期間内の総労働時間に基づいて残業時間を計算する必要があります。

厚生労働省の「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」によると、以下のいずれかの条件を満たさなかった場合、残業時間として考える必要があります。[注1]

  • 清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えないこと
  • (清算期間が1ヵ月を超過する場合は)1ヵ月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えないこと

なお、清算期間が1カ月以内の場合は、法定労働時間の総枠を超過すると、時間外労働としてカウントされます。

清算期間が1ヵ月を超過する場合の計算方法

清算期間を1ヵ月以上に設定した場合には、下記の方法で算出することができます。

最終月以外は1ヵ月あたりの労働時間を計算する

清算期間が1ヵ月を超える場合、時間外労働は「労働時間の総枠を超えた時間」と「週の労働時間が平均50時間を超えた部分」が該当します。

したがって、各月では労働時間の週平均が50時間を超えた部分を時間外労働としてカウントします。週平均50時間におさめるための1ヵ月あたりの労働時間の上限は、次の計算式で求められます。[注1]

「1ヵ月あたりの労働時間の上限=50時間×(各月の暦日数÷7日)」

なお、1ヵ月あたりの労働時間が週平均50時間を超えるケースは次の通りです。[注1]

月の暦日数 週平均50時間となる月間の労働時間数
31日 221.4時間
30日 214.2時間
29日 207.1時間
28日 200.0時間

 

超過している場合には、その月の残業時間としてカウントし、残業代を支給します。

最終月は1ヵ月あたりの労働時間・清算期間内の総労働時間を計算する

最終月も同様に週平均50時間を超過した場合には、残業時間としてみなします。加えて、最終月では、清算期間内の労働時間の総枠から実労働時間が超過していないかも計算します。

清算期間全体における総労働時間の総枠は次の計算式で求めることができます。[注1]

清算期間内の総労働時間の総枠=40時間×(清算期間の暦日数÷7日)

総労働時間の総枠を超えるケースは次の通りです。[注1]

1ヶ月単位
清算期間の暦日数 31日 30日 29日 28日
法定労働時間の総枠 177.1時間 171.4時間 165.7時間 160.0時間
2ヶ月単位
清算期間の暦日数 62日 61日 60日 59日
法定労働時間の総枠 354.2時間 348.5時間 342.8時間 337.1時間
3ヶ月単位
清算期間の暦日数 92日 91日 90日 89日
法定労働時間の総枠 525.7時間 520.0時間 514.2時間 508.5時間

 

最後に、最終月以外の残業時間と最終月の残業時間を足し合わせたものが清算期間内の残業時間です。

フレックスタイム制は残業代が減る?


フレックスタイム制では、定時のある勤務形態と残業の考え方に違いがあります。仮に1日の労働時間が8時間を超えている場合でも、清算期間である1~3カ月の間で労働者が調整をおこなえます。

たとえば、10時間残業した日があったとしても、次の日は6時間働いて退勤するといったように、柔軟に労働時間を変えることが可能です。定時のある勤務形態の場合は、残業した日の翌日も定時までは勤務しなければいけませんが、フレックスタイム制では定時がないためこのような調整ができるのです。

そのため、フレックスタイム制によって残業が減ることも考えられますが、どれだけ働くかは労働者自身の判断に委ねられるため、必ず残業が減るわけでもありません。

フレックスタイム制における残業代の計算方法

フレックスタイム制における残業代の計算方法は、通常の労働時間制度と大きく変わりません。残業代の計算式は次の通りです。

残業代=基礎時給×割増率×残業時間

まずは1時間あたりの賃金を計算し、所定の割増賃金率を掛けることで1時間あたりの残業代を求められます。最後に前項の考え方で求めた残業時間を掛ければ、フレックスタイム制における残業代を計算することができます。

月給から基礎時給を算出する

まず、従業員の月給を1ヵ月の所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金(基礎時給)を計算しましょう。たとえば、月給が32万円、1ヵ月の所定労働時間が160時間の従業員の場合、基礎時給は次の計算式で求められます。

32万円÷160時間=2,000円

所定の割増賃金率を掛け算する

従業員を法定労働時間を超えて働かせる場合、企業は割増賃金を支払う必要があります。残業の種類によって割増賃金率は異なります。労働基準法によって定められた法定割増賃金率は次の通りです。

  割増賃金率
時間外労働 25%以上
時間外労働のうち月60時間を超えた分 50%以上
時間外労働に加えて深夜労働をさせた場合 50%以上
月60時間を超える時間外労働に加えて深夜労働をさせた場合 75%以上

残業時間を掛け算する

基礎時給、割増賃金率、残業時間を掛け算することで、残業代を計算することができます。たとえば、基礎時給が2,000円の従業員に20時間の時間外労働をさせた場合、残業代は次の通りです。

2,000円×1.25×20=5万円

フレックスタイム制の残業に関してよくある質問

ここまでフレックスタイム制の残業時間の考え方や残業時間の計算方法について解説しました。ここからはフレックスタイム制で残業が発生した場合に疑問に持たれやすいポイントを紹介します。

総労働時間に対して実労働時間に過不足が生じた場合の対応は?

フレックスタイム制では、清算期間全体で労働時間の総枠から実労働時間が超過しなければ問題ありません。

ただし清算期間における実労働時間が総労働時間を超過した場合には、時間外労働として割増賃金が発生します。超過した分の労働時間を、翌清算期間に充当することは、労働基準法第24条の「賃金全額支払いの原則」により認められていません。

また、不足分に関しては労働時間の総枠を超えない範囲で翌清算期間への繰越しと、賃金控除の2種類の対応が認められています。

有給休暇を取得させた場合、労働時間の計算方法は?

有給休暇を取得させた場合は、当然実労働時間にはカウントしません。ただし、有給休暇を時間単位での取得を認めている企業は、注意が必要です。

例えば10:00-14:00をコアタイムに設定し、フレックスタイム制を導入するとします。

時間単位で有給休暇が取得可能であると、コアタイムの10:0-14:00を半日休暇することで、丸一日出勤をしないことが可能となってしまうためです。

このような事態を避けるためには、例えば「午前半休の場合には、午後のコアタイムは出勤しなければならない」など半日単位の取得ルールを就業規則に定めるなどの対策が必要です。

フレックスタイム制と固定残業制度を併用した設定は可能か?

フレックスタイム制と固定残業制度の併用は、労働条件通知書に記載することで可能となります。ただし、清算期間内において固定残業時間を超過する時間外労働が発生した場合には、別途で残業手当の支給が発生します。

フレックスタイム制で残業が違法となる場合

フレックスタイム制は、清算期間内であれば比較的柔軟に労働時間を調整が可能です。ただし、正しいルールを把握していないと無自覚に労働基準法に抵触してしまう可能性もあります。ここからフレックスタイム制で残業が違法に該当してしまいやすいパターンを解説します。

時間外労働の上限を超過する指示を出した場合

36協定を労使間で締結することで、残業(時間外労働)が可能となります。

ただし時間外労働の上限は、月45時間・年360時間までと制限されています。原則、上限を超えることは認められていません。

ただし、臨時的な特別な事情がある場合に限り、労使間で合意をとり特別条項を結ぶと下記まで上限の延長が認められます。

  • 年間の時間外労働が720時間以内である
  • 月の時間外労働と休⽇労働の合計が100時間未満である
  • 2か⽉~6か⽉を平均した時間外労働と休⽇労働の合計がすべて1ヵ月あたり80時間以内である
  • 月45時間以上の時間外労働は年に6回までである

時間外労働への適正な残業代を支給していない場合

フレックスタイム制においても、時間外労働への賃金支払いは正確におこなう必要があります。

前述した通り、総労働時間を超過した労働時間は、翌清算期間に繰越すことができません。

なぜなら労働した分の賃金の支払いが遅れ、労働基準法第24条の「賃金全額支払いの原則」に抵触してしまうためです

フレックスタイム制における勤怠管理の注意点


フレックスタイム制では労働者自身が労働時間をコントロールすることが可能です。しかし、残業をする際には労使協定の締結が必要になるなど、勤怠管理にはいくつかの注意点があります。ここからは、それらの注意点について詳しく解説します。

法定外残業をするには36協定の締結・届出が必要

フレックスタイム制であっても、清算期間を超えて残業(法定外残業)が発生する場合には、36協定の締結と労働基準監督署への届出をしなければいけません。

また、清算期間が1カ月を超える場合には、36協定とは別にフレックスタイム制に関しての労使協定の締結と届出も必要になります。

不足時間の繰り越しはできるが、超過分の繰り越しはできない

フレックスタイム制では清算期間が設けられますが、清算期間中の実労働時間が総労働時間に満たなかった場合には、不足している実労働時間を次の清算期間に繰越すことが可能です。

たとえば、清算期間の総労働時間が160時間であるのに対して、実労働時間が150時間だったとします。この場合は、次の清算期間の総労働時間に10時間を上乗せすることで相殺処理が可能です。

ただし、総労働時間を超えた残業時間を次の清算期間に繰越すことはできません。総労働時間を超えた残業時間は、必ず残業のあった清算期間中の給与に組み込んで支払う必要があります。

フレックスタイム制の時間外労働の上限規制


フレックスタイム制の場合でも、定時のある勤務形態と同様に時間外労働には「月45時間以内、年360時間以内」という上限規制があります。

特別な事情がある場合については36協定に基づいて次の条件で時間外労働が可能です。

月100時間未満
複数月で平均80時間以内
年間720時間以内

ただし、月45時間を超えることができるのは年6回までとなっています。

特例処置対象事業場の週の法定労働時間

次の要件を満たす特例処置対象事業所においては、例外的に法定労働時間を週40時間から44時間に延長できます。

常時使用する労働者が10人未満の事業所
商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業のいずれかの業種に該当する事業所

したがって、特例処置対象事業所で清算期間が1カ月以内の場合は、週平均44時間を超える労働が残業となります。清算期間が1カ月を超える場合は、特例処置対象事業所であっても週40時間を超える労働には割増賃金の支払が必要です。

残業時間と法定労働時間の関係


フレックスタイム制の場合、法定労働時間は次の式で算出が可能です。

法定労働時間=(清算期間の暦日数÷7)×1週間の法定労働時間(40時間)

実労働時間が上記の労働時間を超えた場合は、法定外残業として扱います。

清算期間が1カ月を超える場合における残業時間については、まず、1カ月ごとに週平均50時間を超えた分の労働時間と、その数値を総労働時間から引きます。そこからさらに上記の法定労働時間を差し引いた時間が残業時間です。

フレックスタイム制の残業時間の考え方を知り、残業代を正しく計算しよう

通常の労働時間制度とくらべて、フレックスタイム制では残業時間の考え方が異なります。フレックスタイム制の場合、「清算期間内の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えた」「1ヵ月の労働時間が週平均50時間を超えた」場合に残業時間が発生します。

それぞれの合計時間が残業時間としてカウントされるため、労働基準法における労働時間の定めや時間外労働の上限規制に注意が必要です。

法定労働時間を超えて残業させる場合は、あらかじめ労働組合か従業員の代表者と36協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

従業員とのトラブル防止のため、フレックスタイム制における残業時間の取り扱いについて知り、残業代を正しく計算しましょう。

[注1]フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

 

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。

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