代休とは?意味や割増賃金の計算方法について解説
勤怠管理システム
2023.10.23
2023.10.23
代休とは、企業が休日出勤をした従業員に対して付与する休日のことです。振替休日との違いは、休日出勤日の前に付与したか否かがカギとなります。本記事では、労働基準法に沿った「代休」と「振替休日」の違いや、割増賃金の差、代休の期限などについて徹底解説します。
代休とは?意味や目的を解説
まずは代休の定義について解説します。
代休は労働基準法などの法律で定められた制度ではありません。代休とは、本来休日だった日に従業員を出勤させた際、別の労働日を休日に変更することです。代休の設定は企業によってさまざまで、企業側が設定することもあれば従業員の希望の日程を代休とすることもあります。
代休の必要性
先述の通り、休日出勤をさせた際に代休を取得させなければならないという法律上の決まりはありません。しかし、休日出勤は少なからず従業員の心身の負担となるものです。
また、週に一度、または4週に4回の休日を与えない場合は、法律違反となってしまいます。
したがって、休日出勤をさせた際は労働日数の調整のために代休を取得させるケースが多いです。代休の設定方法は、企業によって異なります。
そのため、代休が発生する可能性がある場合は、就業規則にその旨を記載することが一般的です。代休の申請方法についてや、いつを代休とするのか、どのような条件で代休を取得できるのかなどを明確に記載しておきましょう。就業規則に記載することで企業側も従業員も、いつでも代休について確認できます。
休日に関する従業員とのトラブルを減らすためにも、代休に関する規定は細かく記しておくことをおすすめします。
代休と振替休日の違い
代休と振替休日は、どちらも休日出勤の代わりに付与する休日ですが、意味は大きく異なります。代休とは、休日出勤の後に、別の日を休日として付与することです。一方の振替休日は、休日出勤をする前に、あらかじめ休日と出勤日を入れ替えることを意味します。
似たような言葉ですが、申請するタイミングや割増賃金の考え方などが大きく異なるため注意しましょう。
代休と有給の違い
有給とは、給与が発生する休日のことです。企業は、6カ月以上継続勤務しており、全労働日の8割以上働いた従業員に対して有給を付与しなければなりません。また、従業員は基本的に好きなタイミングで有給を取得できます。
一方の代休は、休日出勤した後に取得するもので、給与が発生しない休日です。また、法定休日や法定労働時間の基準を満たしていれば、無理に付与する必要はありません。
代休を取得しなければいけない場合について
休日出勤をさせたとしても、法律の範囲内であれば代休は設定しなくても問題ありません。
ここでは、代休を取得しなければいけない場合について、詳しく解説します。
週の労働日数や労働時間が多すぎる場合
労働基準法では、1週間に一度、または4週間に4回の休日を設定しなければならないことになっています。これを法定休日といいます。法定休日は法律で守られた従業員の権利で、基準に従って企業は従業員を必ず休ませなければなりません。
また、同じく労働基準法では一日8時間、週に40時間までという労働時間についてのルールもあります。このルールを守るため、法定休日だけでなく企業ごとに所定休日を設定しているところも多いです。
休日出勤をさせたことで、この法律で守られた休日を与えなかったことになってしまう場合や、週の労働時間がオーバーしてしまう場合などは代休を設定して調整する必要があります。
ただし代休を付与しても割増賃金の支払いは必要
休日出勤をさせた後で代休を与えたとしても、休日出勤分の割増賃金は発生します。
法定休日に出勤させた場合の割増賃金は、休日出勤の勤務時間に対して35%をかけた金額です。所定休日に出勤させた場合は、1日の労働時間が8時間、もしくは週の労働時間が40時間を超える場合に限り、時間外労働分の25%をかけた金額の支払い義務が発生します。
振替休日の場合は、休日出勤の割増賃金は発生しません(ただし、法定労働時間を超えた場合、時間外労働に対する割増賃金は発生します)。事前に休日と労働日を入れ替えているため、休日出勤という扱いにならないからです。違いをしっかり押さえておきましょう。
代休を付与した場合の割増賃金と計算方法
労働した休日が「法定休日」の場合の割増率は1.35倍、所定休日(法定外休日)の場合は、通常の時間外労働としてカウントをし、休日出勤に対する割増率はかかりません。(ただし、1日8時間・週40時間の労働を超過した場合には、1.25倍の割増賃金が発生します)
割増賃金の計算方法に関しては、下記の手順でおこなうことが可能です。
①「月平均所定労働時間」を算出する
「月平均所定労働時間(1カ月あたりの平均所定労働時間)」を最初に算出する理由は、「1時間あたりに支給する基礎賃金(時給)」を求めるために必要があるからです。
時給制の場合は計算せずそのまま用いることが可能ですが、月給制の場合には、基礎賃金を算出するために一部手当を除外した「月給」と、「月平均所定労働時間(1カ月あたりの平均所定労働時間)」を用います。
まず「月平均所定労働時間」を求める公式は以下の通りです。
「月平均所定労働時間=(1年の暦日数-年間休日日数)×1日の所定労働時間÷12カ月」
②「1時間あたりの基礎賃金」を算出する
上述した方法で月平均所定労働時間を求めた後は、基礎賃金を算出するために下記の公式にあてはめて計算します。
「1時間あたりの基礎賃金=月給÷月平均所定労働時間」
③割増率と労働時間に掛け算して算出する
法定休日の場合は、休日出勤の1.35%と労働時間を掛け算して1日の割増賃金を算出します。
「割増賃金=1時間あたりの基礎賃金×1.35×労働時間」
代休の就業規則で定めておきたい3つのルール
代休を企業にて導入するためには、就業規則にて定義や運用ルールを定めておくとよいでしょう。のちに認識の相違によるトラブルが発生しないためにも、あらかじめ規定して従業員に周知することが重要です。従業員にわかりやすいよう、以下の3つのルールを定めることをおすすめします。
代休の申請方法
代休に関する法律上の決まりはないため、申請方法などは企業ごとに定めておく必要があります。
たとえば、特定の申請書を提出する、メールやチャットツールで報告するなど、ルールを決めて就業規則に明記しておきましょう。申請や承認作業を効率化したり、ペーパーレス化を図ったりしたい場合は、オンラインで代休の申請ができる勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。
代休の取得期限
代休の取得期限についても、法律上の決まりはありません。休日出勤の翌日以降であればいつでも取得できます。
ただ、あまりにも時間が経ちすぎると取得するのを忘れてしまったり、適切な休息時間を確保できなかったりするため、就業規則で期限を定めておくのがおすすめです。「休日出勤の翌日から2年以内」など、ルールを明記しておきましょう。
代休取得時の賃金
前述の通り、代休を取得した場合は、休日出勤に対する割増賃金が発生します。労使間のトラブルを防止するためにも、「法定休日は35%以上、所定休日における時間外労働は25%以上」などと数値をわかりやすく記載しておきましょう。
代休の運用に関する注意点
代休は、労働基準法により付与の義務化がされておらず、取得方法や取得期限などの詳細は各企業で設定することが求められます。代休を適切に運用するためにも、注意点を把握したうえでルールを定めることが重要です。導入する際には、以下のようなポイントを参考にしてみてください。
代休の取得期限は2年間が一般的
代休の取得期限は、とくに法律によって規定されていません。ただし労働基準法第115条には「賃金その他の請求権の時効」が2年との記載があることから、2年に設定することが一般的です。
ただし従業員の健康管理面を考慮すると、なるべく休日出勤直後に取らせることが望ましいでしょう。
許可なく欠勤を代休扱いすることは不可能
休日出勤をした従業員が、その後に欠勤をした場合、欠勤を代休扱いとして一方的に処理することは認められていません。ただし従業員の同意を得た場合には、休日出勤に対する代休として扱うことが可能です。
しかし、割増賃金の支払い義務は同様に発生するため、注意が必要です。さらに欠勤日を「次回以降の休日出勤の代休」として、取り扱うことは認められています。
事前に希望があれば有給休暇を優先させる
代休は、休日出勤分のみ賃金が発生しますが、有給休暇は休日にも賃金が発生するため希望をする従業員も多いことが考えられます。
ただし有給休暇を付与する場合には、休日出勤が発生する日より前に、あらかじめ申請を受ける必要があります。代休の取得は義務化されていないため、社員からの申請があった場合には、有給休暇を優先して付与しましょう。
代休を半日や時間単位で取得させることも可能
代休を半日単位や時間単位で付与することも可能です。たとえば、休日出勤が5時間のみ発生した場合に、別の労働日において働く時間を5時間減らすことで代休として扱えます。ただし、事前に就業規則に明記したうえで、従業員へ周知しておくことが必要です。また、振替休日の場合は、半日単位や時間単位で付与することはできません。
代休の意味や割増賃金について確認しよう!
今回は、代休の条件や休日労働の割増賃金について解説しました。代休は、休日労働をさせた従業員に対して事後に提案する休日のことです。労働日数や休日、労働時間については法律で厳しく決められているため、これをオーバーしないように代休を取り入れましょう。
代休を与えても割増賃金が発生しますが、これは法定休日に出勤させたか、所定休日に出勤させたかによっても金額が変わります。企業にとっても従業員にとっても負担が増えないよう、代休以外にも振替休日の取得についても決めておきましょう。

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。
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