休日出勤したら残業扱いになる?割増金額の計算方法を解説
勤怠管理システム
2023.08.29
2023.08.29
休日出勤をしたら残業扱いになるのでしょうか。今回は、休日出勤において残業扱いになるケースとならないケースをそれぞれ紹介します。法定休日と所定休日によって割増賃金率が異なるケースもありますので、紹介する残業代の計算方法などを参考に、残業に関する知識を深めていきましょう。
1. 休日出勤(休日労働)の定義
休日出勤とは、本来は休日だった日に従業員を出勤させることです。休日出勤のうち、労働基準法で定められた法定休日に出勤させることを同法では「休日労働」と定義しています。
企業は休日労働に該当する勤務をした従業員に対して、基礎賃金に一定の割増率をかけて割増賃金を支払うことが義務付けられています。
また、休日は大きく分けると「法定休日」と「所定休日」の2種類に分類できます。まず、2種類の休日について詳しく解説します。
1-1. 法定休日とは法律で決められた休日
法定休日は、労働基準法で定められた休日です。週に1日もしくは4週間を通して4日以上の休みを与えることが義務付けられています。
法定休日に出勤した場合は休日労働となるため、35%の割増賃金が加算されます。
1-2. 所定休日とは会社が設定できる休日
所定休日は、法定休日を超える休日を設定するとき、会社が独自に指定できる休日です。「法定外休日」とよばれることもあります。所定休日は休日労働の対象外であるため、休日労働に対する割増賃金は支払う必要がありません。
ただし、一部条件に該当すると残業に対する割増賃金の支払の対象となるため、「所定休日=割増賃金の支払が必要ない」というのは間違った認識です。対象の条件については、後の章で詳しく紹介します。
では、週休2日制の場合、どのように所定休日と法定休日を決めるのでしょうか。
土日が休みの場合、一般的には土曜日を所定休日、日曜日を法定休日にすることが一般的ですが、必ずしもそうとは限りません。法律で決められているのは、法定休日の日数のみなので、そもそも法定休日を指定しなくても問題ありません。
しかし、実際には指定しておかないと休日出勤の割増賃金計算が正しくできないため、多くの会社は就業規則で規定しています。
2.休日出勤(休日労働)と残業の違い
割増賃金計算における休日出勤(休日労働)と残業の定義の違いについて解説します。
先述の通り、休日労働に対する割増賃金が発生する休日出勤の条件は、勤務させた休日が法定休日である場合です。
割増賃金を支払う必要がある勤務条件には「時間外労働(残業)」「深夜労働」「休日労働」の3つがあります。それぞれの概要と割増率は以下の通りです。
割増条件 | 適用概要 | 割増率 |
時間外労働(残業) | 1日時8間・もしくは週で40時間を超える勤務時間 | 25% |
深夜労働 | 22時~翌5時の深夜時間の勤務 | 25% |
休日労働 | 法定休日における勤務 | 35% |
2-1. 休日出勤が残業扱いになるケース・ならないケース
【法定休日に出勤した場合は残業ではなく休日労働扱い】
法定休日に出勤した場合は、勤務時間の長さに関係なく35%の割増賃金が残業代として支払われます。このパターンが最もシンプルで分かりやすい休日出勤の割増賃金対象のケースです。
通常は、法定労働時間の8時間を超えたとき時間外手当として25%が上乗せされますが、法定休日で8時間を超える労働をおこなったとしても、25%は加算されません。
なぜなら、法定休日ではそもそも法定労働時間という考え方が存在しないからです。休日出勤の35%と時間外手当の25%を足して計算してしまうという間違いが起こりやすいので注意しましょう。
ただし、法定休日出勤で深夜労働をした場合は、深夜手当の25%が加算されるので、休日手当と合わせた60%で計算します。
【所定休日の出勤でも1日に8時間、もしくは週40時間を超えていた場合は残業扱い】
所定休日に8時間を超えている労働をさせた場合には、超えた分の労働が残業にあたるため、割増賃金を支払う必要があります。
また、土日休みの週休2日制で、月曜日から金曜日全てで8時間勤務をし、所定休日である土曜日に出勤した場合は、一週間の合計労働時間が40時間を超えるため、1日の労働時間が8時間以内であっても、残業手当の支払義務があります。
先述の通り、時間外手当は、1日8時間もしくは週40時間を超えたときに支払われる決まりがあり、この場合平日の勤務で週の労働時間がすでに40時間に達しているからです。
そのため、所定休日の出勤ですが25%の時間外手当が支払われます。このケースは、休日労働に対する割増賃金が加算されたように感じられますが、実際には時間外労働に対する割増賃金が支払われているという点を間違えないようにしましょう。
2-2. 休日出勤が残業扱いにならないケース
【法定休日を振り替えた場合】
休日出勤をすると、振替休日として別日に休日を与えられることがあります。
振替休日とは、事前に休日と労働日を入れ替えて勤務する制度のことです。
例えば、土曜日を所定休日、日曜日を法定休日とする会社の場合で考えてみます。仮に、法定休日である日曜日と翌日の月曜日を事前に振り替えるとした場合、出勤した日曜日は月曜日(労働日)扱いになります。
一見すると法定休日に出勤していますが、「日曜日と月曜日を交換しただけ」なので、このケースでは休日労働に対する割増賃金は適用されません。
ただし、突発的に法定休日出勤をおこなった場合などは、別の日が「代休」になります。
代休は事後に代償として与えられる休日なので、出勤した法定休日には休日労働に対する割増賃金を支給しなくてはなりません。振替休日と代休は勘違いされやすいので、違いをしっかり理解しておきましょう。
【みなし残業代制(固定残業代制)で休日手当が基本給に含まれている場合】
会社によっては、基本給に休日手当をあらかじめ含めて支給しているケースもあります。雇用契約書に、休日出勤手当の額や時間についての記載がある場合は、すでに基本給に含まれているため、別途残業代が支払われることはありません。
ただし、記載されている額を超える休日出勤をおこなった場合、休日手当が基本給に組み込まれていない場合は、追加で残業代が支給されます。
【管理監督者の立場にある場合】
管理監督者は労働基準法で定める労働時間に関する規定が適用されません。よって休日手当や残業代は支払われないため、休日出勤をしても残業扱いになりません。ただし、管理監督者に対しても、深夜労働に対する割増賃金の支払いは必要なため注意しましょう。
管理監督者とは、「経営者と一体的な立場」「自己の裁量で労働時間を管理している」「地位に相応しい報酬をもらっている」などにあてはまる人のことを指します。
3. 休日出勤で残業代が発生する場合になった際の計算方法
休日出勤で残業が発生した場合、どのように計算すれば正しい残業代が算出できるのでしょうか。
まずは、残業代の基本的な計算方法を紹介します。
1時間あたりの賃金 × 残業時間 × 割増率 = 残業代 |
1時間あたりの賃金とは残業単価のことです。残業単価は基礎賃金によってもとめることができます。
基礎賃金は、基本給に一部の手当を含めた賃金のことで、除外できる手当については労働基準法と労働基準法施行規則で定められています。
残業単価を算出する計算式は以下の通りです。
基礎賃金 ÷ 月の平均所定労働時間 = 残業単価 |
祝日等の関係で、月によって所定労働日数が変化します。その際、単純に月給を労働日数で割って残業単価を計算してしまうと、月ごとに単価にばらつきが出てしまいます。これを防止するため、月の平均所定労働時間をきちんと計算しましょう。
(年間暦日数 - 年間休日) × 1日の所定労働時間 ÷ 12 = 月の平均所定労働時間 |
これらの計算式を元に、休日出勤で残業が発生したときの残業代を計算してみましょう。
3-1. 所定休日の休日出勤で残業代が発生した場合の割増賃金計算
・基礎賃金:25万円
・所定労働時間:平日5日間の9:00~17時(うち休憩1時間)
・年間休日:125日
上記の条件の従業員が所定休日の土曜日に9:00~17:00(うち休憩1時間)で勤務した場合
【月の平均所定労働時間】
(365(暦日数) - 125(年間休日)) × 7(所定労働時間) ÷ 12 = 140時間
【残業単価】
250,000(基礎賃金) ÷ 140(月の平均所定労働時間) ≒1,786円
【休日出勤の残業代】
この従業員は平日に既に35時間の勤務実績があるため、この所定休日に対する休日出勤のうち、
40時間(週合計の法定労働時間) - 35時間(この週に置ける合計勤務時間) = 5時間
より
7時間(休日出勤の合計労働時間) - 5時間 = 2時間
これを計算すると、この従業員の休日出勤に対し、支払うべき賃金は、
1,786(残業単価) × 5(時間) ₊ 1,786 × 1.25(割増率) × 2(時間)
=8,930 + 4,465
=13,395円
よって、13,395円の賃金を支払う必要があります。
3-2. 休日労働の場合の割増賃金計算
法定休日の労働、つまり、休日労働の割増賃金計算も確認しましょう。
具体例を紹介するにあたり、以下を条件とします。
法定休日出勤は、時間の長さに関係なく割増賃金が発生するため、ここでは法定休日出勤の労働時間全てを割増賃金発生として扱います。
- 基礎賃金:25万円
- 勤務時間:9:00~18:00
- 年間休日:125日
- 休日出勤の労働時間:8時間
【月の平均所定労働時間】
(365(暦日数) - 125(年間休日)) × 8(所定労働時間) ÷ 12 = 160時間
【残業単価】
250,000(基礎賃金) ÷ 160(月の平均所定労働時間) = 1,563円
【休日出勤の残業代】
1,563(1時間当たりの賃金) × 8(労働時間) × 1.35(休日出勤の割増率) = 16,880円
休日出勤の労働時間8時間には、通常の賃金に休日労働に対する割増賃金が35%分上乗せされますので、このような計算結果になります。
4. 休日出勤は条件を区別し、正しく割増賃金を支払おう
休日出勤をしたからといって、必ずしも割増賃金が支給されるわけではありません。
法定休日で出勤した場合には、休日労働の割増賃金が、所定休日の出勤の場合は、休日労働には該当しないものの、時間外労働の割増手当の条件に該当する場合には、残業の割増賃金が発生します。残業扱いになるケースとならないケースの違いについてよく理解しておきましょう。
休日出勤での残業代計算は、基本の計算式に割増率を当てはめることで簡単に計算できます。今回紹介した計算例を参考に、正しい方法で残業代を計算しましょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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