フレックスタイム制のコアタイムなしとは?メリットや導入方法を解説
勤怠管理システム
2023.10.23
2023.10.23
フレックスタイム制のコアタイムとは、「従業員が出社しなければならない時間帯」を指します。「コアタイムなし」の場合は、スーパーフレックスタイム制となります。本記事では、フレックスタイム制のコアタイムに適切な時間数、設定方法、メリットなどについて解説します。
フレックスタイム制をおさらい
フレックスタイム制度とは、従業員一人ひとりが始業と終業のタイミングを自由に決められる制度です。あらかじめ定めた期間(清算期間)内にて、所定労働時間を満たして働くことが求められます。
清算期間内で法定労働時間の総枠を超過すると、時間外労働となります。また1ヵ月を超える清算期間である場合には、1ヵ月ごとの労働時間が週平均50時間を超えた分も残業としてカウントします。
フレックスタイム制のコアタイムとは?定義や設定方法を解説
フレックスタイム制は、原則として従業員が自由に勤務時間を決められる勤務形態です。
しかし、企業によってはコアタイムを導入し、従業員が出社しなければならない時間帯を設定する場合があります。コアタイムの導入は法令で義務付けられているわけではありませんが、労使協定の締結と就業規則の改定が必要です。
コアタイムの導入を検討している場合は、コアタイムを設定するまでの流れを確認しましょう。
コアタイムは「出社しなければならない時間帯」のこと
コアタイムとは、1日の勤務時間のうち従業員が出社しなければならない時間帯を指します。たとえば、通勤ラッシュを回避するため、午前10時から午後3時までの時間帯をコアタイムにするといった設定が可能です。東京労働局はコアタイムを次のように定義しています。[注1]
コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける時は、その時間帯の開始及び終了の時刻を、労使協定や就業規則に明記しなければなりません。
フレックスタイム制を導入したからといって、必ずコアタイムを設定しなければならないわけではありません。自社の業務フローに合わない場合はコアタイムを設定しないことも可能です。
実際に厚生労働省の調べによると、フレックスタイム制で見直すべき点として、30.2%の企業が「コアタイムをなくすべき」、17.9%が「コアタイムを短くすべき」と回答しています。[注2]
しかし、コアタイムにはさまざまなメリットもあります。従業員の働きやすさやワークライフバランスにつながる形でコアタイムを設定すれば、コアタイムのメリットを活かすことが可能です。
フレックスタイム制のコアタイムなしとは
フレックスタイム制のコアタイムなしとは、出社しなければならない時間帯である「コアタイム」を設けないもので、「スーパーフレックスタイム制」とも呼ばれています。
スタンダードなフレックスタイム制では、出社しなければならない時間帯である「コアタイム」と、従業員の裁量で自由に勤務時間が決められる「フレキシブルタイム」で構成されることが一般的でした。そのため、会社が定めるコアタイムには必ず出勤する必要があります。
コアタイムなしのフレックスタイム制の場合は、出社しなければならない時間がありません。企業がそれぞれ定める月間総労働時間を満たすのであれば、従業員が出退勤をするタイミングは完全に自由であり、フレックス制よりも自由度が高いといえます。

スーパーフレックスとは?制度の内容や導入方法などをも解説
スーパーフレックスとは、コアタイムの定めがないフレックスタイム制のことです。出社しなければならない時間帯がないため、従業員がより柔軟に出社日や出社時間を決めることができます。スーパーフレックスのメリットや導入事例を紹介します。
フレックスタイム制のコアタイムなしにおけるメリット
なぜコアタイムを設定する企業が存在するのでしょうか。それは、コアタイムのないフレックスタイム制には、「従業員の出社時間がバラバラになり、コミュニケーションの機会が減少する」「担当者が同じ時間にいないため、クライアントとのやりとりに支障をきたす」といったデメリットがあるためです。
一方で、フレックスタイム制のコアタイムを設定しないことにはさまざまなメリットもあり、コアタイムをなしにするか否かは、これらのメリット・デメリットの両方を吟味しながら決めることが大切です。ます。そこで、ここではまずフレックスタイム制のコアタイムなしにおけるメリットを紹介します。
優秀な人材を確保しやすくなる
どれだけ優秀な人材でも、育児や介護などさまざまな理由から働くことを諦めたり、時間的な自由のききやすいフリーランスとして働いている人もいます。
フレックスタイム制であっても、コアタイムなしであればこのような本来であれば時間的な理由から確保できなかったような優秀な人材も確保ができるようになります。
時間的な自由がありながらも、社員として安定した働き方ができるという点は、優秀な人材を集める上で大きなアピールポイントとなるでしょう。
長時間労働が常態化しにくくなる
コアタイムや定時がある勤務形態の場合、業務量の有無に関わらずその時間内は働かなければなりません。そして、通常よりも業務量が増えた場合、それ以外の時間で追加で働く必要があり、長時間労働につながります。
さらに、時間外労働(残業)が発生することで割増賃金が発生し、定められた時間を越えれば労働基準法違反となる可能性も考えられます。
フレックスタイム制であってもコアタイムなしであれば、従業員が対応しなければならない業務量に合わせて、従業員の意思決定のもと時間を選んで働くことが可能です。仮に長時間働いた日があっても、ほかの日で調整することもできます。
作業効率がアップする
コアタイムや定時出勤をなくし、フレックスタイム制のコアタイムなしという勤務形態になれば、従業員の出退勤時間も完全に自由になります。
そのため、たとえば「体調があまり良くないが休むと迷惑をかけるので出社する」「今週は特にやることがないけど出社する」といった非効率な出社を避けられるようになるでしょう。
また、従業員自身が自由に出退勤時間を決められるということは、従業員の主体性や計画性を引き出すきっかけにもなります。それぞれの従業員が責任を持って進捗管理を行うようになれば、作業効率のアップも期待できます。
ワークライフバランスが取りやすくなる
フレックスタイム制のコアタイムなしであれば、日によって始業時間を遅らせたり、早朝から仕事を始めることなどができます。
これにより、資格取得やスキルアップのためのスクールに通いやすくなったり、趣味の習い事や参加したいイベントに合わせて出勤時間を調整することも可能になります。
ワークライフバランスがとりやすくなることでスケジュール調整で発生するストレスを軽減し、ひいてはモチベーションの向上にもつながるでしょう。
離職率の低下が期待できる
コアタイムや定時が決まっている場合、育児や介護、定期的な通院などが必要になると、従業員本人に働き続けたい意思があっても働き続けることが困難になり、離職を招く可能性もあります。
コアタイムなしのフレックスタイム制であれば、出退勤時間が自由に決められるため、「時間が合わない」という理由による離職を防ぐことが可能です。離職を防ぐことができれば、企業にとっては新たに人材を確保する手間やコストが減り、従業員も長く働き続けることによって実績やスキルが得られるというメリットもあります。
フレックスタイム制のコアタイムなしにおけるデメリット
従来のコアタイムのあるフレックスタイムと比較すると、コアタイムなしのフレックスタイム制は非常にメリットが多いように感じます。
しかし、コアタイムがないことによって生じるデメリットがあることも事実であるため、導入を検討する際には自社においてメリットとデメリットのどちらが多くなるかを比較することが大切です。
以下では、コアタイムなしのフレックスタイム制におけるデメリットを詳しく解説します。
部署によっては導入しにくい
自社内で完結できることが多い部署であれば自由な時間に出退勤することはそれほど難しくはないでしょう。
しかし、広報や営業など、社外とのやりとりが多い業務を扱う部署の場合は、他社が希望するスケジュールにも対応しなければスムーズなやりとりができなくなってしまう可能性があります。
部署によってコアタイムのある・なしの差ができることにより、コアタイムのある部署の従業員が不満に感じてしまうおそれもあります。全社的にコアタイムをなくすのであれば、時間の管理方法や業務内容の見直しは避けられないでしょう。
勤怠管理が複雑化する
従業員によって出退勤時間が異なると、従来の一括管理は難しくなり、当然ながら勤怠管理も複雑化します。
定時であればある時間を過ぎれば残業したことがすぐにわかりますが、フレックスタイム制では退勤時間だけでそれぞれの従業員が残業したかどうかの判断ができません。残業時間の長さに関わらず、残業が発生するだけで管理の手間が増大します。
フレックスタイム制でさらにコアタイムもなくす場合には、勤怠管理をきちんとおこなえるシステムを作って置く必要があります。
従業員間のコミュニケーションが不足する
コアタイムなしのフレックスタイム制では、それぞれの従業員が自由な時間に働くため、その分従業員間のコミュニケーションが不足する可能性が高くなります。
同じ部署内でまったく顔を合わせないといったケースは少ないにせよ、同じ部署のすべての従業員が同じ時間に顔を合わせることが難しくなることは十分に考えられます。
コミュニケーションが不足すると、急を要する業務上の報告や相談などがしにくくなり、そのことによって問題への対応が遅れ、問題が深刻化する可能性もあるでしょう。
さらに、コミュニケーションが不足することで、従業員同士がよそよそしい雰囲気になり、チームとして動きづらくなる可能性があります。
外部とのやりとりがしにくくなる
フレックスタイム制度を導入している企業であっても、コアタイムをなしとしているケースはそれほど多くありません。そのため、出退勤時間によっては取引先とのやりとりがなかなかできない可能性もあります。また、勤務時間外に業務連絡が入る可能性もあります。
そのため、それぞれの従業員が出勤していない時にどのような対応をするかをあらかじめ決めておくと同時に、可能な限り取引先にとの支障が出ない程度に出退勤時間を調整する努力も必要でしょう。
コアタイムのないフレックスタイム制度は自由度は高いものの、その自由さ故に対応に時間がかかり、取引先からの信頼を失ってしまうかもしれません。
有給消化率が低下する
勤務時間が決められている場合、何か私用があると、その日は年次有給休暇(有給)を利用することが一般的です。
しかし、自由な時間に出勤することが可能になると、有給を使うタイミングがないという現象も起こりがちです。実際に、これはフレックスタイム制度を導入している企業の多くが抱えている問題です。
フレックスタイム制度を導入しているからといって、労働基準法で定められている有給に関するルールを守らないわけにはいきません。有給の取得は従業員に任せるのではなく、企業側から積極的に利用するようにアプローチをする必要があるでしょう。
フレックスタイム制をコアタイムなしにする方法
フレックスタイム制をコアタイムなしにする場合は、まずは労働組合にその旨を伝え、労使協定を締結する必要があります。そしてその後、就業規則を労働基準局に提出するという流れです。ここではそれぞれの手順について解説します。
就業規則に記載する
コアタイムなしのフレックスタイム制を導入する際には、就業規則への記載が必要です。
就業規則には「労使協定によってフレックスタイム制が適用される社員の始業、終業の時刻については、従業員が自由に決定できる」という旨の一文を入れましょう。
これは、労働基準法第32条第3項に基づき決められています。
労使協定を締結する
フレックスタイム制をコアタイムなしにする際は、その旨を労働組合か労働者の過半数代表に伝える必要があります。そして、労使協定を締結する際は、次の点を明確にしておかなければいけません。
- 対象となる労働者の範囲(全部または一部)
- 清算期間(3ヵ月まで)
- 清算期間における総労働時間(所定労働時間)
- 標準となる1日あたりの労働時間
- コアタイム
これらについての労使協定を締結することで、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入することが可能です。ただし、清算期間が1カ月を超える際には、所轄の労働基準監督署長へ労使協定締結所の提出が必要です。
フレキシブルタイムの定義は?コアタイムとの違いを解説
従業員が出社しなければならない時間帯を指すコアタイムに対し、従業員がいつ出社してもよい時間帯をフレキシブルタイムとよびます。従業員がコアタイムに縛られ、自由に勤務時間を決められない場合、フレックスタイム制の本来のメリットが活かせません。
フレキシブルタイムを十分に確保すれば、従業員の働きやすさやワークライフバランスを改善できます。フレキシブルタイムしかない「スーパーフレックス」も導入することが可能です。
フレキシブルタイムは「いつ出社してもよい時間帯」のこと
フレキシブルタイムとは、従業員が出社するかしないかを自由に選択できる時間帯のことを指します。
一般的なフレックスタイム制では、1日の勤務時間をコアタイムとフレキシブルタイムに分けています。コアタイムと同様、フレキシブルタイムを設ける場合は、開始時間と終了時間について労使協定で合意する必要があります。
ただし、フレキシブルタイムが極端に短い場合、フレックスタイム制とはみなされない場合があります。[注1]
フレキシブルタイムの時間帯が極端に短く、例えば30分しかないような制度や、当該フレキシブルタイムの時間帯が30分単位となっていて、そのなかから始業時刻または終業時刻を選ぶような制度は、始業及び終業時刻を労働者が自主的に決定しているとはいえず、フレックスタイム制の趣旨に反しますので注意が必要です。
逆にコアタイムを設定せず、1日の勤務時間すべてをフレキシブルタイムに設定することもできます。
コアタイムがなくフレキシブルタイムしかない勤務形態のことを「スーパーフレックス」とよびます。自社の業種や業務形態に合わせて、コアタイムとフレキシブルタイムのバランスを調整しましょう。
フレックスタイム制をコアタイムなしにする際のポイント
コアタイムなしのフレックスタイム制にはさまざまなメリットがある一方、デメリットもあります。そのため、導入の際にはデメリットをなるべく減らすための努力も必要です。
以下では、フレックスタイム制をコアタイムなしにする際のポイントを紹介します。
社員同士のコミュニケーションの活性化を図る
コアタイムなしのフレックスタイム制では、従業員が好きな時間に出退勤できる反面、従業員同士のコミュニケーションがとれなくなるという問題も起こりがちです。
そして、コミュニケーション不足は、居心地の良い職場づくりが難しくなったり、業務面においても問題解決に時間がかかるなどの弊害を及ぼします。
従業員同士のコミュニケーションを取りやすくするためには、リモートのオンライン会議をしたり、気軽にやり取りができるチャットツールの導入などが有効です。また、定期的にランチ会を開くといった方法もあるでしょう。
ただし、いずれにしても従業員本人から了解を得る必要があります。
勤怠管理ツールを導入する
従業員の出退勤の時間が自由になると、その分勤怠管理も複雑化します。勤怠管理がきちんとできていない場合、給与の未払いや長時間労働が発生するリスクも高まります。
そのため、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入する場合は、イレギュラーな勤務形態にも対応できるフレックスタイム制の管理向けの勤怠管理ツールの利用がおすすめです。
勤怠管理ツールでは、出退勤のカウントだけではなく給与計算や残業代の計算が可能なものなど、さまざまなものがあります。既存のシステムとの連携のとりやすさや料金体系などを比較しながら検討するとよいでしょう。

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フレックス制のコアタイムなしのメリットとデメリットを理解し導入を検討しよう
フレックスタイム制をコアタイムなしにすると、従業員は自由に出退勤時間を決めることができ、ワークライフバランスや生産性、モチベーションの向上につながります。
その一方で、コミュニケーション不足や勤怠管理が複雑化する懸念もあるため、導入を検討する際はメリットとデメリットを慎重に比較することが大切です。また、並行して勤怠管理ツールの導入についても検討しましょう。
[注1]フレックスタイム制の適正な導入のために|東京労働局
[注2]裁量労働制等に関するアンケート調査|厚生労働省

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。
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