36協定の押印や署名は不要になった?会社がおこなうべき対応について解説
勤怠管理システム
2023.08.29
2023.08.29
令和3年4月1日より36協定届は新様式に変更され、署名と押印が不要になりました。理由としては、行政手続きのデジタル化推進が挙げられ、36協定だけでなく多くの行政手続きで押印廃止の動きが進んでいます。なお、協定書を兼ねる場合、従来通り署名または記名押印が必要です。この記事では企業がおこなうべき対応について解説します。

36協定とは?違反時の罰則や時間外労働の上限についてわかりやすく解説
36協定とは、労働者の時間外労働や休日労働について定められている労使間の協定です。法定労働時間を超えた残業をさせる場合には、36協定を結んだうえで労働させなければなりません。今回は36協定を違反した際の罰則や時間外労働の上限について、また36協定の届出方法を紹介します。
36協定届の押印が一部不要に
2021年4月に36協定届が新様式に変更されたことにともない、36協定届の署名または記名押印が一部廃止されました。押印が不要になったのは、労働基準監督署長に提出する36協定の協定届なので、36協定書などのほかの書類と混同しないように注意しましょう。
協定届と協定書の違いは、以下のとおりです。
- 36協定届:労働基準監督署長に提出する書類
- 36協定書:36協定で使用者と労働者が取り決めた内容を記載する書類
今回押印が不要となったのは、36協定届のみです。
36協定書は労使双方の合意を証明するための書類のため、不正があれば重大な権利侵害につながります。そのため、署名または記名押印は継続して必要です。

36協定の新様式とは?変更内容や注意点について解説
36協定届は2021年4月から新様式に変更されています。変更内容がいくつかあるので、企業は新様式に対応した36協定届の作成をする必要があります。本記事では、36協定届の新方式の記入例や企業が対応すべき注意点についてわかりやすく解説します。
押印不要になるケース
2021年4月の36協定届様式変更によって押印が不要になるのは36協定届と36協定書を別々で作成している場合の36協定届のみです。
押印が必要なケース
36協定届様式変更の後も押印が必要なケースと書類は以下の通りです。
- 36協定書
- 36協定書と36協定届を兼用する場合
36協定書と36協定届は兼用することが可能ですが、36協定書には押印が必要なので、兼用した場合は36協定届にも押印しなければなりません。
押印が必要な場合に押印がなされていなければ、当然不備として扱われ、受理されなかったり、無効となったりするため、押印が必要かどうかを確認して確実に対応しなければなりません。

36協定書の正しい書き方や新様式での変更点を解説
36協定を正しく結び、適用させるには、適切な書き方の協定書と協定届が必要です。協定書について解説し、新様式に変更された36協定届の書き方を解説します。36協定の適用外や適用猶予がある業種もございますので、人事関係者様はぜひご一読ください。
36協定届の押印が不要化された理由
2021年4月より36協定届が新様式に変更され、従来必要だった署名または記名押印が廃止されました。
なお、押印などの廃止は36協定届だけでなく、国や地方の多くの行政手続きに広がっています。
行政手続きのデジタル化推進が目的
かねてより、日本政府は少子高齢化対策や多様な働き方の実現、行政サービスの利便性向上に向け、デジタル社会の実現を目指していました。とはいえ、多くの行政手続きは、書面主義・押印原則・対面主義が基本であり、この状態がデジタル化推進の妨げとなっていました。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大などを契機に、上記体制の抜本的な見直しがおこなわれることとなりました。
99.4%の行政手続きで押印廃止の流れに
結果として、2020年5月には14,992ある行政手続きのうち、14,909の手続き(99.4%)について、押印の廃止、または廃止の方向で検討することが決定しました。[注1]
これらの流れをうけ、36協定届も押印の廃止や、電子申請による条件緩和が進んだものと考えられます。なお、従来必要だった押印を廃止しても問題ないといえる、目的別の根拠は下記とされています。
- 本人確認:押印以外にも多数の方法が存在する。
- 文書作成の真意確認:本人確認をすれば不要。
- 文書内容の真正性の担保:文書の証拠価値は押印により評価される訳でなく、手続き全体として評価されると考えられるため。
[注1] 地方公共団体における押印見直しマニュアル(令和2年12月18日)【概要版】(PDF形式:327KB)|内閣府
署名は実質的な意味があると考えられる場合のみ存続
なお、36協定を含む行政手続きで署名や押印が廃止になったものの、全ての手続きで不要となった訳ではありません。
具体的には、実質的に意味があり必要とされる場合は、従来通り署名や記名押印を継続します。
例えば、住民異動届のように「虚偽の届出等があった場合に、回復困難な権利侵害等が生じ得る場合」などは、署名が必要な代表的ケースです。
署名と記名押印の違い
なお、補足として、署名や記名押印の違いは以下のとおりです。
- 署名:本人の手書きにより、自身の氏名を文書に書き記すこと
- 記名:ゴム印や印刷など、本人の手書き以外の方法で氏名を文書に書き記すこと。押印があることで、本人の意思により作成したと推定する。
- 押印:記名押印の略。記名された箇所に判子を押すこと。
実務上は署名と押印をするケースが多いものの、本来は署名のみで法的効力が発生します。(民事訴訟法228条4項)
36協定の押印不要化にともない会社がおこなうべき対応
36協定届の様式変更にともない、担当者は新様式をダウンロードし、社内に様式変更を周知しましょう。また、事務処理の効率化を進めたいなら、従来の紙による届出ではなく、電子申請を活用するのも方法です。

36協定締結の手順書
この資料では、36協定締結の手順を解説しています。36協定の届出の際の注意点や、特別条件付き36協定、働き方改革関連法改正のポイントなどについても解説しています。人事労務の実務担当者におすすめです。
この資料では、36協定締結の手順を解説しています。36協定の届出の際の注意点や、特別条件付き36協定、働き方改革関連法改正のポイントなどについても解説しています。人事労務の実務担当者におすすめです。
36協定届を新様式に変更する
紙で36協定の届出処理をおこなっているなら、協定届の新様式をダウンロードしておきましょう。
36協定届の新様式では、署名・記名押印が廃止されたことに代わって、労働組合もしくは適正に選出された労働者の代表であることを確認するチェックボックスが新設されているため、必ずチェックが必要です。
チェックボックスにチェックが入っていない場合、形式上の要件を備えていないものとされるため、不備がないように対応しましょう。
また、誤って旧様式で届出を作成してしまうと、新設されたチェックボックスの表示がある文章を全文余白に書き写すか、転記した紙を添付しなければいけません。使用者や人事労務担当者など、共有ファイルなどにデータを保管し、繰り返し利用している場合は、すぐに新しい様式と取り換えましょう。[注2]
[注2] 主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省
社内に様式変更を周知する
36協定届を労働基準監督署に提出した後は、控えを常時事業場の見やすい場所に掲示したり、書面で交付したりする必要があります。
そのため、様式変更をアナウンスせず交付すれば、押印がないことで不正などを疑う従業員が現れるかもしれません。あらぬ誤解を防止するためにも、新様式になり、署名や押印が不要になったことを事前に周知しましょう。
電子申請を活用する
2021年4月の法改正により、過半数労働組合のない事業所でも、電子申請に限り、36協定の本社一括届出が利用できるようになりました。
また、36協定書のサインは電子署名でも問題がないため、紙から電子申請に移行することも可能です。電子申請なら、24時間申請可能で事務手続きのコストも削減できるため、今回の新様式変更をきっかけに、電子申請を取り入れるのも方法の一つです。
36協定届の押印は廃止!ただし協定書を兼ねる場合は押印が必要
36協定届の署名または記名押印は廃止されたものの、協定書を兼ねる場合は従来同様、署名か記名押印による労働者代表の意思確認が必要です。
また、今回の法改正にともない、電子申請を活用すれば過半数労働組合のない事業所でも36協定の本社一括届出が可能となりました。手続きコストを抑え、手早く処理をしたいなら電子申請制度を活用するのもよいでしょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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