有給休暇の繰越とは?繰越日数や最大保有日数についても解説
勤怠管理システム
2023.08.29
2023.08.29
有給休暇は要件を満たせば雇用形態を問わず付与され、付与された有給休暇が何らかの理由でその年に消化できなかった場合、定められた日数までであれば翌年に繰り越すことが可能です。ここでは、有給休暇の繰越日数や最大保有日数などをわかりやすく解説します。
1. 有給休暇の繰越とは?
有給休暇には2年間の有効期限があり、当年度に取得しきれなかった有給休暇は有効期限内であれば翌年度に繰り越して取得することが可能です。
有給休暇の繰越について、正社員とパート・アルバイトなど、雇用形態によって扱いが変わるのか疑問に感じる方もいるかもしれません。
有給休暇の繰越は有給休暇を付与された従業員ならば誰でも可能です。
有給休暇は一定の要件を満たしていれば雇用形態に関わらず付与されるものであり、付与される日数についても雇用形態によって変化はなく、週の所定労働日数や勤続年数をもとに考えられます。
2. そもそも有給休暇とは?
年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。
引用:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
企業は労働者に対して有給休暇を適切に付与して、リフレッシュさせる義務があります。付与される条件と日数を以下で確認しましょう。
2-1. 有給休暇の付与条件
有給休暇の付与条件は、以下の通りです。
- 雇い入れから6か月以上経過している
- 全労働日の8割以上出勤している
有給休暇の付与条件を満たした場合、誰でも有給休暇を取得することができます。
2-2. 有給休暇の付与日数
有給休暇の付与条件を満たしている場合、有給休暇の付与日数をあわせて確認しましょう。有給休暇の付与日数は以下の表の通りです。
<正社員の場合>
週に5日勤務している従業員は継続勤務年数によって有給休暇の日数が異なります。
<パート・アルバイトの場合>
パート・アルバイトのように、週所定労働時間が30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下、又は1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者は週所定労働日数と継続勤務年数に応じて、有給休暇が比例付与されます。
パート・アルバイトのような短時間労働者であっても有給休暇は付与されます。
有給休暇を適切な日数分付与していないと、企業は罰則を科される可能性があります。罰則を科された時には罰金などの直接的なこと以外でも、企業の社会的信用が落ちるなどの悪影響を及ぼします。
こういったリスクを減らすためにも、従業員に適切な日数有給休暇が付与できているかしっかりと確認しましょう。
3. 有給休暇を消費する順番
有給休暇は繰り越すことが可能ですが、有給休暇の繰越を行うと、前年度に付与された繰越分の有給休暇と今年度に新たに付与された有給休暇が混在することになります。その際に「前年度と今年度のどちらの有給休暇から先に消費すべきか?」という疑問が生じるでしょう。
結論からお伝えすると、労働基準法において有給休暇を消費する順番というものは特に定められていません。
しかし、仮に今年度付与された新しい有給休暇を先に消費し、前年度から繰り越した有給休暇が残ってしまった場合、前年度繰り越し分の有給休暇を来年度に繰り越すことはできません。
つまり、労働者にとっては本来取得できたはずの有給休暇が消滅してしまう可能性があり、結果として損をする形となってしまいます。
そのため、就業規則で決まりが定められていない場合は、繰り越した古い有給休暇から消費することが一般的です。
なお、雇用主が当年度の新しく付与された有給休暇から消化することを希望する場合には、あらかじめ就業規則にその旨を記載した上で、労働者に周知しておくことが求められます。
4. 繰越日数と最大保有日数
ここまでお伝えしてきたとおり、有給休暇は繰越をすることにより有給休暇が付与された日から最大で2年保有することができます。
そして、特別休暇など企業が独自に付与する有給休暇を除いた法定の有給休暇は、原則として最大で年20日繰り越すことが可能です。
これは、週の所定労働時間が5日(または1年の所定労働日数が217日)以上かつ勤続年数が6年6ヶ月以上の場合の付与日数である20日と同じ日数です。
つまり、法定の有給休暇においては、繰り越せる日数が最大で20日、付与される日数も最大で20日であるため、最大保有日数は40日ということになります。
5. 繰越日数の計算方法と例
ここからは、実際に有給休暇の繰越を行う場合の計算方法について解説します。以下の表は入社時より週の所定労働日数が5日以上で、勤続年数10年6ヶ月を迎えた人の有給休暇日数です。
前年繰越日数 | 新規付与日数 | 当年合計 | 当年消化日数 | 次年繰越日数 | |
2020年 | 15日 | 20日 | 35日 | 10日 | 20日 |
2021年 | 20日 | 20日 | 40日 | 20日 | 20日 |
2022年 | 20日 | 20日 | 40日 | 25日 | 15日 |
一般的に有給休暇は付与された日が古いものから消化します。
2020年は前年からの繰越分の有給休暇が15日ありましたが、当年度に消化できた日数が10日だったため、残った5日は消滅し、次の年へ繰越ができる日数は新規で付与された20日です。
2021年は前年からの繰越分の20日を全て消化したため、消滅する有給休暇はなく、繰越できる日数は新規で付与された20日です。
2022年は25日消化したため、前年からの繰越分の20日全てと、新規で付与された20日のうち5日を消化し、次の年へ繰越できる日数は15日となります。
先にご紹介したとおり、年10日以上有給休暇が付与される場合は年5日の有給休暇を必ず消化しなければなりませんが、取得義務のある5日の有給休暇は前年度分の有給休暇から消化する形で問題ありません。
ただし、就業規則により「有給休暇は当年度分から先に消化する」といった決まりが定められている場合にはその限りではありません。
6. 有給休暇を繰り越す際の注意点
有給休暇の繰越に関して、企業独自で「繰越はできない」などといったルールは設けてはいけません
有給休暇の繰越をしないと労働基準法に違反します。
そのため、「有給休暇の繰越はできない」、「有給休暇は1年間で消滅する」などといった就業規則を定めている場合は無効になるため、注意が必要です。
7. 繰越を活用しつつも消滅させない有給休暇の運用を
有給休暇は翌年に繰り越すことができます。
しかし、有給休暇が設けられている本来の目的は従業員の心身のリフレッシュやゆとりある生活のためなので、有給休暇は当年度に使い切ることが理想的です。
そして、実際には有給休暇の繰越ができても結局消滅させてしまうようなケースも少なくありません。従業員が有給休暇をできるだけ取得できるような制度を設けることも解決方法のひとつです。
有給休暇を活用することは仕事の効率があがったり、離職率を低減したりすることにも繋がります。
有給休暇を繰り越す従業員が多い場合は、可能な限り繰り越すことなくその年に使い切れるよう、有給休暇の運用ルールや管理方法の見直しを行いましょう。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
企業のみなさまへ
あなたもDXログにサービスを掲載しませんか?
あなたもDXログに
サービスを掲載しませんか?