夜勤者健康診断は年2回!検査項目や実施しないリスクと罰則も解説
勤怠管理システム
2023.09.11
2023.09.11
日常的に夜勤をおこなっている夜勤従業員は特定業務従事者に分類され「特定業務従事者健康診断」を受診しなければなりません。 今回は、夜勤従業員の健康診断の概要や検査項目を確認するほか、検査をおこなわないことにより懸念されるリスクについて解説します。
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1. 夜勤の労働者は年2回の健康診断が義務付けられている
通常、夜間の業務に従事する従業員は、「特定業務従事者」として1年のうち2回の健康診断を受けなければなりません。[注1]
健康診断を実施するタイミングとしては、特定業務への配置替えがおこなわれる際および6ヶ月ごとに1回とされています。
夜勤は一般的に労働基準法で深夜業に定められている22時〜翌5時の時間に該当する時間の勤務が含まれています。
労働安全衛生法では深夜業が特定業務に指定されています。
特定業務とは、健康に有害な業務のことで、特定業務に従事する労働者は労災リスクが高いとされます。そのため、健康診断の受診が義務付けられています。

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2. 年2回の健康診断が必要になる対象者の基準
夜間健康診断の義務がある従業員は、夜間業務を常時おこなっている従業員です。
夜間業務を常時おこなっている従業員とは、週に1回以上または、1ヶ月に平均して4回以上夜間業務をおこなっている従業員を指しており、この条件に該当する従業員を抱えている事業所は、特定業務従事者の健康診断をおこなう必要があります。
夜間業務に従事している従業員がいる場合でも、1ヶ月に1日程度の夜間業務であれば、年に1回の健康診断でも問題ありません。
年に1回の健康診断で問題ないかどうかは、実際の勤務状況を確認の上、受診するようにするとよいでしょう。
3. 夜勤健康診断の検査項目
夜勤の従業員の健康診断は、一般的な健康診断と同様の項目を受診すれば問題ありません。
夜勤従業員の健康診断検査項目については、労働安全衛生法に定められており、以下の11の項目が該当しますが、(※)の付いている項目については、医師が不要と認めた場合のみ検査を省略できます。[注1]
検査項目 | 免除される場合 | |
1 | 既往歴および業務歴の調査 | |
2 | 自覚症状および他覚症状の有無の検査 | |
3 | 身長(※)、体重、腹囲(※)、視力および聴力の検査 | 身長:20歳以上の場合腹囲:35歳を除く40歳未満の場合BMI20未満の場合、BMI22未満で腹囲を申告した場合、妊娠中の女性 |
4 | 胸部エックス線検査(※) および喀痰検査(※) | 胸部エックス線検査:40歳未満で以下のいずれにも該当しない場合(5歳毎の節目年齢、結核の定期健康診断の対象施設等で働いている、じん肺健康診断の対象である)喀痰検査:胸部エックス線検査を省略された場合、胸部エックス線検査で病変もしくは結核のおそれがないと判断された場合 |
5 | 血圧測定 | |
6 | 貧血検査(血色素量および赤血球数)(※) | 35歳未満および36~39歳の場合 |
7 | 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)(※) | 35歳未満および36~39歳の場合 |
8 | 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※) | 35歳未満および36~39歳の場合 |
9 | 血糖検査(※) | 35歳未満および36~39歳の場合 |
10 | 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査) | |
11 | 心電図検査(※) | 35歳未満および36~39歳の場合 |
以上11の項目が労働安全衛生法に定められた内容です。医師が必要であると判断した場合には、上記項目に項目が追加されることもあります。
4. 夜勤健康診断をおこなわないリスク
一般的に、夜勤を常態としている従業員には、不規則な生活ゆえ、どうしても心身への影響が心配されます。
その対策として、夜勤従業員には、適切に健康診断をおこなわなければなりません。
適切な時期に夜勤健康診断をおこなわなかった場合には、健康上のリスクが高まる傾向があります。
4-1. 夜勤が常態化すると肥満や高血圧などのリスクが高まる
夜勤従業員は、不規則な食事時間や偏った食事内容から、肥満のリスクが高まります。
そのため、夜勤従業員は、高血圧や高血糖などの可能性が大きくなり、結果としてメタボリックシンドロームや生活習慣病などを誘発します。
また、日勤と夜勤が交互に発生するような勤務形態では、睡眠障害や自律神経の乱れなどが発生する可能性もあります。
このような理由から、夜勤が常態化している従業員については、適切な時期に健康診断をおこなわなければなりません。
4-2. 労働安全衛生法違反で罰則を受ける
夜勤者に限らず従業員に健康診断を受診させるのは企業の義務です。これは、労働安全衛生法の66条に規定されています。
そのため、もし夜勤者に健康診断の受診をおこなわせなかった場合には労働安全衛生法違反となり、同法120条に則って、企業に対して50万円以下の罰金が課されます。
また、健康診断の費用は個人が任意で追加する項目以外はすべて企業側で負担します。
5. 夜勤健康診断の結果を受けて企業が実施するべき取り組み
健康診断の結果が届いたら、企業は下記の流れで対応をおこないます。
- 健康診断の結果の記録
- 健康診断結果に異常がみられた労働者に対し、必要な措置をとるため、医師から意見聴取
- 労働者の労働環境の改善(業務の転換や労働時間の短縮等)
- 健康診断結果の労働者への通知
- 健康診断の結果に基づく労働者への保健指導
- 健康診断の結果を所轄の労働基準監督署長へ報告(常時使用する労働者が50名以上の場合)
また、労働基準法109条において、健康診断の記録は5年間の保管が義務付けられています。
夜勤従業員には、健康を守るための安全配慮義務も重要です。その中でも「適正労働条件措置義務」と「健康管理義務」について、注目する必要があります。
適正労働条件措置義務とは、従業員の心身の健康を保つため、適正な労働条件を保つ義務のことを指します。また、健康管理義務とは、適切な時期に従業員の健康診断をおこない、結果について適切な処置をおこなう義務を指します。
いずれも夜勤従業員の健康を管理するうえで、大切な配慮となります。
夜勤従業員の健康状態のリスク対策には、次の3つを実施するとよいでしょう。
5-1. 夜間従業員の適切なシフト管理をおこなう
夜勤従業員の勤務には、適切なシフト管理が重要です。
シフトを検討する場合には、諸外国で取り入れられている夜勤・交代制勤務に関する基準(「ルーテンフランツ9原則」や「ポワソネのヘルスワーカー6原則」など)を参考にするとよいでしょう。
これらの基準では、夜勤の継続を最小限にとどめること、夜勤はほかの勤務よりも少ない時間でおこなうこと、また、規則正しいシフトの循環をおこなうことなどが定められています。
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5-2. 産業医の面接指導を活用する
健康診断で従業員に健康リスクが見られた場合には、従業員の健康管理をおこなっている産業医との面接指導をおこなうようにします。
また、健康診断の結果にかかわらず、月80時間以上の時間外労働をおこなう従業員や強い疲労を感じている従業員に対しては、積極的に面接指導を勧めるようにしましょう。

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5-3. 仮眠がとれる個室の用意する
夜勤従業員が仮眠をとれる個室を準備するとよいでしょう。
仮眠がとれる個室は、照明や空調にも配慮すると、従業員の心身のストレスを和らげるのにも役立ちます。

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6. 夜勤従事者は通常1年のうち2回の夜勤健康診断が必要
今回は、夜勤従業員の健康診断について、その回数や検査項目を紹介し、あわせて検査をおこなわないことによるリスクについても確認をしました。
通常、夜勤従業員は「特定業務従事者」として、1年のうち2回の健康診断が必要です。なお、1ヶ月に1度だけの夜勤であれば、年に1回の健康診断でも問題ありません。
ただ、多くの健康リスクを抱える夜勤従業員にとって、健康診断は重要な検査となりますので、適切な時期に受診をするように勧めるとよいでしょう。
[注1]労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~|厚生労働省

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。
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